『THE21オンライン』より

成長要因は「正社員ゼロ」。新しい働き方を実践するベンチャーに聞く

2020.9.15
ビジネス・キャリア
(画像=THE21オンラインより引用)
(画像=THE21オンラインより引用)

〔株〕MEJ代表取締役社長CEO・古賀徹氏

2008年に創業して成長を続け、昨年、東証1部に上場している〔株〕ユーグレナのグループ会社となった〔株〕MEJ。同社で働く17人のうち、正社員はなんとゼロだという。役員以外はほとんど、業務委託を受けたフリーランスの「プロ」なのだ。創業者でCEOの古賀徹氏は、10年後にはこれが普通になると話す。

業務委託したプロに権限を委譲。会議はナシ

――まず、御社の事業内容を教えてください。

【古賀】「C COFFEE」というダイエットコーヒーを、D2Cで販売しています。D2Cというのは、メーカーが顧客にオンラインで直接販売することです。

――ヘルスケア商品のD2Cを行なっている企業は他にもありますが、御社の特徴は?

【古賀】他社には通販から派生してD2Cも始めた企業が多く、商品も高めの年齢層をターゲットにしているものが多いのですが、当社は初めから、20~30代向けの商品を、InstagramやFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアを使って販売しています。簡単に言えば「バエる」ことが大切なので、プロダクトデザイナーを入れて、お洒落でハイセンスな商品を開発しています。

――正社員を雇わず、フリーランスのプロに業務委託をしているということですが、どんな業務を委託しているのでしょうか?

【古賀】商品開発も、広告のプランニングも、CRM(顧客管理)も……、バックオフィス以外のあらゆる業務ですね。

――勤務形態は?

【古賀】基本的にリモートで、出社するかどうかは本人に任せています。職種によっては、広告代理店への訪問などをする必要がある人もいます。ほとんどは他社の仕事も請け負っていて、当社での勤務時間は、「月に50時間」「月に100時間」など、それぞれの人と契約を結んで決めています。どの時間帯に働くかは自由です。

――働く時間帯が自由だと、会議を開くときなどに困りませんか?

【古賀】当社には会議がないんです。会議の主な役割は意思決定ですが、その権限は、それぞれの業務を担当しているプロに渡していますから。会議を開いたところで、プロであるその人よりも良い意思決定をできる人は、他にいません。意思決定に必要な会社の情報も、預金口座の残高までオープンにしているので、情報共有や相談のための会議も不要です。会議には、部下のマネジメントや新人の教育の場という側面もあると思いますが、これらもプロに対しては必要ありません。

――ずいぶん思い切った権限移譲ですね。

【古賀】フェイスブック社の事例を知って、当社にも取り入れました。ベンチャーが急成長するためには、意思決定の速さが極めて重要です。

――組織の形はどうなっているのでしょう?

【古賀】ピラミッド型の組織ではなくて、プロジェクトに対して人をアサインし、各プロジェクトを当社のCMOやCCO(チーフ・カスタマー・オフィサー)などが管理しています。

モチベーション管理は必要なくなる

――それだけの権限移譲をするということは、業務委託をする相手を、しっかりと見極めて契約を結ばなければなりませんね。

【古賀】そのために、要件定義を明確にして、人材を探しています。例えば、「広告代理店で広告運用を億単位で実施した経験がある人」というような要件です。いわゆる「ジョブ型」の採用で、日本企業で一般的な「メンバーシップ型」の中途採用などとは、まったく違います。

――ハイレベルな要件だと、なかなか人材が集まらないのでは……。

【古賀】このレベルの人を正社員で雇おうとすれば、まず転職市場には出てこないのでヘッドハンティングでなければならないし、探すのに半年はかかるでしょう。けれども、フリーランスのプロなら、来月からでも働いてくれる人が見つかります。

――そうなんですか!?

【古賀】米国ではフリーランスの割合が既に35%に達していますが、日本でもフリーランスとして働く人が増えているんです。コロナ禍が、その流れに拍車をかけたように思います。一方で、特に大企業ではフリーランスへの業務委託がまだ進んでいませんから、当社のようなベンチャーが優秀なフリーランスに、すぐに業務委託できる状況です。特に当社は、社員が皆、フリーランスのプロなので、「そんな会社で働いてみたい」と思っていただけています。

――雇用しているわけではないので「給与」ではありませんが、業務委託の報酬は、どのように決めているのでしょうか?

【古賀】業界の給与水準を基準にしながら、稼働日数や出社の必要性の有無なども考慮して、年俸制で決めています。また、正社員と違って、福利厚生などの固定費がかからないので、その分を上乗せしています。

――成果報酬やボーナスは?

【古賀】検討はしていますが、現状では、ありません。評価の方法が難しいということもありますが、基本的には、プロ野球選手と同じ考え方で、期待値に対して年俸を決めて契約しています。

――業務委託だと、モチベーションが上がらないのでは?

【古賀】ベンチャーだと、入社するのは、スキルや経験が未熟な若い人たちが多いですよね。そのためパフォーマンスが低いので、もっと頑張ってもらうために、モチベーション管理が必要になるんです。会社のカルチャーを作ったり、それを浸透させるためにイベントを開催したり。大企業でも、メンバーシップ型だと、そういう面があると思います。実は、私も以前は「モチベーション依存症」でした。けれども、パフォーマンスが高いプロの集団になると、モチベーション管理は必要ありません。

優秀な人材の知見を広く社会でシェアすべき

――そもそも、正社員を雇わず、プロに業務委託しようと考えたのは、なぜですか?

【古賀】以前は新卒採用をしていたのですが、内定を出してから、入社し、教育をして、実際に働けるようになるまで、3年ほどかかっていました。3年も経つと、ソーシャルメディアの世界はまったく変わってしまいます。ソーシャルメディアを使ったD2Cを行なっている当社としては、3年も待っていられないのです。

私はシリコンバレーでインターンしたことがあるのですが、現地では新卒や中途も関係なく、結果がすべてというのが当たり前でした。米国ではフリーランスのプロ契約というのは一般的で、そのときの経験から、フリーランスのプロに業務委託をしたほうが、生産性が高いことを知っていました。そこで、〔株〕サーキュレーションの「プロシェアリング」というサービスを利用して、プロの人材を探すことにしたのです。それ以降、業績がさらに伸びました。

――しかし、正社員を育成すれば、その知見が社内に蓄積されていきますが、プロジェクトが終わったら契約が切れる形だと、せっかく優秀な人に働いてもらっても、知見が社内に残らないのでは?

【古賀】確かに、多くの場合、1~2年で人が入れ替わるのですが、それでも困らないように、オンライン上にデータをすべて蓄積しています。けれども、あとからそのデータを見ることは、あまりないですね。過去ではなく、今、最も良い方法で仕事をしてくれますから。

また、複数の企業の仕事を同時にしている人は、教育をしなくても、成長のスピードが非常に速いと感じます。

――もとは正社員がいたということですが、プロへの業務委託を始める際に、気をつけたことはありますか?

【古賀】既存の正社員とのハレーションが起こらないよう、業務委託の相手を決める面接の場に、正社員も同席してもらうようにしました。実際にプロに会えば「ぜひ仕事をお願いしたい」と思いますし、そう思って契約を結んだ相手となら、仕事がうまく進みます。いきなり幹部社員が外部から人を連れてくるようなことをすると、現場は反発するでしょう。ベンチャーが成長するためにはオープンイノベーションが必要だということは、皆、わかっていましたから、業務委託自体への反対はありませんでした。

――フリーランスのプロという働き方は、今後も広がっていくと思いますか?

【古賀】当社はコアバリューとして「Hard think」を掲げているのですが、これは、「Hard work」の反対です。Hard workとは、労働集約型の働き方。その時代は、もう終わりました。これからは、知識集約型の働き方になります。

ですから、日本全体のことを考えると、優秀な人が1社に留まり続けるのはもったいない。その知見を様々な企業がシェアして、日本全体の底上げをするべきだと思います。当社が業務委託をしているプロにも、「どんなに優秀でも、当社だけで囲い込むつもりはない」という話をしています。

今は「なぜ業務委託を活用しているのですか?」とよく聞かれますが、10年後には、「なぜ正社員を雇っているんですか?」と聞かれる世の中になっていると思います。

文・古賀徹(MEJ CEO)/提供元・THE21オンライン


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