先日、「働き方改革」の柱である「同一労働同一賃金」の適用時期を1年延期すると厚生労働省が発表し、大きな話題となっています。大企業の2020年度、中小企業は2021年度を適用時期とし、同一労働同一賃金が適用されることによる、労働者の賃金表を見直すなど企業の準備に時間がかかると配慮しているとのこと。

そんな今注目の「同一労働同一賃金」について、みなさんにもっと知ってもらうために、過去に掲載した記事を再投稿!
同一労働同一賃金が実現すると、あなたの働き方や生き方の幅がぐんと広がる可能性があるんです。

同一労働同一賃金が注目されている今、その概念や現状、どんなメリットやデメリットがあるか学んでみましょう!

同一労働同一賃金とは?

仕事内容が同じもしくは同等の労働者には同じ賃金を支払うべきだという考え方です。古くは1900年前後から、性別や人種などの区別なしに同じ賃金を支払うべきだと欧州諸国を中心に叫ばれてきました。

近年の日本で特に問題となっているのは、正規労働者(正社員)と非正規労働者(パートや派遣)の待遇差。同じ仕事をしているのにもかかわらず雇用形態が違うために、給与をはじめとして福利厚生やキャリア形成などの待遇が異なっていることは、みなさんよくご存知だと思います。

2016年には日本全体の非正規労働者数が2,000万人を超え、労働者全体の37.5%を占めています。また、賃金を時給換算すると、非正規労働者の時給は正規労働者の時給の70%程度にとどまり、ボーナスや退職金といった各種制度や教育訓練などについても大きな格差があります。

欧州を参考にして2016年12月には「同一労働同一賃金ガイドライン案」が作られ、安倍首相は「我が国から『非正規』という言葉を一掃することを目指す」と言っています。今後は同一労働同一賃金の実現に向けて、法改正の動きが本格化していく見通しです。

参考:非正規雇用の現状と課題

同一労働同一賃金で待遇差はどう改善されるの?

「同一労働同一賃金ガイドライン案」で紹介されている、具体的な「不合理な待遇差」の一例を見てみましょう。

●賞与(ボーナス)を、労働者の実績・成果に応じて支給する場合

【合理的な待遇差の例】
正社員Aさんは、売上や数値目標に対する責任を負い目標未達の場合にはペナルティを受ける。正社員BさんとパートタイムCさんは、それらの責任は負わず目標未達の場合もペナルティは受けない。Aさんは賞与をもらっているが、BさんとCさんは賞与をもらっていない。

【不合理な待遇差の例】
正社員AさんとBさん、パートタイムCさん3人の会社業績に対する貢献度は同じである。しかし、CさんはAさんやBさんと同じだけの賞与をもらえない。
Fledge
(画像=Fledge)

不合理な待遇差から分かるように、同一の貢献をした人には雇用形態に関係なく同一の支給をする必要があり、貢献度に一定の違いがある場合はその違いに応じて差を付けなければならないということです。例えば飲食店で、正社員や派遣社員に関係なくみんなが同じように接客をしていても、売上に対する責任がある人には、そうでない人より高額の賃金が支払われます。

ちなみに、「同一労働同一賃金ガイドライン案」はあくまでもガイドラインで法的拘束力はありませんが、かなり具体的な事例が示されていて、同一労働同一賃金の実現に対する政府の本気度がうかがえます。

同一労働同一賃金のメリット

続いて、同一労働同一賃金が実現したらどんなメリット・デメリットがあるかを考えていきましょう。

▼個人のメリット

・非正規社員の賃金が上がり、経済的な余裕が生まれる
非正規社員であるために賃金が低く生活に苦しんでいる人が多数いることは、みなさんご存知ですよね。彼らに経済的余裕をもたらすことが、同一労働同一賃金の導入で最も期待されています。

・より自分に合った働き方・生き方を選べる
雇用形態や勤続年数によってではなく、スキルや経験、成果によって賃金が決まるようになれば、働き方や生き方の選択肢が広がります。経済的にも精神的にも「正社員になって同じ会社で長く勤めなければ」という呪縛から解放され、キャリアの途中でも充電期間や勉強期間を設けたり、派遣社員として専門スキルを積んだのちに独立したり、自分に合った生き方を模索することができます。
また、大きな責任を持ってバリバリ働き続けたいという人も仕事はそこそこでいいという人も、それぞれの労働に応じた賃金を受け取ることで、お互いの生き方をより尊重できるようになるでしょう。

▼企業のメリット

・非正規社員のパフォーマンスが向上する
仕事に対するモチベーションは人それぞれですが、やはり賃金はモチベーション維持のために最も重要な要素のひとつです。賃金が上がれば非正規社員のモチベーションが上がり、彼らのパフォーマンスの向上が期待できます。ひいては、企業の業績アップにつながるかもしれません。

同一労働同一賃金のデメリット

メリットもありますが、一方でこんなデメリットもあります。

▼個人のデメリット

・正社員の賃金が下がる可能性がある
非正規社員の待遇改善に伴って賃金の再分配が行われ、正社員の賃金が低くなる可能性があります。これまで正社員という立場に甘えてスキルや経験を積んでこなかった人は、特に賃金低下のリスクが高いでしょう。

・新規雇用が減る可能性がある
非正規社員の賃金アップによって人件費が上がり、企業が新規雇用を控えるかもしれません。

▼企業のデメリット

・人件費が上がる
社員の賃金をこれまでと同じ水準で維持しようと思うと、人件費が上がることは避けられません。そうすると、人件費カットのためのリストラをしたり、他の部分への投資ができなくなったりする可能性もあります。

・賃金差の合理的理由を社員に説明する責任が生まれる
同一労働同一賃金の導入に伴って欧州のように法改正が進むと、なぜ賃金に差があるのかを立証する責任が企業に生まれます。合理的理由が説明できない場合には企業が賠償責任を負う可能性も。これは労働者にとってはありがたい制度と言えるので、法律が改正されたときには目を通しておくといいでしょう。

まとめ

同一労働同一賃金をはじめとして、働き方をめぐる変化が激しい昨今。「正社員だから」「勤続年数が長いから」「年齢が高いから」といった理由だけで高い賃金がもらえる仕組みでなくなるということは、私たち若い世代にとってはチャンスです。

同一労働同一賃金の実現に向けてはたくさんの課題があり、本当に実現されるのか、いつ実現されるのか、現時点では定かではありません。しかし、雇用慣行や世の中の状況にどんな変化があってもうまく対応できるようになるためには、自分のスキルを磨くことはもちろん、政府の政策やそれに対する企業の対応をチェックしておくことも大切です。

同一労働同一賃金の導入のように、これまで常識とされていたことが覆るような大きな変化があると、不安な気持ちになるのは当然のこと。その変化を受けて、自分はどう生きたいのかを前向きに考え、ワクワクとした気持ちで変化を楽しんでいきましょう!

文・YUKA SUZUKI/提供元・Fledge

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