吉野家ホールディングスは、2020年1月10日に2020年2月期の営業利益予想を発表。前期の34倍となる36億円に急回復するというものだった。一時は深刻な赤字に転落した吉野家だが、最近は業績改善が堅調だ。

営業利益予想を大幅に上方修正

吉野家ホールディングスは2020年1月、2020年2月期第3四半期の連結業績(2019年3~11月)を発表した。売上高は前年同期比6.6%増の1,598億7,600万円となり、第2四半期の6.7%増と同水準を確保した。

営業利益は、前年同期の5億6,200万円の赤字から28億9,000万円の黒字へ。経常利益も1億2,900億円の赤字から33億5,100万円の黒字に、純利益も15億5,800万円の赤字から17億7,400万円の黒字に転換している。

最も注目すべきは、2020年2月期の通期の連結業績予想を上方修正したことだ。第2四半期時点では営業利益予想を10億円としていたが、26億円を積み増して36億円としている。

2019年2月期の営業利益は1億400万円であり、予想通りとなれば、吉野家ホールディングスの今期の営業利益は34.6倍になる。大復活と言っても過言ではないだろう。

業績急回復の理由は?新商品の大ヒットと積極的キャンペーン

なぜ、吉野家ホールディングスの業績は急回復したのか。考えられるのは、新商品の発売とキャンペーンだ。

吉野家ホールディングスは主力の「吉野家」事業において、昨年3月に28年ぶりの新サイズ「超特盛」を導入した。価格は723円(税抜)。「特盛」をさらに上回るこの「超特盛」が、予想を超えるヒットとなった。並盛が352円であることを考えると、倍以上の価格である超特盛のヒットは客単価向上に貢献したと言える。

また、今期は来店頻度の向上を目的に、5月には「ライザップ牛サラダ」、9月には「月見牛とじ御膳」の販売を開始。さらに、吉野家に次ぐ売上規模である「はなまる」事業とのコラボ企画として、「吉野家80円引き!定期券」を発売した。消費増税に合わせて「牛丼・牛皿全品10%オフキャンペーン」を実施したことも記憶に新しい。

この結果、吉野家事業の売上高は前年同期比7.6%増となり、同社の売上増を牽引するかたちになった。  

アークミール売却でさらなる収益性アップも!?

今後のさらなる業績改善も見込める。昨年末、吉野家ホールディングスは連結子会社である「アークミール」の全株式を売却することを発表した。吉野家ホールディングスはメイン事業の吉野家のほか、はなまる、京樽、アークミールを展開している。アークミールはステーキのどん、フォルクスなどを運営する会社だ。吉野家ホールディングス傘下の企業の中でもアークミールは経営状況が厳しく、悩みの種だった。

前年同期比で見ると吉野家は7.6%、はなまるは6.2%、京樽は3.6%といずれも増収だ。しかし、アークミールは2020年2月期第3四半期の連結業績でも、売上高が前年同期比1.6%減となった。この不採算部門を売却することで、2021年2月期は業績の回復が一層顕著になると考えられる。

また、吉野家ホールディングスの海外事業も好調で、2020年2月期第3四半期の連結業績では前年同期比4.7%の増収だった。少子高齢化が進む日本国内の市場規模は、今後縮小していくことが予想される。しかし、海外の新興国マーケットはまだまだ伸び盛りだ。海外事業全体では4.7%の増収だが、一部の部門では第3四半期の連結業績において前年同期比で48.5%の増益となっている。この好調さを維持したいところだろう。

売上増と不採算部門の切り離しで今後も期待できる

牛丼業界は、価格競争が厳しい業界の1つだ。吉野家はこれまで通り、他店との価格競争や差別化というタフな取り組みに注力していくだろう。

マーケットでは、経営基盤の強化を目的とする不採算部門の売却は、同社の完全回復に向けた好手であるとの見方が強い。売上増との合わせ技で吉野家の業績がどこまで伸びるか、注目したい。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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