「無能上司」に共通するある特徴とは?叱り方、褒め方のポイントなど

2019.10.5
BUSINESS
(写真=dotshock/Shutterstock.com)
(写真=dotshock/Shutterstock.com)
(本記事は、平賀 充記氏の著書『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』=アスコム出版、2019年6月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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2ndStep共感と安心を育むコミュニケーション

コミュニケーションの数を増やすことで、若者との距離感が近づいてきたら、次に必要なのは、彼らとの本質的な信頼関係を築くことです。もう少し詳しく言うと、他人の反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境を提供することです。

これは、「心理的安全(Psychological Safety)」という心理学用語にもとづいた考え方です。ご存知かもしれませんが、グーグル社(現アルファベット社)が、「プロジェクトアリストテレス」などの成果報告として発表したことで、この「心理的安全」という言葉が注目を集めました。4年もの月日をかけて実施した大規模労働改革から「心理的安全性は、成功するチームの構築に最も重要なものである」との結論を導いたのです。

ビジネスシーンにおいて、本来の自分とは大きく異なる仕事用の人格を演じることなく、普段通りのリラックスした状況で仕事に臨むことができる状態がベスト。そうアメリカ随一のITの巨人が言うわけですから、相当な説得力です。

わかっちゃいるけど、それが難しいわけでしょ。読者のみなさんから、そんな声が飛んできそうですね。確かに、かなり大上段からの「あるべき論」ですし、実現難易度が高そうに感じられます。

しかし、心理的安全は、まさに若者にとって必要なものです。同僚からバカにされないだろうか、上司から叱られないだろうか……ただでさえ過剰に忖度しがちな若者は、心理的安全を渇望しています。

1stSTEPで、若者が「自分はここにいていいんだ」と感じられる居場所作りが重要だと述べましたが、さらに一歩進んだ「何を言っても否定せずに受け止めてくれる」居場所作りが次のステップです。

そんな心理的安全の提供に近づくために、ここで信頼関係を構築するためのコミュニケーション理論をご紹介しましょう。それが「ジョハリの窓」。「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」という4つの窓で、自己分析をしながら他者との関係を知ってコミュニケーションを模索する心理学モデルです。

信頼関係を築くには、「秘密の窓」と「盲点の窓」が重要とされています。

「秘密の窓」は、隠している自己。これをさらけ出すことでグッと人間関係が緊密になります。ある居酒屋チェーンの人事責任者(男性・39歳)は、新人導入研修のプログラムとして自分の半生を語るコーナーを設けています。アルバイトで入社してから店長を経て本部の役員になるまでの成功体験を語っているのかと思いきや、これまでの挫折体験に重きを置いているとのこと。それこそ仕事に限らずプライベートでの子育て失敗談まで。「従業員とホンネで付き合おうと思ったら、まずこっちが真っ裸になんないと」という彼の言葉には説得力があります。

もうひとつが「盲点の窓」。若者はこの「盲点の窓」に非常に敏感です。自分は気づいていないけれど、他人に見えている自分。ここをうまく刺激してあげることです。自分が思ってもみなかったいいところを、職場でどんどん発見される。それによって若者の承認欲求は満たされていきます。そして安心感がもたらされると、徐々に若者自身の「秘密の窓」が開いてくるのです。
 
グーグルも提唱する「心理的安全」の提供。確かに一朝一夕に実現できることではないかもしれませんが、基本的には「自分から素をさらけ出す」「若者が自覚できてないちょっとした長所を見つけてあげる」というふたつの行動で十分。その繰り返しが共感を育んでいき、徐々に関係が作られていくのです。

褒めは質より量!「プチ褒め」「プチ感謝」でOK

いつもしかめっ面で怒ってばかりの厳しい師匠が、最後の最後で「よく頑張ったな」とポツリ。またしかめっ面で歩き出す師匠の背中を、目に涙を浮かべた弟子が追いかけていく……。若者はこんな「ドラマティックな光景」は望んでいません。

第1章のケース2にもあったように、渾身の大褒めよりむしろ「プチ褒め」が望まれています。とにかく質より量。これは先述した「ジョハリの窓」理論ともリンクしています。本人の個性に刺さるちょっとした褒めの連続が「盲点の窓」を刺激してくれるのです。

個の長所を見つけて褒めるのが理想ですが、「プチ感謝」でも十分効果的。例えば報連相には必ず「ちょい足し」して返す。言葉はなんでも構いません。「よくなったな」と褒めてもいいし「大変だったろう」と共感してもいいし「助かったよ」と感謝を伝えてもいいでしょう。

褒めのプロといえば、松岡修造さん(51歳)。彼は「ほめくりカレンダー」を発売するなど、いまや日本における褒めの第一人者。ただ褒めるのではなく、相手をちゃんと把握して褒めるのに定評があります。産業能率大学が毎年発表している「理想の上司」で、近年三連覇していることからも、職場における褒めの効き目がわかりますよね。オトナが目指すべきは、シューゾーです。

「イエローカードの基準」を示すことが上手な叱り方のポイント

「プチ褒め」や「プチ感謝」が大事だと述べましたが、それは甘やかしていいという意味ではありません。もちろん、叱るべきときは叱る、間違いは正すのがオトナの役目です。しかし、「怒られ慣れていない若者」をどう叱ればいいのか。一歩間違うと辞めるに直結してしまう、一触即発の難しいコミュニケーションともいえます。今、「アンガーマネジメント」というトレーニングが、大注目されています。正しい叱り方を学ぶ必要性が高まっているのでしょう。

当然ながら、上から目線で理不尽に怒鳴り散らすのはもってのほか。「怒る」のではなく「叱る」でなければなりません。そのためには「叱る基準」をブレさせないことです。褒めるときは相手の個性に合わせる。叱るときはフラットで一律の基準を持つ。この使い分けです。

例えば「今日中に提出しなさい」と指示した資料が、いつ出てきたらあなたは叱りますか? 定時を過ぎたらでしょうか。あるいは、0時を過ぎたらでしょうか。どちらでも構わないのですが、とにかく「これを破ったらイエローカード」というルールを設定して示しておく必要があります。

しかし、このルールがブレている人が実は多いのです。あるときは定時を過ぎても叱らなかったり、あるときはギリギリ時間内に提出されたのに叱ったり。もしくは「今日中」がいつなのか、はっきりしていなかったり。つまり、気分によってルールが微妙に変わっていることがあるのです。これが若者から見た理不尽の正体です。

審判に抗議するサッカー選手を思い描いてください。ファウルの判定基準が曖昧だと、いくらイエローカードを出しても試合は落ち着かず、むしろ荒れ試合になって退場者が続出します。逆に、事実に基づく判定基準がしっかりしていれば、若者は素直に話を聞いてくれますし、ファウルを犯さないように努めます。

「ダメ出し」と「フォロー」のツンデレ効果

上手な叱り方のコツ、その2です。たとえ納得の理由で叱られたとしても、しょっちゅう叱られていると、自信を失ったりします。特に若者は「そんな自分が嫌だ」とか「いつも叱られている
ダメなやつと思われたくない」という自意識が強めです。

ダメ出しの言いっ放しは、どんどん二次被害を生んでしまいます。否定されると言われたほうは萎縮してしまうからです。またダメ出しされるのを怖がってしまって、意見を言うのが苦手になったり、自分なりのチャレンジをするのが嫌になってしまいます。「私には無理」「僕には向いていない」と思い込み、「辞める」につながりかねません。これでは「心理的安全」の真逆です。

そんな彼らには「ダメ出し」と「フォロー」をセットにします。若者っぽくいうなら「ツンデレ」でしょうか。

「提出時間を過ぎてるぞ。ダメだよ、決められた時間内に出さないと。(↑ツン)中身はよくできているんだから、もうちょい早くできたら完璧だな!(↑デレ)」こんな具合です。ダメなことはダメとはっきり言わねばなりません。しかし「プチ褒め」をくっつけることも忘れないようにします。注意ができないとマネジメントが難しくなるばかりですが、ちょい足しでフォローを入れるとやりやすくなります。

最後に、ラグビーの平尾誠二さんが遺した4つの心得を紹介しておきましょう。
  • プレーは叱っても人格は責めない
  • あとで必ずフォローする
  • 他人と比較しない
  • 長時間叱らない
さすがは日本代表監督も務めたラグビー界のカリスマ。深いです。

感想というアウトプットを吐き出させる

自分が何を言っても大丈夫だと思える環境。こうした「心理的安全」の境地に若者が達するためには、できるだけアウトプットをさせることが重要です。

しかし若者ははっきりとした自己表現を避ける傾向があります。第3章で解説したように、彼らは周囲の目や、職場での自分のキャラを強く意識していて、間違えたり炎上したりすることをひどく恐れているからです。

そんな若者の考えをアウトプットさせるために参考になるのが、最近流行りの「消える系」SNSではないでしょうか。「消える系」というのは、一定の時間で投稿が削除される、インスタグラムの「ストーリーズ」のような類です。

「消える系」が人気なのは、まさに残らないこと。インスタグラムで投稿して「いいね!」が少ないと、その無残な状態がずっと晒され続けるわけです。他人の目を気にする若者にとって、この状況は屈辱以外の何物でもありません。24時間で消えるストーリーズにポンポンとノリでアップできるのは、後に残らないから。炎上するリスクも少ないからです。

職場でも、このような消える系の環境を整えてあげることはできます。賛否を問うたり、自分の考えとしての発言を求めたりするのは、いったん封印します。そして判断や決済はリーダーである自分がくだすものだとはっきり示したうえで、「感想」を聞いてみましょう。どう感じたかには責任は生じません。議事録にも残りません。

このようにして、とにかく少しでも若者からのレスポンスを得るのです。感想であっても何かをアウトプットする。それを否定されずに聞いてもらえる。この経験の積み重ねは、確実に若者の「心理的安全」を高めます。消える系でいいので、とにかく最初の一歩を躊躇させないこと。SNS村社会的な若者の感覚をうまく利用して、少しずつ自主性を引き出していきましょう。
 
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平賀充記
ツナグ働き方研究所所長。株式会社ツナググループ・ホールディングスエグゼクティブ・フェロー。1963年長崎県生まれ。同志社大学卒業。1988年、株式会社リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。人事部門で新卒採用を担当後、リクルートの主要求人媒体の全国統括編集長を務め、2009年にダイバーシティ転職サイト「はたらいく」を立上げ。2012年、リクルート分社化で株式会社リクルートジョブズ、メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年に同社を退職、株式会社ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。

 

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