「『超』メモ帳」なら、情報を無限にためて瞬時に引き出せる
AIのパターン認識能力の向上やデータのクラウド保存で、これまでは不可能であったことが可能になっている。こうした技術を個人の発想作業でどのように活用できるのか?
※本稿は、野口悠紀雄著『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
待ち望んでいた技術が実用的になった
メモは、発想にあたって非常に重要な道具です。
ところが、これまで、メモを取るのは決して簡単なことではありませんでした。
メモ用紙が手元にあるとは限りません。あったとしても、それに書くのが簡単ではありません。
したがって、重要なことだけをメモしようとします。あるいは、後になって考えがまとまってからメモしようとします。しかし、このようなことをやっていると、考えていたことを忘れてしまうのです。思いついたことを直ちにメモして逃さないようにするのは、大変重要なことです。
しかも、これまでは、メモに書いても、その紙片が行方不明になってしまうことが頻繁に生じました。紛失しないためには、紙片に書いたままにせず、PCに記録するなどの手間が必要でした。これも、決して簡単なことではありませんでした。
ところが、こうしたことに関する条件が、ここ数年で大きく変わったのです。それは、AIを用いた音声認識機能を使って、誰でもスマートフォンで簡単にメモを取れるようになったことです。スマートフォンに向かって話すと、瞬時にテキストの文字列に変換してくれます。
スマートフォンは、どこにでも持っていけて、いつでも使えるので、いつでもどこでも、思いついたことを実に簡単にメモできるようになりました。しかも、そのメモを紛失することがありません。
上に述べたメモに関するすべての問題が、音声メモによって解決されたのです。
また、最近ではスマートフォンで写真をとることが簡単になったので、紙にメモを取っても、写真をとっておけば、紛失することはなくなりました。
こうして、メモの新しいシステムを作ることが可能になっています。
ポイント メモは非常に重要だが、これまでは紛失などの問題があった。スマートフォンの音声入力機能を使うと、この問題を解決できる。
AIのパターン認識技術の成果
音声認識は、私が昔から待ち望んでいた夢の技術です。1990年代に、デスクトップPCで用いる音声認識ソフトが開発されました。このとき、早速飛びついて試してみたのですが、残念ながら、全く実用になりませんでした。それ以来、ごく最近まで、私は音声入力は不可能であるとあきらめていました。
最近の音声入力は、AIのパターン認識技術によって可能になったものです。従来はきわめて精度が低かった音声認識が、やっと実用段階に達したのです。
夢の最先端技術が、かくも手軽に、しかも無料でいくらでも利用できるようになったのは、驚嘆すべきことです。
音声入力は、まだ未完成な技術であり、不十分なところが多くあります。認識能力は完璧とはいえず、とくに専門用語が入ると、誤変換が多くなります。しかし、通常の言葉であれば、かなりの程度の認識能力があり、話すスピードがいくら速くても認識してくれます。
この技術が目覚ましいスピードで進歩していることに間違いはなく、それがわれわれの社会に与える影響はきわめて大きなものになるでしょう。
ポイント 音声入力は、AIのパターン認識によって可能となった夢の技術。
いつでもどこでも、簡単にメモを取れる
アイディアが浮かぶ場所は、通常は仕事机の上ではありません。それから少し離れた場所です。つまり、これまでの手段ではメモを取るのが不便だった場所です。
そうした場所で生まれるアイディアが、スマートフォンへの音声入力によって簡単に記録できるようになったのですから、この変化はきわめて大きいものです。
特筆すべきは、寝ている間に浮かんだ考えでも、ある程度はキャッチできるようになったことです。
寝ている間に新しい考えが出ることはよくあります。ところが、これまでは、そのメモを取ることができませんでした。「寝入りばなにいい考えが浮かんだのだが、メモを取るのが面倒なのでそのままにしていたところ、翌朝になったら、いい考えが浮かんだということだけを覚えていて、アイディアそのものは全く思い出せない」ということを、しばしば経験していました。
ところが、音声入力であれば、ベッドの中で寝た姿勢でもメモを取ることができます。そこで、こうしたアイディアを逃すことがなくなりました。これも、大変大きな変化です。
ポイント スマートフォンで音声入力を簡単にできるようになったため、いつでもどこでもメモを取れるようになった。このため、重要なアイディアを逃すことがなくなった
「超」メモ帳を作る
ただし、簡単にメモを取れるようになったため、メモの量が爆発的に増えました。そうなると、それらを管理することが問題になってきます。
大量にたまったメモの中から重要なものだけ残そうとして、不要になったメモを削除しようとしても、メモが増えるスピードのほうが速くて、追いつかないのです。
このため、「メモを取って、それを保存してあるのに、探し出すことができない」という問題が生じます。これをどのように解決するかが、AI時代の発想における重要な課題になりました。
デジタル情報については、保存容量には事実上制限がなくなったので、いくらでも保存することができます。そこで、「捨てるのではなく、検索する」という方針に発想を転換することが必要です。
そして、きわめて大量のメモの集まりから、求めるメモを、必ずしかも即座に引き出せるようにするための検索キーワード(タグ)のシステムをうまく構築します。すると、「いくらでもためて、必要なときにいつでも参照できる」メモのシステムができます。これは、「超」メモ帳と呼びうるものです。
より詳しく知りたい方は、『AI時代の「超」発想法』をご覧ください。さらに、本書に掲載されているQRコードから、「『超』メモ帳」の説明ページに飛ぶことができます。
キーワードシステム構築の具体的な方法については、『「超」AI整理法』(KADOKAWA)を参照してください。
ポイント 大量のメモをスマートフォンに記録した場合に問題になるのは、必要なメモを後で引き出せなくなること。「超」メモ帳はこれを解決する。
AI時代の「超」発想法
野口悠紀雄(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問) 発売日: 2019年09月18日
アイディアを出せる人材だけが、これからの社会で生き残る! AIに負けないための「知的創造力」の磨き方
野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問/一橋大学名誉教授
1940年、東京都生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、イェール大学Ph.D(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2011年より現職。著書に、『「超」整理法』(中公新書)、『「超」AI整理法』(KADOKAWA)など、ベストセラー多数。(『THE21オンライン』2019年10月14日 公開)
提供元・THE21オンライン
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