チームや組織を率先してまとめ奮いたたせる上で、リーダーシップは重要なカギとなる。大手企業のトップならばなおさらだ。

国際的な規模で事業を展開するAmazon、Apple、GoogleのCEOのエピソードから、企業を率いるリーダーシップの秘訣が学べるかもしれない。それぞれスタイルは異なるものの、「社員を育てる」「失敗を恐れず、自ら認める」「社員の努力を称える」といった点は共通する。

ティム・クック——CEOとして最も重要なのは「狭量にならないこと」

「最も影響力のあるリーダー」のひとりとして知られるAppleのクックCEOは、「成功する上でリスクは付きもの」「失敗なくして成功はあり得ない」ことを理解している。ある程度のリスクを計算にいれ、それに上手く対応する覚悟ができていなければ、周囲から十分なサポートは期待できない。

故スティーブ・ジョブズ氏が荒々しく個性の強いCEOだったのとは対象的に、クックCEOは「物静かで人の話を注意深く聞く」性質だという。クックCEOを知るアラバマ州オーバーン大学エンジニアリング学部のサイード・マハソードルー教授 曰く、「常に静かに座って話に耳を傾け、質問する姿を見るのは稀」とのことだ。

こうして周囲の人間から耳にした話や意見に信用を置き、「トップである自分が一番なんでも知っている」という態度は決してとらない。ジョブス氏同様、自分の間違いを素直に認める勇気もある。それと同時に寛大さも備えており、Apple株が暴落した際、「S&P 500のパフォーマンスが低迷したら、自分の株式報酬を3分の1(1.3億ドル相当)まで減らす」と決めたという。

またAppleの成長を維持するために「多様性が必須」としており、社員の最もよいところを引きだし、その成長を促すという形で自社にとって最適な人材育成を行っている。日常的なタスクにがんじがらめにならず、現在・未来の才能を育てることは一見当たり前にように思えるが、実践するとなるとなかなか難しい。

「初心を忘れない」点にも人柄が現れている。多忙な中、定期的に店舗を訪れ、店内の客とコミュニケーションを図るそうだ。CEOとして最も重要な要素は「狭量的にならないこと」だと断言している(ライフハック2017年7月7日付記事 )。

最近ではiPhone Xの成功についても開発チームへの感謝をしっかりと言葉で表現し、「並みならぬ努力を大変誇りに思っている」と称えている(CNBC2018年1月19日付記事 )。

ジェフ・ベゾス——顧客を優先し、社員には厳しく結果をだす

個性的なリーダーシップでAmazonを巨大企業に育てあげたベゾスCEO。トップとしての信念は、「顧客最優先主義」を社員に徹底的にいきわたらせる点にある。

顧客がなにを求めていてなにを必要としないか—を徹底的に追求し、「5.6万人の社員ではなく世界1.6億人の顧客に重点を置く(フォーブス誌2012年4月4日付記事)」 スタイルだ。Amazonが常に顧客満足度の高い企業の座を維持している秘訣はここにある。そしてそれこそが「Amazonで働く誇りと向上心」を社員にあたえているのだろう。

それでは社員に十分な敬意を払っていないのかというと、けっしてそうではない。ベゾスCEOは社員に厳しいが、それだけ社員に対する期待が高いということだ。有名なエピソードとしては、Amazonがまだオンライン書籍小売店だった頃、500人の社員は一分につき12件の顧客メールに対応するというノルマを課されていた。7件以下だと解雇されることもあったという。

ベゾスCEOの無邪気な一面を示す話もある。Amazon設立初期、社内の全員が深夜まで本の出荷作業を行っていた。出荷作業用の机がなかったため、全員コンクリートの床に両膝をついて梱包していたそうだが、数時間後、ベゾスCEOは「作業用の膝パッドを注文する必要があるな」とつぶやいた。従業員のひとりが「代わりに作業机を注文したらどうですか」と提案するまで、仕事に没頭するあまりそんな当たり前のことに気が回らなかったのだ(ウォールストリートジャーナル2011年10月5日付記事 )。

ベゾスCEOの厳格なスタイルは、だれにでも受けいれられるものではないだろう。しかしその厳しさを乗りこえ、自分自身に挑戦する機会をあたえてくれるのは確かだ。

サンダー・ピチャイ——「反多様性声明書」を作成した社員を解雇したトップの威厳

Googleを支えるピチャイCEOだが、2017年夏、ピチャイCEOのトップとしての器が問われる出来事が社内で起こった。社員のひとりが作成した10ページにもおよぶ「反多様性声明書」 が、広範囲に流出したのだ。これは「女性と男性では多くの点で生物的に異なる」ため、「女性は男性よりもエンジニアとして劣る」という内容のものだった。

この声明書はメディアなどに掲載され、大反響を呼んだ。事態の収集に乗りだした ピチャイCEOは自社サイトに声明文を掲載し、「従業員には意見をいう権利がある」と前置きした上で、こうした意見を「攻撃的な振舞い」「許される行為ではない」と批判。声明書の著者である社員を解雇した。

社内には反多様性声明を支持する声もあったというから、ピチャイCEOにとっては「ひとりの社員を解雇する」という域を超えた難題だったと思われる。組織内の多様化に異論を唱える勢力に歯止めをかけつつ、言論の自由を支持する姿勢を見せる必要があった。結果的にピチャイCEOの決断は、「Googleのトップの権威を示した」と世間には受けとめられたようだ。

仕事への取り組みでは「失敗を勲章だと思え」という発言をするなど、クックCEO同様、従業員に失敗を恐れず伸び伸びとチャレンジできる職場環境作りに務めている(burffee.comより )。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)
 

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