ソフトバンクグループが、2020年3月期の通期業績予想を発表した。営業利益は、前期の2兆3,500億円のプラスから1兆3,500億円のマイナスへと赤字転落する見込みだという。下げ幅としては実に3兆7,000億円で、日本だけでなく世界の投資家たちをも震撼させた。

営業利益の下げ幅は3兆7,000億円に

孫正義氏率いるソフトバンクグループが2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の業績予想を発表したのは、4月13日。新型コロナウイルスの感染拡大によって市場環境が悪化していることから、投資家の間で同社の業績への懸念が高まっていた中での発表だった。

業績予想における前期業績からの下げ幅は、市場関係者や投資家たちを驚かせた。売上高は前期比3兆4,500億円減、営業利益も3兆7,000億円減、最終損益は7,500億円のマイナスとなる見通しだ。これらの数字が、ソフトバンクグループの現在の苦境を示している。

看板ファンドにおける投資の失敗が響き約1兆8,000億円の投資損失

報道発表では、下方修正の理由について触れている。営業利益については、約1兆8,000億円の投資損失を見込んでいることが大きく響いているという。同社の看板ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」における投資の失敗によって、大きなダメージを受けたのだ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドでは、孫氏が有望性を見込んだ世界の有力ユニコーン企業に対する投資が活発に行われてきた。すでに上場を果たした企業もあり、投資事業はソフトバンクグループの成長のエンジンとなっていた。

しかし、ここに来て新型コロナウイルスの影響により、投資事業が同社の業績を悪化させている。孫会長は米経済誌フォーブスによるインタビューで、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先のうち15社が破産すると予測している。

経営不振のWeWork、そしてOneWeb破産−―8,000億円の営業外損失

また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド以外における投資でも、8,000億円の営業外損失を計上する見込みだという。シェアオフィス事業を展開する「The We Company(WeWork)」と衛星インターネット企業「WorldVu Satellites Limited(OneWeb)」などに絡む営業外損失だ。

経営不振に陥っているWeWorkは回復の兆しを見せず、利益が出るのはかなり先になるだろう。3月には米企業のOneWebが会社更生手続きを申請し、ソフトバンクグループの株価は急落した。OneWebの破産の直接的な要因は、新型コロナウイルスによる市況悪化で資金調達がうまくいかなかったことだ。
 

通期決算は5月18日に発表−―孫会長の発言が注目される

ソフトバンクグループは、2020年3月期の通期決算を5月18日に発表する。恒例となっている孫会長の生中継スピーチも行われ、その様子はリアルタイムで誰でも視聴することができる。

WeWork問題や、同じく出資先のライドシェア最大手Uberの株価低迷などに苦しむ中、2月の決算発表会において孫会長は「潮目が変わった」と語っていた。株価復調のほか、米通信子会社SprintとT-Mobileの合併が最終段階へ進んだこともあり、これからは上り調子になるというニュアンスも含まれていた。

しかし2月、3月、4月と時間が経つ中で、ソフトバンクグループはさらに苦境に追い込まれている。このような状況の中で、5月18日の決算発表会で孫会長は何を語るのか、注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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