新聞が「斜陽産業」といわれるようになって久しい。デジタル化の波にのまれ、各紙の部数は軒並み減少している。もはや新聞の購読料や広告料で稼ぐビジネスモデルは崩壊しており、賃貸事業で持ちこたえる朝日新聞を「不動産会社」を揶揄する声も出ている。新聞業界は、もはや終わりなのだろうか。
新聞の売上高は右肩下がりの一途をたどる
日本新聞協会は、公式ホームページで新聞社の総売上高の推移を公表している。データによれば、2005年度は2兆4,188億円だったが、2019年度は1兆6,526億円までが減少している。実に30%強も収入が減っているのだ。
かつては「一家に一紙」が当たり前だったが、インターネットやスマートフォンの普及によって情報へのアクセス方法が変わり、新聞の購読率は低下する一方である。
国内最大級の親子のお出かけ情報サイト「いこーよ」が、2018年に12歳以下の子どもを持つ保護者を対象に実施した調査によれば、新聞を定期購読している保護者は37%にとどまり、「今まで新聞を定期購読したことがない」と回答した人が33%だった
<「いこーよ」の調査における新聞購読状況>
- 紙の新聞を定期購読している:37%
- 電子版の新聞を定期購読している:4%
- 新聞を定期購読したことはあるが現在はしていない:29%
- 今まで新聞を定期購読したことがない:33%
子どもがいる家庭では「子どもの教育のために新聞を定期購読する」こともあるようだが、数字を見るといかに新聞離れが進んでいるかがよくわかる。
このような状況を受けて、夕刊の発行をやめたり、新聞自体を廃刊したりする新聞社も出てきている。
「不動産会社」と揶揄される朝日新聞の現状
全国紙の朝日新聞も販売部数が減少している。かつては800万部という規模を誇っていたが、新聞の実売部数を調査する第三者機関「日本ABC協会」のまとめによれば、2020年末時点で販売部数は500万部を割っている。業績悪化によって、すでに希望退職募集の実施を迫られる状況になっているのだ。
この凋落を象徴するかのように、近年朝日新聞は「不動産会社」と揶揄されるようになっている。不動産事業の利益が経営を支える状況になっているためだ。
朝日新聞が公表した2020年3月期の有価証券報告書によれば、紙の新聞や電子版などを含むメディアコンテンツ事業は49億9,900万円の赤字を計上したが、不動産事業では74億700万円の利益を出している。
すでに朝日新聞では、新聞事業がお荷物になっているということだ。
全国紙の毎日新聞は「中小企業」になった!?
「朝毎読(ちょうまいよみ)」と呼ばれる日本の全国紙の一角を成す毎日新聞も、部数を減らし続けている。2021年1月には税優遇措置を受けることなどを目的に、資本金を41億5,000万円から1億円に減額することを発表した。
資本金が1億円を下回ると、税法上は「中小企業」として扱われる。全国紙の一つである毎日新聞が税制優遇にすがろうと中小企業になったことは、新聞業界の衰退を改めて鮮明にした出来事といえる。
朝日や毎日と対象的な日経新聞、電子版が好調
朝日新聞や毎日新聞と対象的なのが、日本経済新聞(日経新聞)だ。日経新聞は朝日新聞のような新聞以外の売上はほとんどないが、メディア・情報事業の売上高が近年上昇傾向にある。
日経新聞も部数を落としている。朝刊と電子版の部数・会員数は、2020年1月1日時点では約293万だったが、7月1日時点では約283万に減った。しかし、電子版の有料会員数は約69万人から約76万人に伸びているのだ。
日経新聞は早くから電子版に力を入れ、デザインや新機能などの工夫を重ねてきた。このような努力が実って電子版の有料会員が増えたのだ。電子版は印刷・配達コストなどがかからないため利益率が高いとみられ、日経の業績を支える存在になりつつある。
新聞業界はかつての隆盛を取り戻せるのか?
日経新聞のように電子版の展開などで成果を上げている新聞社もあるが、全体的に新聞業界は衰退しているといわざるを得ない。
一方で新聞社は「記者」という職人集団を抱えており、この強みを生かした新事業で収益を上げられる可能性はある。いずれにせよ、コンテンツそのものや発信・流通の仕組みを見直し、トライ&エラーを繰り返していくしかないであろう。
今後新聞社が社会的価値を取り戻すには、大胆な戦略の転換が必要になるはずだ。
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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