2019年10月、日本の消費税は10%になった。「EU(欧州連合)諸国に比べると、まだまだ低い」という声も聞かれるが、実際のところはどうなのだろうか。

消費税とは?日本での導入は1989年から

日本の消費税は海外の付加価値税(VAT)にあたるもので、商品やサービスの購入に課せられる間接税である。VATは世界160ヵ国以上で導入されており、特にEU圏では税率が高い国が多い。導入の目的は、主に財政の確保と社会構造の変化に伴う税制の均等化だ。

日本で消費税が導入されたのは1989年4月。3%から5%、8%、10%と、30年間で徐々に税率が上げられてきた。

消費税が高い国ランキングトップ5 1位はハンガリー

では、米SaaS企業アバララのデータから、消費税が高い国のトップ5を見てみよう。

1位……27.0%        ハンガリー
2位……25.0%        クロアチア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー
3位……24.0%        フィンランド、ルーマニア、アイスランド、ギリシャ
4位……23.0%        アイルランド、ポーランド、ポルトガル
5位……22.0%     イタリア、スロベニア
※各国消費税は2019年11月1日時点の数字。

税率が高い理由は国によって異なる

消費税の高い国トップ5はEU圏に集中しているが、理由は様々だ。

消費税率が日本の約3倍のハンガリーは、2009年の世界金融危機、2011年の市場の信認の悪化による通貨暴落と連続で経済的打撃に見舞われ、IMF(国際通貨基金)とEUから150億~20億ユーロ(約1兆8,057億~2兆4,076億円)の経済援助を受けることを余儀なくされた。

2013年以降はEUの平均を上回る成長を維持しており、失業率も2019年6月には3.3%まで回復している。しかし、OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、国民が「所得や教育、安全などを含む生活環境の質や幸福度は依然として低い」と感じていることが明らかになっている。

同国は財政難の穴埋めを目的として、外資系大手企業を課税対象とする金融取引税や銀行税、広告税など、様々な税制を導入している。ギリシャやイタリアでも、長年にわたって社会情勢や財政が不安定な状況が続いている。

一方、アイスランドや北欧諸国は生活水準が高く、医療や教育、福祉分野のサポートが手厚いことで知られている。高水準なサポートシステムを維持するための財源として、国民が高い税金を納めるという仕組みだ。

スウェーデンやハンガリーではイベントも軽減税の対象

今回の日本の消費増税で話題となった「軽減税率」は、特定の商品の消費税率を基準より低く設定する制度だ。日本では「軽減税率の対象がわかりにくい」という声を聞くが、日本のように軽減税率を導入している国は多い。

日本の軽減税率の目的は「低所得者の経済的負担の軽減」なので、対象は食品に限られる。他国では、基本的な食料品(野菜、肉、魚など)や新聞、外食などに加え、エンターテイメントやサービスなどにも軽減税率を適用している国もある。

たとえば、ハンガリー(27.0%)では基本的な食料品やホテルの宿泊設備、野外イベントは18%、医薬品や新聞・書籍類、ホテルやレストランのケータリングなどは5%の軽減税率が適用される。

スウェーデン(25.0%)では、ノンアルコール飲料やテイクアウトの食品、自転車、靴、革製品、衣類などの修繕費、ホテルの宿泊設備、レストラン、一部のアート作品などは12%、国内旅客輸送や新聞・書籍類、スポーツ施設の使用、スポーツおよび文化的イベントへ入場料などは6%だ。

アイスランド(24.0%)では、レストランおよびホテルのケータリングサービスなどは11%、食料品や書籍・雑誌、CD、光熱費は7%と定められている。

日本の税率は世界標準より高い?低い?

これらのデータを見ると、他国に比べて日本の消費税率は低いものの、ハンガリーやスウェーデンに比べて軽減税率の対象が少ない。軽減税率も一律8%だ。

また日本の消費税以外の税率は、他国と比べてもそれほど低くない。日本の個人所得税は最高で55.8%と、スウェーデン(60.1%)とデンマーク(55.9%)に次いで、OECD加盟国の中で3番目に高い。

それにも関わらず、1人あたりの国民総所得(GNI)は4万1,340ドル(約447万円)で世界21位。所得税率の高いノルウェー(2位)やアイスランド(6位)、デンマーク(9位)、スウェーデン(12位)のそれよりはるかに低い(世界銀行2018年データより)。

東京は、マーサー世界生計費調査の「生活費が高い都市ランキング」で世界2位になるなど生活コストが高い都市として有名だ。またEU圏は教育費や医療費が無料の国が多いが、日本では完全な無料化には至っていない。

所得額と税率のバランスを見ると、「日本の税率は低い」とは言えないかもしれない。

文・アラン・琴子(英国在住のフリーライター)
 

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