米中貿易摩擦の長期化、日韓関係の悪化、賃上げ政策の失敗……。韓国経済がさまざまな内的・外的要因によって、景気停滞長期化の危機に直面している。大手格付け会社も、韓国企業に対する否定的な見通しを相次いで示した。韓国政府に打開策はあるのだろうか。

格付け会社は韓国企業の現状を厳しく見ている?

米格付け会社のムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、グローバル・レーティングなどは、これまでに韓国企業の大幅格下げの可能性について独自レポートなどで言及している。対象となっている韓国企業の今後の業績次第で格下げは現実のものとなり、株価や資金調達などに深刻な影響が出る可能性がある。

両社のアナリストは、特に景気の影響を受けやすい半導体や鉄鋼、石油業界の企業が業績不振に苦しんでおり、米中貿易摩擦の影響で、輸出依存度が高い企業については今後厳しい状況が続く可能性があるという。

実際に、大手格付け会社から格付け見通しを「ネガティブ」とされた韓国企業も出てきている。さらに、日韓の貿易対立も韓国経済の先行きに暗い影を落としている。

日韓関係の悪化も懸念材料、解決の糸口は?

韓国経済の先行きに関する懸念材料となっている日韓の貿易対立に、解決の糸口はあるのだろうか。

日韓関係の悪化は、韓国最高裁が元徴用工訴訟で日本企業に対して賠償を命じたことに端を発する。韓国海軍が自衛隊機に火器管制レーダーを照射したことなども問題となり、日本は韓国を輸出管理における「ホワイト国(優遇対象国)」から除外する措置をとった。これに対し、韓国側も反発して同様の除外措置を決行し、韓国国内では日本製品の不買運動が起きた。

日韓対立の解決の糸口はまだ見えてこない。韓国政府による輸出優遇国からの除外措置について、菅義偉官房長官は記者会見で「極めて遺憾」と韓国政府の対応に否定的な姿勢を示している。対話による歩み寄りを目指すべきとの声もあるが、その場を作る目途も今のところ立っていない。

貿易摩擦による中国経済低迷が輸出依存型の韓国に影響

韓国経済については、文在寅政権による最低賃金の引き上げ策が自国経済に大きな傷跡を残したことも大きい。過度な引き上げは零細企業における人件費の負担増を引き起こし、結果的に雇用を維持することができなくなった企業が従業員を解雇せざるを得なくなったケースもある。

米中貿易摩擦が韓国経済に与える影響についても軽視できない。韓国の中央銀行が発表した2018年の韓国の経済成長率は2.7%だったが、中国の経済成長率が低下すると、輸出依存型の韓国経済は深刻なダメージを受ける可能性が高い。

韓国の某民間シンクタンク幹部は、中国の経済成長率が1%下がると、韓国のそれは0.5%下がると予想している。

韓国政府の打開策は?東南アジア市場を狙う

この状況の中で、韓国政府もただ手をこまねいているわけではない。

韓国政府は最近、国有企業に対して投資を増やすことで経済活動の活発化につなげてほしいと要請している。また、近年韓国は新興市場である東南アジアなどをターゲットにした戦略に注力しており、米中貿易摩擦や日韓関係の悪化とは別軸で、自国経済の強化を推し進めている。

しかし、今回挙げたような懸念材料が解消されなければ、韓国経済は長期的な景気停滞期に入ると指摘する専門家もいる。日韓関係の悪化により、日本でも韓国からの観光客が減少し、観光業界に大きな影響が出ている地域もある。今後も韓国の動きから目が離せない状況が続くだろう。

文・MONEY TIMES編集部
 

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