取引先との距離を縮める「うまい質問」の仕方とは

2019.2.7
BUSINESS
(写真=Gutesa/Shutterstock.com)
(写真=Gutesa/Shutterstock.com)
(本記事は、野木 志郎氏の著書『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由』=あさ出版、2019年1月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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〝キラー質問”で人のこだわりをズバリ聞く

一気に打ち解け、絆を築く質問

元サッカー日本代表で解説者の水沼貴史さんとはじめてお会いしたのは、先述の日本橋三越本店ホールにおける甲冑パンツ(詳しくは204ページ参照)のイベントでした。水沼さんには、包帯パンツの試作第一号から送らせてもらっていたので、ぜひお願いしたいということで、そのイベントでトークショーに出ていただいたのです。

私はイベント後、お礼の飲み会として、水沼さんと飯を食いたいという関係者やうちの会社のスタッフを連れて、目黒の沖縄料理店「ゆがふ」に一席設けました。全部で十数人です。最初は皆でわーっとしゃべっていましたが、時間が経つにつれていくつかのグループに分かれて個々に盛り上がるようになるのが、大人数飲み会の常。その時に私と水沼さんの2人だけがふっと、他のグループから孤立しました。すると、水沼さんが私に言ったのです。

「野木さんって、何が一番大切なの?」

唐突な質問に少し面食らいましたが、私はすかさず答えました。「家族かな。お金がある・なし関係なく、家族とおったら結構いいもんやし。だから、家族のために何をするかとか、家族との時間を作るためにどうするかを、まず第一に考えるよ」

すると水沼さん、握手を求めてきて言いました。「俺もだよ」

そんな水沼さんと私は、そのやり取りで一気に打ち解けました。同い年だということもその場でわかったので、そんならお互い呼び捨てでいこうやとなり、貴史、志郎と呼び合う仲になったのです。

人と人の距離が一気に縮まるのに時間が関係しない時がありますが、これはまさにそう。サッカーで言うところのキラーパスならぬ〝キラー質問〟で、強い絆が突然育まれたわけです。

「水沼さんって、本当に俺のことを大親友だと思ってくれてんねんな……」と感じたのは、水沼さんが何年か前に手術をした時です。結果的に手術は成功しましたが、10%くらいの確率で失敗するかもしれませんでした。

もし失敗したら、働けなくなるかもしれない。私にそう説明した水沼さんは、「もしそうなったら、俺の家族をサポートしてくれないか」と言ってくれました。

私は二つ返事でOKしました。そんなことは絶対にあってほしくないけど、万が一……、万が一そんなことになったら、私はできるだけのことをして、奥さんとお子さんたちが困らないようにしてあげたいと。

そうして手術は成功しました。後で聞いたら、私は水沼さんの家族や親族以外では、面会第一号だったそうです。

相手のこだわりを見極めた質問を

〝キラー質問〞は、まさしくキラーパスのごとく、さまざまな局面を打開し、物事を良い方向に展開させます。

私が学生時代から大好きなアーティストに上田正樹さんがいます。ライブにも何度も足を運び、アマチュアバンドをやっていた時は曲のコピーまでしたものです。

そんな上田さんを知人からご紹介いただき、何度か食事に行った時、ある質問をしたのがきっかけで、「野木ちゃん!」と呼んでもらえる関係になりました。

それは、「ブルースってアフリカの魂の叫びなんですか?」という質問。

私がこの質問をしたのは、上田さんがアフリカまで行ってレコーディングをしたアルバムを聴いて率直にそう感じたからでした。その時、私は見逃しませんでした。上田さんのサングラスの中の目がキラリと光るのを―(ほんまか?)。

そしてその日、上田さんが「野木ちゃん、包帯パンツの曲作ったるよ」と言ってくださったのです。もうビックリ!

数ヶ月後、本当にレコーディングされた包帯パンツの曲をプレゼントしていただけました。マジで感謝感激です!

水沼さんのように初対面でいきなりの〝キラー質問〞は難易度が高いものですが、何度か会ったり、話を聞いたりして、相手のことが大体なんとなくわかってくると、その人が一番こだわってるものが見えてくる瞬間があります。

〝キラー質問〞のぶつけどころは、そこ。相手は生き生きとそれについて答えてくれますし、信頼関係も深まるでしょう。

もちろん、そのためには相手について心から興味がある、というのが前提です。打算に基づくような質問は、すぐに見透かされますからね。

質問攻めが相手との距離を縮め、アイデアを生み出す

質問上手なおじさんキラー

包帯パンツの販売にあたっては、何人かのとても有能なバイヤーさんのお世話になりました。当時日本橋三越のバイヤーだった岡田弘さんもそのひとりです。岡田さんは、私の包帯パンツに賭ける想いや仕事の姿勢に惚れ込み、「なんとかしてこれを世にもっとひろめたい」と思ってくれていました。

岡田さんは、バイヤーには珍しく売り場に自ら立つ人でした。人と会話をするのがとにかく好き。売り場に来る人を次々に口説き、包帯パンツを売ってくれるのです。お客さんに直接話しかけ、まるで包帯パンツの語り部のように、この商品がどれだけ素晴らしいかを説明してくれました。

普通、百貨店の売り場で特定商品を勧めるのは、その商品を作っているメーカーの販売員の仕事、つまり私の役割です。にもかかわらず、岡田さんは包帯パンツを激推し。おかげで、ものすごい数が三越で売れました。

岡田さんに会いに行くと、彼はいつも私を周りの人に紹介してくれます。「包帯パンツってあるでしょ? あれ作ったのがこの人なんですよ」と。私はいつも得意満面でいられました。

そんな岡田さんに学ぶところは、相手を質問攻めすることだと思います。

包帯パンツに関しても「これはどういう仕組みでこうなるんですか?」「なぜこれを開発しようと思ったんですか?」。最近では「なぜ本を出版されるんですか?」(笑)。もちろん、私にだけではありません。岡田さんはいつでも、誰に対してもインタビュアーなのです。

岡田さんは説明の仕方も、聞き方も、両方うまい。いわゆる「おじさんに気に入られるタイプ」です。おじさんという人種は、懇切丁寧にわかりやすく説明してくれる人や、自分という人間に興味を持ってくれる人を好みますから。

今や岡田さんは外商―VIP相手に直接出向いて個別に注文を取ったり、商品を販売したりする部門―のトップ。三越のVIPには富裕層のおじさんが多いので、当然と言えば当然かもしれません。

外商の売上は百貨店の売上のかなり多くを占めていると言われています。なかには個人で1度の買い物に1億円使う富裕層や、家を買う(百貨店で、ですよ!)方もいらっしゃるそうです。

いやはや、岡田さん、やっぱりすごい。

新製品はびちゃびちゃのコースターから

今から7~8年前のある夏の暑い日のこと。岡田さんから「野木さん、ちょっといい?」と、アイスコーヒーを飲みに誘われました。カフェ・ベローチェのテーブル席に着くと、岡田さんは「野木さんにお願いがある」と改まって話しはじめたのです。

岡田さん「今まで、どこのメーカーに頼んでも断られた商品があるんです」
野木「なんですか、それ」
岡田さん「ゴムのないパンツですよ」

私はその場ですぐ、「無理やわ」と思いました。ウエストゴムのないパンツなんて、穿いているうちに必ずズレてしまいます。

ところが岡田さん、「でも、どこもできないって言われたら、やれるのは野木さんだけでしょう?」と言い放ちました。

私はがぜんプライドをくすぐられ、燃えました。そこにあったコースターに手を伸ばし、絵を描きはじめました。コースターはびちゃびちゃに濡れていましたが、そんなのお構いなし。えっと、ここをなくして、ここの角度はあれやな。脚の部分をこう切り取って……そうか、もしかしたらいけるかもしれん!

すぐ会社に戻り、普通のゴムあり包帯パンツにハサミを入れました。ゴムをなくして穿いてみて、そのままだとズレるから端っこを束ねてホチキスでとめて、布をたぐって、こっちもホチキスでとめて……ある程度見えたところでそれを脱ぎ、そのま
ま工場に送って試作品を作ってもらうことにしました。

そこからは何度も何度も試行錯誤。結果、2011年9月にようやく発売にこぎつけたのが、「ゴムなし包帯パンツ」です。ゴムがないために締め付けが一切ない、独特の穿き心地。他のパンツでは味わえないこの感覚を求めて、根強いファンがついている商品で、今では大手メーカーがこれを真似た商品を作って大ヒットしているということです。

このゴムなし包帯パンツは、岡田さんの一言がなかったら生まれることはありませんでした。ただ岡田さんがすごいのは「私の提案で生まれた」ということを、ただの一言もおっしゃらないということです。

ゴムなしパンツが売れていることを報告しても、「よかったですね。夏場のベローチェ、思い出します。あの時のコースター残しておけばよかったですね(笑)」なんて言って、微笑むのみ。

今思えば、岡田さんは質問攻めにすることによって、相手との距離を近づけるばかりか、世の中のニーズや発想に対するアンテナもびんびん立てていたのでしょう。だからこそ、ゴムなしパンツというアイデアが出てきたし、絶対にいけるという確信があった。26ページの「知っていても知らないフリがちょうどいい」の項でも述べましたが、いい質問、的を射た質問をするためには、質問者の知識量が必要不可欠。その知識量はストックとなり、新たな発想や企画の源泉にもなるということを、岡田さんは示してくれました。その結晶が、ゴムなし包帯パンツなのです。
 
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野木志郎
1960 年、大阪府高槻市生まれ。立命館大学法学部法学科卒業。1987年株式会社千趣会入社。紅茶、出版物、音楽CD、磁器、プラスチック製品等々の仕入れや、モデル「SHIHO」単独のファッションカタログをプロデュースするなど、新商品、新規事業を中心に担当する。2002 年に千趣会を辞め、父親の会社「ユニオン野木」に入社。その後「包帯パンツ」を開発し、2006年にログイン株式会社を設立して独立する。人と同じことをするのが大の苦手で、2008 年にプリントのかわいいパンツが流行する中、戦国武将をイメージしてデザインした包帯パンツ「甲冑パンツ」を原宿の東郷神社にて発表。このことがきっかけで全国の新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどあらゆるメディアに合計500 回を超える取材を受けるほど注目を集める。包帯パンツは2019年1月現在、世界で130 万枚を売上げ、世界的なシェフ・松久信幸(NOBU)氏やロバート・デ・ニーロ氏など、国内外の著名人にも多くのファンを持つ。
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