レイ・ダリオ氏は、ブリッジウォーター・アソシエイツを世界最大規模のヘッジファンドに育て上げた超富裕層だ。類まれな成功を「自分が特別な人間だったからではなく、人生に対して独特なアプローチをとった結果」だと語る。

同氏が著書『プリンシプルズ』で明かしているアプローチは、オマハの賢人ウォーレン・バフェット氏の名言と通じる点がある。

ダリオ氏が自らの経験から学び、今も継続しているという「成功への5ステップ」とはどのようなものなのだろう。

「苦痛+反省=進歩」成功への5ステップ

ダリオ氏は成功は5つのステップで構成されており、人生はこのステップの繰り返しだと学んだ。生易しいプロセスではないが、問題を解決する度にもっと大きなことにチャレンジする度胸がつき、1サイクル終えるごとにさらなる高みへとのぼっていけるという。

1.目標探し――自分が人生のどの段階にいるかを知る

どのようにして生活を立て直し、どのようにして順調に進んでいくか--成功したければ、「成功の法則」を知るよりも、「自分が人生のどの段階にいるか」を知る方が重要だとダリオ氏は語る。

「一連の習慣は意識するには軽すぎて、打ち破るには重すぎるレベルに達するまで気がつかない(EverydayPowerより)」というバフェット氏の名言があるが、確かに日々の習慣に飲みこまれてしまい、自分が何が欲しいのか、どこを目指しているのか見失いがちだ。
目標をクリアにするために、自分自身をよく理解し、何を本当に求めているのかを把握することが最初のステップとなる。自分がどのような人生を歩むか自分で決めたいのであれば、自分で決断し、行動に移す勇気が必要だ。

2.問題探し――現実と向き合う

ゴールにたどり着くまでの道のりを阻む障害は何か。経済的・環境的・精神的・肉体的などの原因があるのか、あるいは単に決断力や勇気に欠けるのか。

ダリオ流成功論の基盤は「現実を喜んで受け入れ、対応する」ことだ。真実と直面するのは時として苦痛だが、「真実は、良い結果を得るために不可欠な基盤である」。

バフェット氏も「失敗しない人はいない。失敗しなければ決断は下せない。私自分自身、もっと大きな失敗を何度も犯してきた」と説いている。

3.問題の原因探し――自我と盲点が2大バリアー?

障害物を断定したら、解決法に飛びつく前に過去を振り返り、まずは問題が生じた原因を探る。そもそもなぜ、いつ、どこで問題が生じたのか。

眠っている潜在能力や成功の可能性を阻んでいるバリアーを理解し、対処法を学ぶことが、さらなる進歩につながる。

ダリオ氏が2大バリアーとして挙げているのは、「自我」と「盲点」だ。人間は自我のせいで自分の弱点やミスについて深く考察することを拒絶する。客観的な視点から物事を見れず、盲点に足をすくわれる。

「自我・貪欲さ・妬み・恐怖・模造が失敗を招く。私は賢いから成功したのではなく、道理をわきまえているから成功したのだ(AZQuotesより)」と、バフェット氏も同じ見解を示している。

4.対応策を立てる――「オープンマインド思考」を習得

問題の原因を理解したら、次にそれを取り除くための設計図(解決法)を描く。ダリオ氏は、経済が取引の集合体であり、機械のように動いていると例えているが、問題と進歩の繰り返しも機械と同じようなものである。それは形や周期を変え、繰り返し訪れる。

重要なのは柔軟な思考だ。全ての物事を見通せる人間はいない。また人の見方はそれぞれちがう。様々な人の視点から物事を見る能力をつけることで、様々な物事を様々な角度から見ることができる「オープンマインド思考」を身につける必要がある。

5.行動に移す

問題の原因を理解し、解決法を見つけたら行動に移す。問題が解決したらさらに前へと進んでいく。

ダリオ氏が「自然の法則」と呼ぶこの5ステップは、社会生活のいたる所で繰り返されている。困難を乗り越えて前進できるか、後退のスパイラルに巻き込まれるかは、積極的かつ客観的に失敗と向き合い、ループの軌道修正に向けて正しい決断を下せるか次第だ。

バフェット氏も次のように述べている。「情熱なくして力はでない。力がでなければ何もない(Wealth Liftバフェット氏名言集より) 」。 

リスクと報酬はペアになっている

ダリオ氏いわく、リスクと報酬はペアになっている。リスクが低い方向に進めば失敗しても損失は少なくてすむ。しかし大きな成功は期待できない。

リスクや問題も違う見方をすれば全く変わってくる。ダリオ氏は学習の繰り返しを通し、問題をパズルのようにとらえ「解決すれば報酬がもらえる」とポジティブな面に目を向ける思考を身につけた。

大きな成功を望むのであれば、リスクは避けて通れない。「苦痛+反省=進歩」の方程式を頭の中に叩きこんでおけば、例え失敗して苦境におちいったとしても、前に進む勇気がでる。

「人生において失敗と思えたほとんどのことが、結果的には成功だった(Levo.comより) 」というバフェット氏の言葉に勇気づけられる。

生きている限り、永遠に挑戦し続ける

ダリオ氏が最大の挫折を経験したのは、ボルカー・ショックが経済市場を揺るがしていた1982年だったという。米経済が不況におちいると賭けたが大損失をこうむったのだ。その結果、ブリッジウォーターから大切な部下が次々と会社を去り、自分も支払いのために父親から4000ドルを借りたという。

この際、昔のように人に雇われて働くか、会社を継続させるかという重大な選択をせまられた。ダリオ氏は大きな成功を求め、後者を選んだ。受験や事業で失敗する、大切な人を失う、大病や事故に見舞われる--「もう自分の人生はめちゃくちゃだ」と絶望的な気持ちになるのは人間として当然だ。しかし苦境は永遠に続かない。脱出と前進の道がいずれ見えてくる。

ダリオ氏は「自分の成功は全て、自分が知らないことにどのように対処したかに関連している」と述べている。自分にとって最良のPrinciple(原理)は、自分の価値観に基づいて自分で作りあげるものだ。

「私は失敗とそれに対する反省によって、Principleを人生の経験で習得してきた」が、Principleには終わりがない。そのため、確固たる地位を築き上げた現在も繰り返しているというし、今後も挑戦し続けるだろう。

バフェット氏にもこのような名言がある。「挑戦し続けろ。そして最も歓迎されているアイデアを喜んで修正しろ(QuoteFancyバフェット名言集より)。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
 

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