VRIO分析とは?自社の強みや提供価値を定義するためのフレームワークを紹介

2020.3.24
BUSINESS
(写真= AnemStyle /Shutterstock.com)
(写真= AnemStyle /Shutterstock.com)
「VRIO分析」は自社の経営資源を分析し、強みや弱みを定義するために必須のフレームワークだ。ビジネスでは外的環境を分析することが重要だが、自社について理解することも重要である。そこで今回は、VRIO分析の歴史や分析方法、実際に活用されている事例を紹介する。

VRIO分析とは?自社の経営資源を分析し強みを見つけるための分析方法

VRIO分析とは、

Value(価値)
Rarity(希少度)
Inimitability(模倣可能性)
Organization(組織)

の頭文字をとった用語で、主に自社の経営資源を分析するためのツールである。3C分析やPEST分析などが自社を取り巻く外部環境の要因を分析するツールであるのに対し、VRIO分析は、「外部環境の変化に対応するにあたって、自社はどのような強みまたは弱みを持っているのか」という、自社の特性を定義するためのツールと言えるだろう。

オハイオ州立大学経営学部のジェイ・B・バーニー教授が提唱した考え方に基づいており、企業が独自に持つ経営資源を活用することで、持続的な競合優位性を獲得できるとしている。具体的には同業他社と比較して、自社はどのような競合優位性や強みを持っているかを特定する目的で活用する。

VRIOを構成する4つの項目とは?Value、Rarity、Inimitability、Organization

では、VRIOのそれぞれの項目について具体的に解説しよう。

Value(価値)……経営資源の経済的価値

経済的に価値がある経営資源を指す。外部環境からの脅威に対する対処や、市場への参入機会を考える際に重要となる。たとえば、豊富な人材を擁していることや、ある特定の業界に対して太いパイプを有することなどがこれに該当する。

Rarity(稀少度) ……独自の開発・生産技術

他社が持っていない独自の経営資源を指す。これは、他社の新規参入に対する参入障壁となることが多い。自社にある独特な開発技術や生産技術などがこれに当たる。

Inimitability(模倣可能性)……高度な技術や複雑なバリューチェーン

他社が真似できない経営資源を指す。模倣することが困難であればあるほど、長期的な競合優位性につながる。長い時間をかけなければ醸成できない顧客との関係や技術、独自のバリューチェーンにより外部からは仕組みがわからないという複雑性などもこれに当てはまる。

Organization(組織)……体系化された企業内文化や組織体制

企業内文化や組織構造として、強みを充分に発揮できる体制があるかどうかを指す。企業文化の醸成や組織構造の明確性などが、経営における意思決定スピードや実行力に直接的に関わるため、重要な項目である。

VRIO分析を実行する4つのステップ 経済価値、希少性、模倣困難、組織

実際にVRIO分析を行うためには、どのように進めていけばいいのだろうか。VRIO分析で自社の強みを整理する際は、以下のような表を作成するとよりわかりやすくなるだろう。

今回は、この表を使ってVRIO分析を行う方法を4つのステップに分けて解説していく。

ステップ1……バリューチェーンの洗い出し

まず、自社のバリューチェーンを抽出するところから始めよう。バリューチェーンとは、自社の事業構造やプロセスを分解し、顧客に対する提供価値が、自社の活動のどの部分から出されているものかを判断するフレームワークである。

バリューチェーンは各業界で一定の型があるので、それらを参考にするといいだろう。たとえばメーカーであれば、どのような商品を作るかという「商品企画」、製造のための原料を仕入れる「調達」、原材料を基に製品を作る「製造」、それを倉庫や顧客のもとに届ける「物流・流通」、顧客に売る「販売」、そして販売後のフォローとなる「カスタマーサポート」である。

ステップ2……自社の経営資源の特徴を洗い出す

ステップ1で書き出したバリューチェーンの要素に対する、自社の特徴を書き込もう。できれば他社と比較して強みとなりそうな要素を探したい。記入例は以下のとおりだ。
  • 商品企画……社員アンケートで集めたアイデアを取り入れた斬新な発想の企画プロジェクト
  • 製造……最新設備を取り入れた効率的な生産体制

ステップ3……VRIOの各項目を評価

ステップ2で自社の経営資源の特徴を分析したら、VRIO分析の各分析項目であるValue、Rarity、Inimitability、Organizationの観点で順番に分析していこう。各項目で当てはまる場合はYes、当てはまらない場合はNoと記載する。

・Value(価値)があるかを判断する
経営資源の価値は、「それを失ったら、経営コストや売上に影響が出るかどうか」を基準にするといいだろう。価値のある経営資源は、企業間競争において武器になる。

気を付けなければならないのは、貸借対照表(BS)に記載されているからといって必ずしも価値ある経営資源とは言えないことだ。たとえば不動産を所有していたとしても、企業間の競争優位性に影響しない場合は価値なしと判断すべきであろう。

・Rarity(希少性)があるか判断する
その価値に稀少性があるかどうかを判断する。経済的に価値のある資源を持っていたとしても、他社も同じような資源を有している場合は強みにはならない。強みとするためには、他社が持っていない稀少な経営資源を有する必要がある。

・Inimitability(模倣可能性)があるか判断する
価値ある稀少な経営資源があっても、後発企業が容易にそれを手にすることができれば、時間とともにその優位性はなくなっていく。時間的かつ構造的に他社が真似できない仕組みを作り上げているかどうかが、持続的な競合優位性を持つ上でのポイントとなる。

・Organization(組織)があるか判断する
優位性のある経営資源を持っていたとしても、それを上手く活用するための体制ができていなければ、そこから価値を生み出すことはできない。

企業活動の根底は「戦略立案」と「実行」にあり、特に後者は軽視されがちだが企業間で最も差の出やすいポイントだ。組織が一体となって動くためには、文化の醸成やマインドセット、命令指揮系統などの実効性を整理する必要がある。

ステップ4……競争状態を判断する

ここまでの分析で、自社の経営資源がVRIOの各項目の問いに対してYesかNoかを判別できていることになる。この結果を用いて、自社のどの経営資源が最も優位なのか、どの経営資源にリソースを優先的に投入すべきかを判断しよう。

以下のように判断するといいだろう。
 
項目 評価
VのみYes・RIOはNo 競争均衡
VRはYes・IOはNo 一時的な競争優位
VRIはYes・OはNo 持続的な競争優位
VRIOすべてYes 経営資源の最大活用

経営資源を「最大活用できる」と判断できるのは、VRIO分析のすべての項目で「Yes」という判断がなされた場合だ。自社の最も大きな強みはその経営資源にあるため、今後はリソースを集中的に投下するなどの判断ができるだろう。

VRIOを有効活用している企業の事例4選 NTTデータ、オリックスなど

では、具体的な事例を見ながら、VRIOそれぞれの項目を解説しよう。

事例1 NTTデータ……圧倒的な事業のValue(価値)を有する会社

圧倒的な事業のValue(価値)を保有する企業として、NTTデータが挙げられる。同社は、売上高2兆円超、従業員数12万人以上のシステムインテグレーションの国内最大手企業だ。官公庁、金融、製造などを中心に、あらゆるセクターや業界におけるシステムの受託開発を手がける。

開発人材の豊富さとあらゆるソリューションニーズに応えてきた実績、さらにナショナルクライアントを含めた企業とのネットワークは、他の追随を許さない強い価値と言えるだろう。

事例2 プリファード・ネットワークス……Rarity(希少性)の高い技術を持つユニコーン企業

Rarity(希少性)のある技術を持つ企業として、プリファード・ネットワークスが挙げられる。同社は、深層学習などの先端技術研究開発に特化したスタートアップで、現在はAI研究の最前線に位置している。日本初のユニコーン企業(未上場で企業価値10億ドル以上の企業)としても有名だ。

その技術力は各分野から高く評価されており、唯一無二の技術力を有する企業として名高い。
トヨタ自動車と連携した交通システムの開発や、ファナックと提携したファクトリーオートメーション技術の開発など、大手と連携してAIを活用した技術開発を進めている。

事例3 オリックス……事業ポートフォリオの複雑性で参入障壁を築く

バリューチェーンの構造的な複雑性を持つ企業として、オリックスが挙げられる。同社は言わずと知れた総合リースの国内最大手であるが、それだけに留まらず保険、信託、ホテル、レンタカー、金融サービス全般、不動産、事業投資、球団保有と、BtoB、BtoCを問わず事業を多角化している。

多岐に渡る事業を展開するオリックスの強みは、「Inimitability(模倣可能性)」にある。事業を単体で手がける企業は多いが、これほどバラエティーに富んだ事業を1社で展開できる企業はオリックス以外にはないだろう。事業ポートフォリオを広げることで、全体としての収益変動リスクを抑えるとともに、顧客がオリックスで複数のサービスを利用することで囲い込みにもつながる。

さらに、多角化には外部から企業の本質的な価値がどこにあるのかを見えにくくするという効果もある。事業セクターごとの関連性や経営資源の配分が外部から見えにくいため、競合他社は模倣しにくいのだ。

オリックスは、「複雑性」によって参入障壁を築いている例と言えるだろう。

事例4 サイバーエージェント……チャレンジできる文化を醸成した企業

Organization(組織)の文化で独自性を見せる企業として、インターネット企業大手のサイバーエージェントが挙げられる。同社は「人材の成長=企業の成長」と捉え、新規事業コンテストなど若手が挑戦できる環境作りや、福利厚生制度の充実、快適なオフィス環境の構築に積極的に取り組んでいる。

特に経営者育成には力を入れており、斬新なアイディアとやる気を持つ優秀な若手を子会社の社長に抜擢し、経営者としての経験を積ませるという。そうして経営の経験を積んだ若手が、サイバーエージェント本社の経営陣として活躍するという仕組みだ。

チャレンジと失敗を歓迎し、社員を奮闘させる体制を作り上げた同社だからこそ、「AbemaTV」のような革新的な事業を生み出せるのだろう。

VRIO分析で自社の本質的な強みをあぶり出そう

近年はインターネットの普及によって情報の入手が容易になり、企業が事業の模倣困難性や希少性を維持することが難しくなっている。事業のユニークさや目新しさを求めて新規事業の計画などに夢中になっていると、自社の経営資源の本質的な価値を見過ごしてしまうこともあるだろう。

VRIO分析は、自社の本質的な強みや弱みをあぶり出せる貴重なワークフレームだ。不確実性の多いビジネスというフィールドで、持続的に注力する事業を特定するためのツールとして活用したい。

文・森琢麻(MAコンサルタント)
 

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