決算書分析の最大のポイントとは?

6月は株主総会シーズン。企業の「決算」に注目が集まる時期だ。だが、そもそも決算書のどこをどう見ればその企業の状況を正しく判断することができるのか、正しく理解している人はそれほど多くはないだろう。

経理の本としては異例のシリーズ60万部を発刊した『決算書がおもしろいほどわかる本』の著者として知られ、近著『ざっくりわかる「決算書」分析』にて決算書分析のイロハを解説した公認会計士の石島洋一氏に、決算書分析の「要点」についてうかがった。

「儲かっているのに潰れる」のはなぜ?

決算書の分析にはさまざまな視点がありますが、最も多くの人が気にしているのが「安全性」と「収益性」の2つだと思います。

「儲けたい」
「潰れたくない」

企業経営をする人にとって、この2つの思いは絶対に必要なものだからです。

同時に、株式投資をする人や企業の利害関係者にとっても不可欠な観点です。

「この企業は収益性が高いか、儲かっているか」
「この企業の安全性(流動性)はどうか、潰れることはないか」

これは、自社の安全性や自分の儲けにダイレクトにつながります。

だからこそ、決算書の分析をする時、この「収益性」と「安全性」に対する観点は非常に重要なのです。

とはいえ、収益性と安全性は無縁のものではありません。それどころか、非常に密接な関係を持っています。

収益性が高く、儲かっている会社は安全性が高いのが普通だからです。

それなら、収益性だけで経営力の判断ができそうですが、そうそう単純でもないのです。収益力があれば絶対に潰れない……。残念ながらそんなことはないのです。

収益力が高い=利益が多い会社であっても、倒産の危険性はあるのです

「お金をもらったら売上」ではない?

まず、売上について考えます。帳簿に売上があったことを示すのはいつでしょうか。

最もわかりやすいのは、売上代金を現金でもらった場合ですが、現代の会計では、現金の授受の時に売上を計上する方法(現金主義)を否定しています。

今日の経済は、信用経済を前提にしています。小売業などを除けば、商品は渡すけれども代金は後でまとめて、という方式が多いのです。

売上は、お客様に商品を引き渡した時に帳簿に計上するのが普通です。代金を受け取った時ではありません。ですから、売上を計上し、そのことによって利益が発生したとしても、現金があるという保証はないのです。

つまり、売上の計上時期と現金の入金時期がズレているのです。

「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、利益があることは、現金があり潰れない(安全性)こととは同じではないのです。

安全性と収益性はどちらが重要か?

先ほど、決算書の分析をする時の重要な観点は、収益性と安全性だと述べましたが、では、このどちらが優先されるのでしょうか。

「もちろん、両方です」と答えるのがいちばん無難かもしれません。

しかし、企業は赤字決算であっても、それだけの理由で潰れることはありません。資金を提供してくれる人がいれば、経営継続は可能です(実際には、赤字を出し続ければ、資金提供者もいなくなるでしょうが)。

逆に、利益が出ていても、一時的にでも資金が不足すれば、会社継続は困難になります。

つまり、資金の管理が非常に重要なのです。資金不足で支払不能を起こさないという意味での安全性が最低限の絶対的必要条件、十分な利益を確保していくことが、企業の目指すべき目標と言うことができるでしょう。

もっとも、ここでは例外的な状況を強調し過ぎた感があります。一般的には収益性の高い会社は安全性も高いものです。この点は誤解がないようにしてください。

(『ざっくりわかる「決算書」分析』より抜粋・編集)

ざっくりわかる「決算書」分析
石島洋一(公認会計士) 発売日: 2019年06月18日 
難解な決算書から、その企業の強みや弱点、そして将来性を知るための「たったこれだけのポイント」とは? 経営分析入門の決定版。(『THE21オンライン』2019年6月号より)

提供元・THE21オンライン

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