『THE21オンライン』より

テレ東から名物バラエティー番組を世に出し続けるプロデューサーの仕事術

2020.5.22
BUSINESS
(画像=THE21オンラインより引用)
(画像=THE21オンラインより引用)

自分の興味や違和感から生まれる企画こそがヒットする

「マジ歌選手権」や「キス我慢選手権」などの名企画を生み出した『ゴッドタン』をはじめ、『ウレロ☆シリーズ』や『あちこちオードリー』など、テレビ東京(テレ東)の人気バラエティー番組を連発してきた名プロデューサーが、佐久間宣行氏だ。お笑い芸人やタレントの意外な魅力を引き出し、ブレイクさせることでも知られている。そのプロデュース力の秘密とは?

マーケティングよりも自分の内面にヒントがある

「お笑いバラエティー番組を作りたい」。1999年にテレビ東京に入社後、そんな希望を抱いた佐久間氏だったが、最初からうまくいったわけではないという。

「今でこそテレ東でも多くのバラエティー番組を放送していますが、僕が入社した当時は制作会社が作ったものを少し放送していただけで、局内にお笑い番組のノウハウを持っている人がいませんでした。自分で考えるしかなかったのですが、企画書を書いても面白くない。しばらくは1本も企画が通りませんでした」

そこから、どうやってヒット番組を連発するプロデューサーになれたのだろうか。

「簡単に言えば、自分が本当に観たい番組を作っているだけなんです。一つ意識しているのは、マーケティングによって売れ筋を追うのではなく、自分の内面に注目することです。自分の興味や違和感から企画を考えています。そうするようになってから、視聴者の方に楽しんでもらえる企画が生み出せるようになりました」

『ナミダメ』で気づいた企画で一番大切なこと

企画を考えるときに自分の内面に注目するようになったきっかけは、2001年、入社3年目に『ナミダメ』という番組を企画したことだ。

「この前年はシドニー五輪があって、とにかく世の中は感動尽くしでした。スポーツ選手は『感動を与えたい』と言い、応援している人々も口を揃えて『感動をありがとう』と言う。テレビではどのチャンネルでも感動系の番組がたくさん流れていました」

佐久間氏はそんな風潮に違和感を覚えていたという。

「皆が盛り上がっているのが、僕は『なんだか気持ち悪い』と思ってしまったのです。それをヒントに企画したのが『ナミダメ』でした。出演者の方に泣けるアイテムを使って泣いてもらい、たくさん泣いた人が賞金100万円を手にするという番組です。『泣くことなんて誰でも簡単にできますよ』と言いたかったんです」

世間一般の感覚と反するような企画を立てたわけだ。ところが、予想もしなかったことに、この『ナミダメ』が制作会社の団体の新人賞を受賞した。

「狙ったわけではないんですけどね。このときに気づいたのが、マジョリティに対する違和感をヒントにすると面白い企画が生まれる、ということ。多数派に対するカウンターとなって受け入れられるのでしょう。思えば僕自身、学生時代から、一部の人しか好まないような作品が好きで、それらが辛い時期の心の支えになっていました。僕みたいな感覚の人は、今も一定数いるのかもしれないと思ったのです」

「自分だけ笑っていない」はラッキーなこと

それ以来、佐久間氏は、世の中の流行りを追わずに、自分の興味や違和感をヒントに企画を立てるようになった。そこからヒットが出るようになったそうだ。

「例えば、『誰も言わないのだけど、誰かに言ってほしいんじゃないかな』と思うことを企画すると、人気が出ることが多いですね。『ゴッドタン』の『腐り芸人セラピー』もそうです。芸人に対して皆がうすうす思っていることを言うことで、面白いと思っていただけているようです」

だから、企画会議のときに、自分一人だけが周囲と違う反応をしたときは、「ラッキー」と感じるという。

「皆がゲラゲラ笑っているのに、自分だけ面白さがわからない。こういうとき、『自分の感覚はちょっと変なんじゃないか』と感じ、場の空気を壊さないようムリして笑う人が多いと思いますが、心配する必要はまったくありません。そこを掘っていけば企画のヒントが見つかるわけですからね。むしろラッキーなことです」

「開けていない箱」に隠れている面白さ

佐久間氏が企画を生み出すヒントにしているのは、自分の内面だけではない。芸人の内面にも注目している。

「芸人の中には、まだ『人前で開けていない箱』を持っている人がたくさんいます。『ひねくれた物の見方をする』『意外と真面目』といった性格や、『意外と歌が上手』といった特技などです」

箱を開けていない理由は色々ある。他のディレクターや放送作家がスルーしていることもあれば、本人が「需要がない」と思い込んでいることもある。

「要するに、マーケティングの観点から、『開けても意味がない』と判断されているわけです。しかし、その開けていない箱の中身のほうが、本人がムリせずに出すことができるうえ、面白いことが少なくありません。そこで、その部分を前面に押し出した企画を立てているのです」

『ゴッドタン』の人気企画はこうして生まれた!

前出の「腐り芸人セラピー」は、その一例でもある。ほのぼのしたバラエティー番組にうまく対応できない、ひねくれた「腐り芸人」として、ハライチの岩井勇気さんやインパルスの板倉俊之さんにスポットを当て、新しい魅力を引き出した。

「もともと素の岩井君は『腐り芸人』的な物の見方をしていて、僕は面白がっていたのですけど、本人はそれをテレビの前で出してもウケないと思っていたらしいんです。僕は単に『その部分を出して大丈夫だよ』と言っただけですが、それが面白い企画になりました」

他にも、『ゴッドタン』の看板企画「マジ歌選手権」は、東京03の角田晃広さんが歌を自作していて、それがダサ面白かったことをヒントにした企画だし、「キス我慢選手権」も、劇団ひとりさんのアドリブの上手さから「本人を追い込んだら面白いのでは」と生まれた企画だ。

「チャラいキャラクターのEXITが、『実は真面目』という一面を出したのも、『ゴッドタン』です。兼近大樹君やりんたろー。君は、打ち合わせをしているとものすごく真面目なので、収録中に思いつきで『ネタはしっかりした真面目な作り』とカンペを出したら、ハネちゃったんですね。当初のイメージと真逆のキャラクターなので、本人たちにとって良かったのか悪かったのかはわかりませんが(笑)」

「自分に合った特徴」こそ成功のカギになる

佐久間氏は、芸人だけでなく、後輩スタッフの「開けていない箱」も開けている。同局の人気ゲーム番組『勇者ああああ』を板川侑右プロデューサーが企画したきっかけは、いつもゲームの話をしているのにゲーム番組の企画を出さないことを佐久間氏が指摘したことだった。また、ADの真船佳奈氏がADマンガ『オンエアできない!』(朝日新聞出版)で漫画家デビューしたきっかけは、他のテーマの作品ばかり書いていた真船氏に、「ADのことを書いたほうがいい」と指摘したことだ。

「真船は『甥おいっ子がかわいい』みたいな漫画を書いていたので、『自分しかできないことで、ムリしないでできることをやったほうがいいんじゃないの』と言っただけです。本人に合っている特徴のことを、業界ではよく『仁(にん)』と言いますが、売れるためにはその『仁』を見つけることがすごく大切だと思います」

ただし、佐久間氏は、ムリに価値観を押しつけるようなことはしないという。

「芸人の中には、開けていない箱を開けてしまうとキャラクターが変わってしまい、やりづらくなる人もいます。だから、開けていない箱を開けるときは、ほとんどの場合、『いつもと違った打ち出し方をしますけど、いいですか?』と本人に確認を取ります。面白ければいいというわけではなく、あくまで相手にとってプラスになる形でやろうと考えています」

なぜ若手の芸人には細かく説明しないのか?

面白い番組企画を思いついたとしても、プロデューサーが出演者やスタッフを上手く導かなければ、形にすることはできない。収録の現場で、佐久間氏はどのようなことを心がけているのだろうか。

「自分にできることとできないことをちゃんと見極めて、できないことは人に任せるようにしています」

実は佐久間氏は、30代半ばまで、番組制作に関して、なんでもかんでも自分でやるタイプだったという。コント番組『ウレロ☆シリーズ』は、シーズン4まで全話、最終的に佐久間氏が編集したという。

「でも、40歳を超えたあたりから、『自分の能力はもう伸びないから、自分を過信しないほうがいい』と思い始めました。抱えている番組の数が増えたこともあって、『不得意なことは他の人に任せたほうが良いものができる』と考え方を改めたんです」

もっとも、番組に対するクオリティに関して妥協するつもりはない。そこで、スタッフに仕事を任せるときは、企画内容について細かく丁寧に説明する。ただ、出演者については、相手によって伝え方を変える。すでに一定の地位を築いている実力派芸人には細かく説明する一方で、まだ若手の芸人に対してはあえて細かく説明しないようにしているそうだ。

「若手芸人に細かく説明しすぎると、『言われた通りやらないといけない』と真面目に考えてしまい、縮こまってしまうからです。そこは相手のキャラクターを見て変えますね」

常に自分や相手の内面に目を向ける。そのことが、佐久間氏のプロデュースの根底にあるようだ。

《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2020年3月号より》

佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
〔株〕テレビ東京 プロデューサー
1975年、福島県生まれ。99年、早稲田大学商学部卒業後、〔株〕テレビ東京に入社。『TVチャンピオン』などで、チーフアシスタントディレクターやロケディレクターとして経験を積みながら、入社3年目に『ナミダメ』でプロデューサーに抜擢。その後、『ゴッドタン』(2005~)や『ウレロ☆シリーズ』(11~)などのプロデューサーを務める。19年からはラジオ番組『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)のパーソナリティも務めている。(『THE21オンライン』2020年03月18日 公開)

提供元・THE21オンライン

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