「おしゃれは足元から」とよくいわれる。富裕層はもちろん、スーツなどの服装だけでなく、足元にも抜かりはない。紳士靴と言えば、イタリアとイギリスの靴が有名だが、富裕層の間では、英国靴を愛用している人が多いようだ。今回は、そんな英国靴の魅力に迫りたい。

なぜ靴は「身だしなみにとって重要なポイント」なのか?

そもそも、なぜ「オシャレは足元から」と言われるのだろうか。

一説によると、江戸時代、普段は草履を履くことが多かったが、遠方への旅に出るとなると、草履より丈夫な草鞋(わらじ)を履いて出かけた。そのように、TPOに応じて靴を履き替えることができるのが、しゃれた人間だということから、この言葉が生まれたという。

また、「足元を見る」という慣用句は、江戸時代の駕籠かきが、客の履物の傷み具合を見て、疲れていそうな客に法外な値を要求したことからきているといわれる。このように、足元は相手の置かれた状況や素性を探る手掛かりとなってきたのだ。

イギリスとイタリアの靴の違いとは?

紳士靴の2大生産国として知られるのはイタリアとイギリスだろう。たとえばイタリアであればフェラガモなど、有名ブランドの靴も多い。しかし、富裕層に人気なのはイギリスの靴だといえる。

イギリスの靴とイタリアの靴では、どこが違うのか。まずは両者の特徴を紹介しよう。

最も大きな違いは製法にある。イタリア靴はマッケイと呼ばれる製法なのに対し、英国靴はグットイヤーウェルトと呼ばれる製法で作られることが多い。マッケイ製法は、もともとイタリアのマルケ地域での伝統技法であり、靴のソールと中底、そして甲の部分のレザーを一気に縫う。軽くて、繊細な印象になるのが特徴だ。

一方、グッドイヤーウェルトでは、ソールの外側に、コパと呼ばれる細い革を縫い付け、コパと中底と甲の部分を縫う。重厚で丈夫であることが特徴で、イギリスのほか、アメリカでもこの製法が使われることが多い。

マッケイとグッドイヤーウェルトの最も大きな違いは「ソール(靴底)の張替え」だ。一般的に、靴はソールから消耗するため、ソールの交換ができるようになっている。グッドイヤーウェルトはソールの交換を前提に作られているため、マッケイに比べて馴染んだ靴を長く履き続けることができる。

モノを良く知り、本当にいいものを長く使う。富裕層ならではの靴の選び方だといえるだろう。

イギリスの2大ブランド「エドワードグリーン」と「ジョンロブ」

そんな英国靴の中でも、もっとも高級で、富裕層に愛されているのが「エドワードグリーン」と「ジョンロブ」だ。

エドワードグリーンは1890年に創業した靴工房であり、「でき得る限りの上質を求める」をモットーにモノづくりを行っている。特に、「ドーバー」シリーズは、上質なレザーと高度な職人技が必要な「スキンステッチ」という縫製方法が使われており、日本でもファンが多いシリーズになっている。

一方、ジョンロブは、1866年創業で創業当初から富裕層向けオーダーメード靴工房として名を馳せていた。その後、パリ支店がエルメスの傘下に入り、高級靴メーカーとしての地位を不動のものとした。

ジョンロブでは、「ウィリアム2」呼ばれるシリーズが人気となっている。これは、ウィンザー公が愛用し、ダブルモンクストラップの「ウィリアム」がベースとなっている。

最高級の素材と高度な技術、客への心配り

エドワードグリーンやジョンロブの公式ホームページを見てもらえば分かるが、扱っている靴は1足数十万円もする。それは、最高級の革を使い、熟練した靴職人が最高の技術で靴を製作しているから、だけではない。古くなっても修理を重ねることにより、愛着のある靴を長く履き続けることができるのだ。

手を加えながら、馴染んだ靴でビジネスにのぞみ続けることと、仕事を成功に導くことの因果関係を定量的に示した研究などはない。しかし多くの富裕層がイギリスのビジネスシューズを愛用していることは、何かしらの示唆を与えるものだろう。

最高級の材料と高度な技術、そして、顧客の使い勝手への心配り。富裕層に愛されるものには、相応の理由があるのだ。ビジネスでのランクアップを目指している人が、富裕層の愛する英国靴を身に着けてみるのもいいかもしれない。

文・MONEY TIMES編集部

 

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