個人年金の受け取りに贈与税がかかるケースとは?贈与税を避けるための対処法

2020.1.24
FINANCE
(写真=Tolikoff Photography/Shutterstock.com)
(写真=Tolikoff Photography/Shutterstock.com)
自分で積み立てた個人年金でも、受給の際には税金が発生する。契約の方法によっては所得税以外にも贈与税を納める必要が出てくるので要注意だ。夫が契約した個人年金保険を妻が受け取る契約にしている人は、せっかくの老後資金が目減りするおそれがある。

個人年金保険で覚えておくべき3つの名義

保険契約の名義には、「契約者」「被保険者」「受取人」の3種類がある。契約の際には必ずそれぞれを誰にするかを決めなくてはならない。3者の関係性によってのちに受け取る年金にかかる税金の種類が変わってくるので、各名義が表す意味をしっかりおさえておく必要がある。

(1)「契約者」……保険料を負担する人
(2)「被保険者」……保険を掛けられている人
(3)「受取人」……年金を受け取る人

(1)の契約者は単に契約書にサインした人ではなくお金を払っている人を指す。(2)は保険金支払いが発生するトリガーとなる人物である。死亡保険では被保険者に万が一のことがあった場合、個人年金なら一定の年齢に達した場合に保険金が支払われる。(3)は年金が支払われる人で、契約者や被保険者と異なる人物でも指名できる。

個人年金保険で贈与税がかかるケースは契約者と受取人が異なるとき

個人年金保険の年金を受け取る際に発生する税金は、契約者と受取人の関係性によって次の2つに分けることができる。

契約者と受取人が同一場合……所得税が発生

下のように、保険料を負担する契約者と年金を受け取る受取人が同じ場合は、「所得税(雑所得)」が発生する。

<例1> 契約者=夫、被保険者=夫、受取人=夫
(夫が保険料を負担し、夫が一定年齢になったら、夫が年金を受け取る)

<例2> 契約者=夫、被保険者=妻、受取人=夫
(夫が保険料を負担し、妻が一定年齢になったら、夫が年金を受け取る)

夫と妻は逆でも構わない。お金を払う人とお金をもらう人は同じかどうかがポイントだ。年金は給与所得ではない収入になるので、雑所得として所得税が課せられる。公的年金も雑所得だが、こちらは公的年金控除が適用されるため税額は低い。

契約者と受取人が異なる場合……贈与税が発生

先ほどとは異なり、契約者と受取人が異なる場合は「贈与税」が発生する。保険料を負担した人から年金を贈られた形となるため、贈与税を納めるべきとの考えだ。

<例3> 契約者=夫、被保険者=夫、受取人=妻
(夫が保険料を負担し、夫が一定年齢になったら、妻が年金を受け取る)

<例4> 契約者=夫、被保険者=妻、受取人=妻
(夫が保険料を負担し、妻が一定年齢になったら、妻が年金を受け取る)

贈与税が発生するのは年金受け取りの1年目だけである。2年目からは雑所得として所得税が課せられる。つまり2種類の税金が課せられることになる。

1年目だけ贈与税が課せられるのは、夫から妻に年金を受け取る権利(年金受給権)が贈与されたとみなされるためだ。贈与税の額は年金受給権の「権利評価額」をもとに算出される。保険会社に問い合わせれば評価額は確認できる。

個人年金を受け取る際は所得税よりも贈与税のほうが税金は高くなる

所得税のみが発生する場合と所得税と贈与税の両方が発生する場合では、どちらの税負担が大きいのだろうか。税額計算は非常に複雑であるため単純比較することは難しいが、一般的には贈与税がかかる場合のほうが税金は高くなりがちだ。

イメージをつかむために所得税と贈与税の計算方法を簡単に説明する。

雑所得の金額は、「総収入金額-必要経費」によって算出される。たとえば年金受取額が年間60万円で10年確定型個人年金保険に入り、月々1万円の保険料を25年間払い込んだ場合、課税対象の雑所得は30万円となる。所得税には基礎控除38万円があるので、この場合の所得税は発生しない。

贈与税額は「(権利評価額-基礎控除110万円)×税率-控除額」で算出される。仮に年金受給権の権利評価額が500万円とした場合、「(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円」の贈与税がかかることになる。次年度からは受け取る年金額に応じて所得税が発生する。計算方法は先ほどと同じだ。

このように、契約者と受取人が異なり贈与税が発生するほうが税額は高くなりやすい。特別な理由がない限り、契約者と受取人は同一人物にするのが良いだろう。

個人年金の契約者が妻でも支払いが夫なら贈与税がかかる

契約者と受取人が同一になるよう、名義を契約者=妻、被保険者=夫、受取人=妻にしても、実際に保険料を負担するのが夫なら贈与税が課せられる。

課税の実務上では実際に保険料を負担したのか、またはその能力があったのかが問題になる。収入のない専業主婦の妻が保険料を負担しているとは考えにくいので、実質契約者≠受取人とみなされれば贈与税の発生は避けられない。

よかれと思って妻を契約者と受取人にしても、結局は余計な税金を払う羽目になるので、契約の名義はくれぐれも確認するようにしたい。

個人年金に贈与税がかかると分かった場合の2つの対処法

契約した後になって契約者と受取人が異なることに気付いた場合はどのような対処法があるのだろうか。

(1)受取人の変更手続きをおこなう

保険会社に依頼すれば、受取人名義の変更をおこなえる。保険では被保険者を変更することは難しいが、受取人の変更はライフステージや家族構成の変化に対応するため認められている。

受取人を契約者と同一にした以降は贈与税がかからない。変更前に保険料を支払った期間に相当する部分ついては贈与税の対象になる。つまり1回でも受取人と契約者が違う状態で保険料を支払ってしまうと贈与税は発生してしまうのだ。早い段階で変更すれば基礎控除の範囲内で済むが、支払期間満了直前だとあまり効果は得られないだろう。

(2)個人年金の保険料を妻に贈与する

毎年、夫が個人年金保険料を妻に贈与するという方法もある。保険料支払いに必要なお金を定期的に妻に贈与し、保険料を負担する能力を得た妻が契約者となれば、妻が年金を受け取る際に贈与税はかからない。

保険料を渡す際の贈与税も、年間110万円以内なら非課税だ。証拠を残すため、贈与契約書を2部作成し公証役場で確定日付をもらったり、年間贈与額を110万円以上として贈与の申告書を提出したりしておくと良い。より確実を期すために、所管の税務署で確認を取っておくのもおすすめだ。

個人年金の被保険者が死亡した場合の税金

個人年金の年金受取人が死亡し、年金受給権が遺族に渡った場合、発生するのは相続税もしくは贈与税だ。所得税は発生しない。

<例5> 契約者=夫、被保険者=夫、受取人=夫(死亡)→妻
この場合、被保険者および受取人である夫が死亡したために年金受給権は妻に移る。保険料を負担していた夫から妻への財産の相続とみなされるため、「相続税」が発生する。

<例6> 契約者=夫、被保険者=妻、受取人=妻(死亡)→子
この例では、被保険者および受取人である妻が死亡し、年金受給権の取得者が保険料負担者ではないため、夫から子への贈与とみなされて「贈与税」が発生する。

個人年金の受け取りは税制を理解し賢明な選択を

個人年金の受け取り時の税金はいろいろと複雑だ。公的年金への不安から、自助努力により老後資金を得ようとコツコツ用意した個人年金に税金がかかるのは釈然としないかも知れない。夫が妻の将来のためを思って受取人にしたら余計な税金がかかるというのも納得のいきにくい話だ。

しかし今の制度では課税はまぬがれられない。事前に個人年金保険と税金の仕組みを理解し、年金を受け取る段になって慌てないようにしっかり準備をしておきたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
 

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