営業はもちろん、日常会話にも活かせる会話テクニック

自分の想いや考えを聴き手に伝えられた会心のプレゼンや営業だったにも関わらず、商談や受注につながらなかった経験は誰にでもあると思います。10年以上、法人営業に携わってきた私も、何度もその思いを味わいました。

しかし、あることを意識し始めたことで、状況は大きく変わりました。それは、相手との「階層」。より具体的に言えば「前提知識の差」です。顧客と自分との間にいくつの階層があり、それをどうやって合わせていくか。それを意識するだけで、営業の成功率が大きく高まったのです。営業はもちろん、日常会話にも応用できるその方法をお伝えしたいと思います。

相手が自分と同じように説明できて初めて「伝わった」ことになる

自分の想いや考えが「伝わった」プレゼンや営業ができても、商談や受注につながらないのはなぜでしょうか。直属の上司にすら「で、結局何を言いたいの、伝わらない」と言われた経験は、一度や二度ではないはずです。

それは単純な話です。あなたが「伝わった」と思っているだけで、あなたの話が聴き手には伝わっていないのです。あなたは「伝わった」ではなく、「伝わったつもり」の話をしているのです。

商談や受注に成功するには、あなたの話を聴き手にとって「伝わった」ものにしなければなりません。では聴き手にとっての「伝わった」の基準とは何でしょうか。それは聴き手の「理解度」です。理解度といってもいろいろありますが、具体的には「聴き手が別の人に同様の話ができる」ような理解をしているかです。

特に私のような法人営業の場合、私の話から得た情報をもとに、聴き手が決裁者を説得して稟議や決済を回してもらう必要があるからです。当然、相手の「理解度」が高くないと商談や受注になりません。理解していない聴き手が誰かを説得して予算を引き出せるほど、世の中は甘くありません。

営業の世界では、聴き手が理解していることはもちろん、それを別の人に同じように話せるくらいにならなければ、「伝わった」ことにはならないのです。

「階層」を合わせることが「伝わった」につながる

では、どうすれば聴き手が自分の言葉で説明できるほど「伝わった」話ができるのでしょうか。その方法は聴き手が今どの「階層」にいるのかを知ることです。

この「階層」とは「前提知識」のことです。言い換えると、その個人があるトピックスに対して持っている知識の多さと興味の深さのことです。この「階層」が自分と聴き手で離れているほど、話が伝わりません。だから、あなたから聴き手の「階層」に近づいて伝えることが必要です。

「伝わったつもり」を解消する方法は、相手の「前提知識」を基にどこから話すか、どこを省くかを決めてから話すことに尽きます。

そもそも営業の場では「階層」が広がりがち

「伝わったつもり」を解消するためには、自分の「前提知識」を基にした納得感で情報を伝えることをやめればよいのですが、なかなかできません。では、なぜそれは難しいのでしょうか。営業で自社商品を取引先に紹介するような場合、次の流れで「伝わったつもり」が発生します。

1 自社商品なので、基本的に自分が上の「階層」にいる。

2 話を聴く取引先である聴き手の「階層」が、事前にどこか分からないことが多い。

3 自分は何度も同じ説明をしているので、聴き手の「階層」も自分と同じ、もしくは近いと錯覚する。

4 いつの間にか、工夫などせず一番自分にとってスムーズで楽な自分の「階層」で話を始めてしまう。

このように、最初から階層が違う上に、それに気づかず聴き手との階層がさらに広がっていってしまうというケースが非常に多いのです。営業のように自分の方が情報を多く持っているときに限らず、自分にとって興味がある、慣れ親しんでいる、身近である、自信があることを話すときは特に注意が必要です。

4つの「階層」――タリーズの魅力をどう伝える?

「階層」とはいくつあるのでしょうか。以下の4つに分かれます。

1階 説明するものすら知らない

2階 説明するものを知っているが、自分事でない

3階 説明するものと同等なもので補完している

4階 説明するもの自体がすでに自分事である

例えば、あなたがタリーズコーヒーの従業員で、聴き手にタリーズコーヒーの魅力を伝えて来店してもらいたいとします。この場合、タリーズどころかカフェという場所すら知らない人は1階、カフェやタリーズ自体知っているが行かない人は2階、スターバックスやファミレスを使っている人は3階、そしてタリーズをよく利用する人は4階となります。

まず自分の「階層」はいくつでしょうか。ビジネスで何かを説明する場合、基本的に自分は4階です。一方の聴き手は何階でしょうか。残念ながら自分と同じ4階の人は少数派です。だからこそ聴き手の「階層」を把握することが大事になります。

では、聴き手がどの「階層」にいるのかを把握するにはどうすればよいでしょうか。その方法は3つです。

1 事前に本人に聞いておく。

2 HPやSNSや近親者、同僚などからどの階にいるか判断できる情報を集めておく。

3 実際に話をする前にどの階にいるか質問をする。

1と2ができればよいですが、毎回できるとは限らないので、私は営業の最初に3を実施します。例えば「カフェによく行くか」「タリーズとスタバのどちらが好きか」というような簡単な質問で実は十分なのです。

「階層」を生かして、聴き手に「伝わった」話をするには

聴き手の「階層」が分かったら、どう話をしていけばよいでしょうか。

【1階】 説明するものすら知らない=「商品どころかそのカテゴリを知らない人」

タリーズコーヒー自体の説明をしても興味どころか理解すらしてもらえません。カフェという辞書的な意味や、どういう場所なのかの説明から始めなければなりません。

【2階】 説明するものを知っているが、自分事でない=「商品周辺のカテゴリは知っているが、商品自体に興味がない人」

実は「伝わったつもり」は2階で最も多く発生します。なぜなら一見「前提知識」はありそうに見えるからです。この「階層」の聴き手と話をするうえで大事なことは、「なぜカフェ(≒タリーズ)に行かないのか」に理解を示して、それを前提に話を進めることです。無関心を興味に変えるようなメリットが伝わるようにしていきます。最初からタリーズ独自のメリットばかり話すと、「伝わったつもり」どころか、ただの自己アピールにしか聞こえなくなり、拒絶すらされます。あくまでカフェの魅力を説明する具体例として、タリーズの話をする程度で抑えるべきです。

【3階】 説明するものと同等なもので補完している=「自社商品と同列の競合他社商品を知っている人」

スターバックスによく来店する人だったら、スタバとの比較でタリーズの話をしましょう。2階までとは違い、カフェ自体の説明は省略しましょう。カフェのよさはすでに知っているので、丁寧な説明は逆効果です。既知の情報ばかりだと、早い段階で興味を削いでしまうからです。スターバックスという競争相手と比べた時のメリットを伝えればよいのです。パスタが食べられるとか、スタバに比べると混まない、などです。

【4階】 説明するものがすでに自分事である=「自社商品を使っている人」

ようやく自分と階層が一緒の人です。すでにあなたの商品に関心がある状態ですが、こちらの情報も多く持っています。一般論ではなく、例えばタリーズで働いている人しか知らないような秘密の情報を話に盛り込むとより興味をもってもらえるようになり、商品の魅力が伝わります。

「伝わったつもり」の原因は、聴き手の「階層」を意識しないで、話を始めてしまうことです。少なくとも話を始める前に、その話題に対して聴き手がどのくらいの知識や興味関心、もしくは抵抗感があるのかを知っておけば、どこから話を始めて、どこを省略もしくは丁寧に話をすべきかが分かります。

聴き手からすると、情報が少なすぎると自分とその話題を結びつけられず理解も興味も示せません。逆に情報が多すぎると、既知の話と余計な情報が興味を削いでしまいます。どちらにしても「階層」がずれた話をされることは、誰もがストレスなのです。このストレスが理解を妨げた結果、商談や受注に繋がらなくなります。

自分の納得感ではなく、「相手が別の人に同様の話ができる」くらい理解できるかを基準にして、明日からまず聴き手のいる「階層」に降りて、「伝わった」話を始めましょう。

斎藤 拓斗(さいとう たくと)
「合理化」と「効率化」で成果の出せる営業組織をつくる「法人営業」専門のトレーナー。
北海道生まれ、日系メーカーで10年以上法人営業に従事。入社1年目の左遷経験で、「自分のような入社1年目の失敗をしてほしくない」という想いから、個人の「勘や経験」で成果が左右されず、未経験の新人でも結果を残せる法人営業の理論体系を確立。担当チームの新人社員を、毎年同期トップ3以内に輩出。自身が担当する日本最大手メーカーは、担当から3年で10倍以上の営業利益に達して、その後も維持。自作のスケジュール帳を活用した業務効率化にも定評があり、プレイヤーでありながら、自支店以外の営業施策立案と運営、人材育成も兼務。理論に基づいた「合理的な営業」と、高額なシステムを使わない「個人でできる業務効率化」の両輪で、「営業職の存在価値を再定義し、情熱のある若手のキャリアを輝かせる」をミッションとしている。(『THE21オンライン』2020年04月07日 公開)

提供元・THE21オンライン

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