世論調査の動向に過剰に反応
政府は新型コロナウイルス感染が拡大している東京を含む首都圏など11都道府県に「蔓延防止等重点措置」を適用する方針を決めました。感染が広がる変異株オミコロン対策です。新潟、熊本への適用も検討しています。
コロナ危機がまるで振り出しに戻ってしまった感じです。16日の感染者数は2万人を超えたのに、重症者は8人、死者は4人です。米国は17日の感染者数25万人、死者は440人です。その日本で対策が逆戻りです。
オミコロナは感染力が強くても、重症化しにくいという報告がなされています。それなのになぜ、振り出しに戻ってしまうのか。営業時間の短縮、酒類の提供の有無で多大な影響を受ける飲食店の怒りが分かります。私なら複数でなく、声を出さない「おひとり様」なら規制なしにします。
ネット論壇のアゴラなどをみると、鋭い指摘によくお目にかかります。「沖縄は1万6千人が感染し、重症者はゼロなのでオミクロンはインフルエンザ並み。ただの風邪」(永江一石氏)。新聞・テレビをみているだけでは全く分からない視点です。
メディアがどうして官製の情報ばかり流し、多様な見解を紹介しないのだろうと、私は歯がゆい思いをしています。
コロナ不安の背景は「政府、自治体が後で責任を追及されないように用心深い見通しや分析しか公表しない。見通しが狂って政治責任を追及されるくらいなら、過剰反応をして対応しておくほうがずっとまし」なのです。
四方八方を見回し、どんな展開になっても突かれないような説明をするこに終始しています。その結果、経済が悪化すれば、財政資金を投入すればいい。「コロナ対策といえば、何でも通る」なのです。
次に、メディアの取材力も低下していますから、公式見解を鵜のみにしたような報道に努めています。しかも「楽観論より、悲観論を振りておけば、見通しが狂っても責任を問われないだろう」という姿勢です。
NHKなどは夜のニュース組で、「まず感染者数が2万人突破」と煽り、重症者数や死者数は付けたりです。当局のコロナ対策を批判する視点はまずうかがえません。民テレビも「騒いでおけば、不安こそ視聴率を稼げる」が編成方針です。
それに踊らされているが一般国民、世論です。このところ政権の支持率を大きく左右するのはコロナです。シングルイシュー化しているといってもいいでしょう。
政府・自治体の無責任政治、メディアの煽り報道、踊らされる世論の3者がコロナ危機を増幅しているのです。コロナ感染は地域別、民族別、国情によって大差があり、日本は欧米、中南米のような感染拡大と距離があります。
安倍内閣、菅内閣がコロナ対策が後手に回ったと批判され、内閣支持率が低下したの見て、岸田内閣は「先手先手で対策を打つ」が基本方針です。
18日発表の世論調査(読売新聞)によると、オミコロンで感染者数が急増しているのに、内閣支持率は66%まで上昇し、昨年10月の内閣発足以降で最高になりました。「感染者増=支持率下落」という法則が崩れたとの解説を載せています。そんなことよりオミコロンの弱毒化が本質的な背景です。
「コロナ対策を評価する52%」「オミクロン対策として軽症、無症者は自宅療養を認める評価する76%」などとなっています。だんだんと、規制の厳しい感染症2類から、規制の緩い5類扱いにし始めたことが大きく、それも岸田内閣の成果では決してない。なぜそういう指摘をしないのか。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。
文・中村 仁/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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