ジュニアNISAは2023年に廃止予定の非課税投資制度です。廃止に伴い使い勝手が向上し利用者が増加していますが、制度概要やメリット、デメリットを確認し、利用を検討しましょう。廃止に伴う変更点やジュニアNISA口座の開設におすすめの証券会社も紹介しています。
ジュニアNISAとは?
Q.ジュニアNISAとはどんな制度?
A. 0歳〜19歳の未成年者用の少額投資非課税制度(NISA)です。最長で5年間(ロールオーバーすればさらに5年間)、通常20.315%かかる運用益が非課税になります。
ジュニアNISAとは、0歳〜19歳の未成年者用の少額投資非課税制度(NISA)です。未成年者本人が運用できますが、両親や祖父母による代理運用も可能です。
ジュニアNISAの概要 | |
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利用できる人 | 0〜19歳の未成年者(口座開設する年の1月1日時点)※1 |
非課税対象 | 株式・投資信託等の譲渡益、配当金、分配金 |
口座開設可能数 | 1人1口座 |
非課税期間 | 最長5年間(ロールオーバーにより非課税で継続運用可能) |
非課税投資枠 | 毎年80万円が上限 |
投資可能期間 | 2023年末まで |
運用管理者 | 口座開設者本人(未成年者)の親権者等 |
払い出し | 18歳まで払い出し制限あり(災害等の場合は非課税で払い出し可能) |
※1……成人年齢引き下げに伴い、2023年は0歳〜17歳
※金融庁ホームページより作成、2021年12月22日時点
ジュニアNISAは通常20.315%かかる運用益が非課税になる制度です。災害等のやむを得ない場合を除き、原則18歳まで払い出し制限があります。18歳より前に払い出す場合は、それまでの運用益に課税される点は注意が必要です。そのため長期的に考えて、途中で引き出さなくても問題のない資金運用に利用しましょう。
ジュニアNISAの非課税期間は最長5年間ですが、5年間終了時は、ロールオーバーによってさらに5年間非課税運用を継続できます。
ロールオーバーとは?
非課税期間終了時に、その翌年の非課税投資枠等に保有する金融商品を移管することを指します。ロールオーバーする金額に制限はなく、時価が非課税投資枠を超えていても移管できます。
非課税期間が終了した際には、NISA口座・ジュニアNISAで保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移行(移管)することができます。この移管のことを「ロールオーバー」と呼んでいます。なお、ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が非課税投資枠を超過している場合も、その全てを翌年の非課税投資枠に移すことができます。
出典:金融庁
ジュニアNISAの非課税投資枠は年間80万円のため、ロールオーバーした時価の金額がそれより少なければ、新たな投資も可能です。例えば50万円をロールオーバーした場合、残り30万円の範囲内で非課税投資ができます。
しかし投資可能期間は2023年末までのため、ロールオーバー後に非課税投資枠を利用するには、2018年分(非課税期間終了が2022年)のロールオーバーが最後でした。2019年分(非課税期間終了が2023年)以後は、ロールオーバーの金額にかかわらず新規投資はできません。
ジュニアNISAの5つのメリット ジュニアNISAを今始めるべき理由とは?
Q.ジュニアNISAを今始めるべき理由は何ですか?
A. 2024年以降はジュニアNISAで新規投資はできませんが、2023年末までは非課税投資ができます。その後ジュニアNISAは廃止になるものの、制度廃止後も利用者のみ資産を非課税で保有できる場合があります。ジュニアNISAは家族単位で非課税投資枠を増やしたり非課税で贈与したりできるため、制度の恩恵をより受けるためにも早めに口座開設をしたほうがよいでしょう。
ジュニアNISAのメリット
- ジュニアNISAで非課税投資枠を増やせる
- 相続税や贈与税の節税対策になる
- 2024年以降もジュニアNISAで非課税運用ができる
- 子供の投資教育機会になる
- 貯蓄しながら運用でき、教育資金ができる
ジュニアNISAで非課税投資枠を増やせる
ジュニアNISAの最大のメリットは非課税で投資できることですが、子供の口座であることがポイントです。NISA口座は一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAがありますが、1人につきいずれか1口座までしか開設できません。例えば夫が一般NISA、妻がつみたてNISAを開設する場合、合計の非課税投資枠は年間160万円です(2024年以降は162万円)。
一般NISA 120万円+つみたてNISA 40万円=160万円の非課税投資枠
ここで仮に子供が2人いる場合、それぞれのジュニアNISAを開設すると、非課税投資枠は年間320万円になります(2023年末まで)。
一般NISA 120万円+つみたてNISA 40万円+ジュニアNISA 2人分160万円=320万円の非課税投資枠
子供のジュニアNISAも含めれば非課税投資枠が2倍になるため、それだけ有利に資産形成ができます。 子供の口座とはいえ親権者等が代理運用できるジュニアNISAは、実質的に非課税投資枠を増やせる手段になります。
ジュニアNISAの非課税投資枠は子供の人数分だけ増やせるため、そのメリットは子供の多い家庭ほど大きいです。あまり利用しないとしても、子供の非課税投資制度はジュニアNISAしかありませんから、口座開設して非課税投資枠を確保しておいても損はないでしょう。
また、ジュニアNISAの対象商品は幅広いです。つみたてNISAの場合、対象商品は一定の基準をクリアした投資信託のみのため、投資したい商品を購入できないこともあります。しかし商品の選択肢が多いジュニアNISAを使えば、運用の選択肢も広がります。
相続税や贈与税の節税対策になる
ジュニアNISAは口座開設者本人(未成年者)の口座であり、口座の資金は未成年者本人に帰属します。しかし未成年者本人が自分で資金を出して運用することはあまり考えられず、実際には両親や祖父母が運用資金を出すケースが多いでしょう。その場合、ジュニアNISAの運用資金は両親などから口座開設者本人に贈与済みの資金ということになります。
贈与する場合、贈与税が本来かかりますが、年間110万円までは贈与税がかからない暦年課税という制度があります。そのため非課税投資枠が年間80万円のジュニアNISAは、他に贈与がなければ通常は贈与税の対象になりません。
しかも暦年課税は贈与する相手1人につき110万円ですので、子供が複数いれば贈与する金額を増やせ、相続税や贈与税の節税対策にもなります。さらに基礎控除の110万円は贈与を受ける側の上限であるため、複数の子供に贈与すれば、贈与する側は相続税の対象になる資産を圧縮しつつ、次世代にお金を残せます。
ジュニアNISAの非課税投資枠は5年間で最大400万円ですが、これから口座開設する場合は、2022年に開設しても160万円が最大です。2023年になると投資枠が80万円になるため、早く口座開設し贈与に利用してもよいでしょう。
2024年以降もジュニアNISAで非課税運用ができる
ジュニアNISAで新規投資できるのは2023年末までですが、すでに保有する商品に関しては2024年以降も非課税運用が可能です。
これは2024年以降に5年間の非課税期間の終了を迎え、その時点で18歳になっていない人は保有商品を継続管理勘定に移管(ロールオーバー)できるためです。
継続管理勘定とは
2024年以降、ジュニアNISAの金融商品を移管し非課税で保有するための特別な口座です。継続管理勘定では新規投資はできませんが、ロールオーバーした商品を1月1日時点で18歳である前年12月末まで非課税で保有できます。
2024年から2028年までの各年に設定される非課税管理勘定からの移管専用の非課税枠として、「継続管理勘定」が設けられることとなり、ジュニアNISA口座で2019年から2023年の間に買付けた上場株式等について、それぞれの年に買付けた上場株式等の非課税期間の5年間が終了するタイミングで「継続管理勘定」に移管して保有を続けることにより、1月1日において20歳(注1)である年の前年12月31日まで非課税の恩典を受けることが可能となっています。
出典:日本証券業協会
(注1)2023年1月1日より「20歳」と記載の箇所は「18歳」となります。
継続管理勘定は制度廃止以降に非課税期間の終了を迎える場合に、ジュニアNISAで保有していた商品を非課税のまま運用できる専用口座です。継続管理勘定にロールオーバーした商品は、ジュニアNISA制度終了後も18歳まで非課税の恩恵を受けられます。
ただし継続管理勘定では新規投資はできず、売却のみ可能な点は注意が必要です。継続管理勘定で一度売却した資金は非課税での運用はできなくなりますので、売買がしたい場合は課税口座を利用しましょう。
例えばジュニアNISAが廃止になる時点で子供が10歳だとすれば、売買はできないものの、残り8年間は非課税運用をじっくり続けられます。しかし継続管理勘定にロールオーバーできるのは2023年末までに投資した商品に限られるため、今のうちに口座開設し投資しておきたいところです。
子供の投資教育機会になる
ジュニアNISAの制度目的は子供の将来のための資産形成ですが、それだけに利用しなければいけないわけではありません。親などが子供と一緒に運用し、教育として投資の経験をさせるためにも利用できます。
ジュニアNISAは非課税で運用できることに目が行きがちですが、本来は子供の口座であるため、親が子供をサポートし、投資でお金を増やすことを身をもって体験させるのもいいでしょう。
ネット証券を使えば100円から投資ができます。数百円であれば子供自身のお小遣いからでも出せるでしょう。例えば貯金代わりに毎月500円でも積み立てていけば、1年後には元本で6,000円となり、子供にとってはそれなりの金額にもなります。
もちろん投資にはリスクがあることを理解させなければいけませんが、価格変動があることや時にはマイナスになることも投資教育のよい機会にできます。少額でも子供の頃から投資に触れさせておけば、大人になりもっと大きな金額を運用するときにもその経験が役立つはずです。
貯蓄しながら運用でき、教育資金ができる
ジュニアNISAの払い出し制限は、利便性を低下させるデメリットと考えられますが、強制的に貯蓄するための機能であるとポジティブにも捉えられます。特に教育資金のような特定の時期に必要になるお金は、ある程度強制的に貯蓄できるほうが好都合です。さらに非課税で投資ができることから、中長期的に運用すれば単に貯蓄するよりも効率よく教育資金を準備できます。
とはいえ新規資金を投入できるのは2023年までで、2022年からだと160万円が最大です。これだけでは教育資金としては心もとないですが、非課税運用できる点はぜひ活用したいです。
例えば年利回り3%で2年間運用(年間80万円ずつ)し、その後8年間保有したまま非課税運用するケースを考えてみましょう。
<1年間>82万4,000円
<2年間>167万3,000円
<8年間>211万9,000円
※野村證券の「みらい電卓」でシミュレート
元本は160万円のため、およそ52万円を増やせたことになります。実際にはシミュレーション通りにはなりませんが、運用期間が長いほど元本割れの可能性も下がるため、2024年以降18歳まで非課税運用できることも見据えてジュニアNISAを活用しましょう。
ジュニアNISAが2023年で廃止された後はどうなる?
Q.ジュニアNISAが廃止された後の制度はどうなりますか?
A.ジュニアNISAが廃止された後は新規投資ができません。しかし18歳まで非課税運用を続けられる方法はあります。
ジュニアNISAは2023年で廃止されますが、廃止後も非課税運用は継続できます。どのように制度が変わるのか詳しく確認しておきましょう。
ジュニアNISAで新規に投資できるのは2023年末まで
上述したようにジュニアNISAは2023年で廃止され、2024年以降は口座開設や新規投資ができなくなります。
廃止される理由は利用実績が乏しいためですが、非課税で投資できる制度はNISAを除き確定拠出年金くらいしかありません。廃止されるとはいえ、せっかく非課税投資のできる数少ない制度なのですから、最大限活用したいものです。
2024年以降はジュニアNISAの払い出し制限が解除される
ジュニアNISAは2023年で廃止されますが、それに伴い払い出し制限が解除され、2024年以降は非課税でいつでも払い出しできるようになります。
ジュニアNISAは本来、子供や孫の将来に向けた中長期の資産形成を目的にしており、原則18歳未満での払い出しはできません。仮に18歳未満で払い出す場合は、災害等のやむを得ない状況を除き、過去の譲渡益や配当金等を含め全て課税対象になってしまいます。
この払い出し制限があったせいか、ジュニアNISAの利用者は少なかったのですが、払い出し制限が解除されることが決まってから利用者が増加しました。2024年以降は新規で投資はできないものの、払い出し制限がなくなり使い勝手が向上するため、ジュニアNISAを資産形成に活用するとよいでしょう。
ジュニアNISA廃止後も18歳まで非課税で運用できるが、ロールオーバーが必須
ジュニアNISAが廃止されても、運用資金を引き出さなければいけないわけではありません。制度廃止後も口座開設者本人が18歳になるまで非課税で運用可能です。
ただし新規の買い付けはできず、2023年末までに購入した商品のみ継続して保有できます。もちろん2024年以降はいつでも非課税で払い出しできますので、将来のためのお金であれば、そのまま運用を続けてもよいでしょう。
しかしジュニアNISA廃止後に非課税運用を続けるには、継続管理勘定にロールオーバーしなければいけません。
・継続管理勘定にロールオーバーする手続きについて
ジュニアNISAを2024年以降も非課税で保有し続けるためには、5年間の非課税期間終了後に継続管理勘定にロールオーバーしますが、そのための手続きが必要になる可能性があります。
継続管理勘定が設けられるのは2024年からのため、手続きする必要がある場合は早い人で2023年中からとなりそうです。2024年以降に非課税期間が終了する人は、そのタイミングで継続管理勘定にロールオーバーできます。
具体的な手続き方法は示されていませんが、以下のジュニアNISAを翌年の新たな非課税投資枠にロールオーバーする手続きと変わらないと考えられます。
<翌年の新たな非課税投資枠にロールオーバーする場合の手続き>
①10月頃までに金融機関からロールオーバーのお知らせが届く
②期限までに「未成年者口座内上場株式等移管依頼書(ロールオーバー依頼書)」を書面かインターネットで提出
※継続管理勘定にロールオーバーする手続き方法ではありません。
ジュニアNISA口座で購入した株式や株式投信等のロールオーバーを行うには、ジュニアNISA口座を開設している証券会社等に「未成年者口座内上場株式等移管依頼書(一般NISA口座への移管を行う場合は、「未成年者口座非課税口座間移管依頼書」)(以下、これらの依頼書を「ロールオーバー依頼書」といいます。)をご提出ください(証券会社等によっては、ロールオーバー依頼書をインターネット等で提出することも可能です)。
出典:日本証券業協会
・ジュニアNISAの継続管理勘定で18歳を迎えたらどうなる?
ジュニアNISAの継続管理勘定のまま18歳を迎える場合は、2つの選択肢があります。
①課税口座へ払い出し
②新しいNISAへ移管
①の課税口座は譲渡益や配当金等に20.315%の税金がかかる通常の口座です。課税口座に払い出す場合は、そのときの時価が新たな取得価格になります。取得価格が変わることで課税関係に影響があるのですが、これについては後述します。
②は制度が見直され2024年から新しくなるNISAへのロールオーバーです。NISA口座はジュニアNISAを開設している人が18歳(2022年以前は20歳)で1月1日を迎えた場合、自動的に開設されます。新しいNISAに移管した後は、引き続き非課税運用が可能です。
もちろん課税口座や一般NISAに移管せず売却しても構いません。継続管理勘定の商品はいつでも好きなときに売却して引き出せます。
ジュニアNISAの商品を課税口座に払い出し
Q.ジュニアNISAの商品を課税口座に払い出したときの注意点はありますか?
A.課税口座に払い出すときに取得価格が変更になります。そのため払い出し後に余計に税金が発生する場合があります。
ジュニアNISAの商品を課税口座に払い出した場合、注意しなければいけない点として取得価格の変更があります。課税口座に払い出したときの取得価格は、その時点の時価が適用されるのですが、これにより税金が余計にかかるケースが発生します。
購入価格より値上がりしているケースは問題ない
まず問題のないケースですが、これはジュニアNISAで購入した価格より払い出し時点の時価が値上がりしている場合です。例えばジュニアNISAで対象商品を80万円で購入し、その後の値上がりで払い出し時に取得価格が140万円になったケースを見てみましょう。
購入時の取得価格 | 払い出し時の取得価格 | 売却価格 | 課税関係 |
80万円 | 140万円 | 160万円 | 20万円に課税 |
120万円 | 課税なし |
ジュニアNISAで80万円で購入したものを、払い出し後の課税口座において当初購入時の取得価格より高く売却したケースです。
この場合、払い出し後の取得価格である140万円が税金を計算するうえでの基準になるため、160万円で売却した場合は差額の20万円が課税対象になります。一方、120万円で売却した場合は取得価格140万円より値下がりしたと見なされ、当初の取得価格80万円より値上がりしているものの、税金の対象にはなりません。
この場合はどちらのケースでも課税口座に払い出す前の値上がりには課税されないため、特に問題はないでしょう。
購入価格より値下がりしているケースは課税に注意
課税口座への払い出しにおいて注意が必要なのは、新しい取得価格がジュニアNISAで購入したときよりも下がる場合です。例としてジュニアNISAで対象商品を80万円で購入し、その後の値下がりで払い出し時の取得価格が50万円になったケースで考えてみましょう。
購入時の取得価格 | 払い出し時の取得価格 | 売却価格 | 課税関係 |
80万円 | 50万円 | 70万円 | 20万円に課税 |
40万円 | 課税なし |
ジュニアNISAで80万円で購入したものを、最終的に70万円で売却したケースと40万円で売却したケースがあります。
払い出しによる変更後の取得価格は50万円のため、70万円で売却した場合は差額の20万円に課税されます。40万円で売却した場合は、新しい取得価格50万円を下回っているため課税はありません。
ここで問題になるのが70万円で売却した場合です。払い出し後の取得価格が50万円に変更されたため、ジュニアNISAで購入したときの取得価格80万円より値下がりしているにもかかわらず、20万円に対して税金が発生しています。
それでも払い出しせずに50万円で売却するよりはましですが、一般NISAに払い出しできるならそのほうがよいでしょう。
ジュニアNISAとNISA(一般NISA)の違い
Q.ジュニアNISAとNISAの違いは何ですか?
A.対象者が未成年者か成人か、非課税投資枠が80万円か120万円か、代理運用が可能か、払い出し制限があるかが異なります。ジュニアNISAと現行NISAは2023年で廃止され、2024年以降は新しいNISAが新設されます。
ジュニアNISAからNISAへのロールオーバーは可能ですが、制度の違いについて確認しておきましょう。現行NISAは2024年から新しいNISAに変わることもポイントです。
ジュニアNISA | 現行NISA(一般NISA) | 新しいNISA | |
---|---|---|---|
利用できる人 | 19歳(2023年は17歳)までの未成年者 | 20歳以上 | 18歳以上 |
非課税対象 | 株式・投資信託等の譲渡益、配当金、分配金 | 株式・投資信託等の譲渡益、配当金、分配金 | <2階部分> 株式・投資信託等の譲渡益、配当金、分配金 <1階部分> つみたてNISAと同様 |
口座開設可能数 | 1人1口座 | 1人1口座 | 1人1口座 |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長5年間 | 最長5年間 |
非課税投資枠 | 年間80万円 | 年間120万円 | <2階部分>年間102万円 <1階部分>年間20万円 |
投資可能期間 | 2023年末まで | 2023年末まで | 2024年〜2028年 |
運用管理者 | 口座開設者本人(未成年者)の親権者等 | 原則口座開設者本人 | 原則口座開設者本人 |
払い出し制限 | 18歳まであり (2024年以降はなし) |
なし | なし |
※金融庁ホームページより作成、2021年12月24日時点
ジュニアNISAとNISAの基本的な制度概要は同じです。年齢によってジュニアNISAを利用できるか、NISAを利用できるかが異なると考えてください。ただし2024年以降はジュニアNISAと現行NISAが廃止され、新しいNISAが新設される点は押さえておきましょう。
ジュニアNISAならではの特徴は、両親や祖父母などの親権者による代理運用が可能であることと、払い出し制限があることで、この2点がNISAと異なります。
代理運用が可能なのは、ジュニアNISAが進学や就職といった子供の将来のための資産形成を目的としているためです。払い出し制限があるのも同じ理由で、中長期的な資産形成を促す狙いがあります。しかし2024年以降は廃止に伴い払い出し制限が解除され、いつでも非課税で払い出せるようになります。
対象年齢になるとジュニアNISAからNISAへロールオーバーもできますが、2024年以降は積立専用の1階部分と現行NISAと同様の2階部分がある、新しいNISAに移管することになります。新しいNISAの1階部分はつみたてNISAと同様であるため、ジュニアNISAからのロールオーバーには2階部分が対応しています。
ジュニアNISAにしてもNISAにしても非課税で運用できるメリットは大きいため、ぜひとも利用したい制度です。
ジュニアNISAの6つのデメリット
Q.ジュニアNISAのデメリットは何ですか?
A.損益通算できないことや元本割れの可能性があること、途中払い出しは課税対象になることなどがあります。
ジュニアNISAのデメリットについても確認しておきましょう。
ジュニアNISAのデメリット
- 損益通算ができない
- 元本割れの可能性がある
- ジュニアNISAの途中払い出しは過去の利益にさかのぼり課税対象になる
- ジュニアNISAの金融機関の変更ができない
- 保有商品のリバランスが難しい
- 決められた商品でないと非課税にならない
損益通算ができない
ジュニアNISAは運用益が非課税になる代わりに、損失が出ても利益との損益通算はできません。
損益通算とは
一定期間内の利益と損失を相殺することです。利益には税金がかかりますが、損失を利益から差し引くことで税金を減らせます。損益通算しても損失が残る場合は、確定申告で損失を最長3年間繰り越し、その間の利益と相殺することも可能です。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失(以下「上場株式等に係る譲渡損失」といいます。)の金額がある場合は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」といいます。)と損益通算ができます。
出典:国税庁
例えば100万円の運用益が出た場合、通常は約20万円の税金がかかります。一方で30万円の損失もあった場合、100万円−30万円=70万円が課税対象になり、税金を約14万円に抑えられます。
ジュニアNISA内で発生した利益や損失は損益通算の対象外のため、他の口座で損益があっても相殺はできません。
ただし課税ジュニアNISAでの損失は、課税ジュニアNISAの口座内や通常の課税口座との損益通算が可能です。
課税ジュニアNISAとは
ジュニアNISA口座の開設時に自動的に開設される口座で、主にジュニアNISA口座での売却代金や配当金、分配金、預かり金などを管理するための口座です。課税ジュニアNISA口座を使って課税扱いで取引は可能ですが、ジュニアNISA口座と同じく払い出し制限があります。
ジュニアNISAの利用を申し込むと、「ジュニアNISA口座」と「課税ジュニアNISA口座」の両方が同時に開設されます。売却代金及び配当金等は「課税ジュニアNISA口座」で管理されます。
出典:日本証券業協会
元本割れの可能性がある
ジュニアNISAは投資を非課税で行える制度であり、投資自体に元本割れの可能性があることは変わりません。そのため投資する目的によっては、リスクを取りすぎないようにすることも考える必要があります。
リスクとリターンとは
リターンとは「投資で得られる成果」のことを指し、収益だけでなく損失も含みます。リスクとは「リターンの振れ幅」のことで、一般的にリターンの高い資産はリスクも高いです。
リターンとは、「資産運用を行うことで得られる成果」のことであり、収益が得られることもあれば、損失が出ることもあります。一方、一般的にリスクとは「危険なこと」「避けるべきこと」という意味で使われていますが、資産運用の世界では、リスクとは、「リターンの振れ幅のこと」を表しています。つまり、「リスクが大きい」とは、「大きく収益が得られるかもしれないし、大きく損失が出るかもしれない」という意味です。
出典:日本証券業協会
例えば子供の教育資金のために運用するお金であれば、株式のみで運用することを避けて、債券などリスクの低い資産も組み入れて運用する。あるいは最初は株式の比率が高くても、時間の経過とともに徐々に安定資産に切り替えていくという対応方法もあります。
株式のような高リスク資産でも長期投資によってリスクは抑えられますが、教育資金など特定の時期に必ず必要になるお金の運用では、そもそもリスクを抑えて投資することも検討したほうがよいでしょう。
ジュニアNISAの途中払い出しは過去の利益にさかのぼり課税対象になる
ジュニアNISAには払い出し制限があり、18歳(3月末時点で18歳である年の前年12月末)までは原則引き出せません。高校3年生の1月以降に引き出せると考えてもよいでしょう。しかし絶対に引き出せないわけではありません。
仮に18歳までに引き出す場合はジュニアNISA口座の全部解約となり、過去の譲渡益や配当金等の利益にさかのぼって課税されます。それでも問題ないなら口座を解約してもよいですが、ジュニアNISAは2024年から払い出し制限がなくなるため、少なくともそれまでは引き出さないほうが賢明です。
実際に口座を解約する際には、以下の書類を金融機関に提出しなければなりません。
<提出書類>「未成年者口座廃止届出書」
払い出しは口座開設者本人または口座開設者本人の法定代理人のみが行えます。本人が未成年で法定代理人が払い出しを行う場合は、原則本人の同意が必要となります。本人が年少などで同意を確認できないときは、払い出される資金が本人のために使われる資金であるかどうかを金融機関から確認されます。
なお災害等やむを得ない場合は、払い出し制限のある期間でも非課税で引き出せます。
ジュニアNISAの金融機関の変更ができない
一度開設したジュニアNISA口座は、他の金融機関に変更できません。変更したい場合は既存のジュニアNISA口座をいったん廃止し、他の金融機関で再開設することになります。
そのため金融機関変更が不可能なわけではありませんが、手間と時間がかかるため、あまりおすすめはできません。ジュニアNISA口座を開設するときは、金融機関をよく吟味しましょう。
どうしても金融機関を変更したい場合は、以下の手続きが必要です。
<ジュニアNISA口座を他の金融機関で再開設する手続き>
①ジュニアNISA口座のある金融機関に「未成年者口座廃止届出書」を提出する
②その金融機関から「未成年者口座廃止通知書」を受け取る
③口座開設したい金融機関に「未成年者口座開設届出書」と「未成年者口座廃止通知書」を提出する
手続き期間は前年の10月1日から再開設したい年の9月30日までですが、再開設したい年にジュニアNISA口座で買い付けをしていないことが条件です。買い付けをしている場合は、開設できるのが翌年になります。
また、払い出し制限が解除される前にジュニアNISA口座を廃止すると、過去の利益にさかのぼり課税される点は注意しましょう。
保有商品のリバランスが難しい
ジュニアNISAは年間の投資枠が決まっているため、リバランスには不向きな制度です。
リバランスとは
複数の資産を一定の割り当てで運用するポートフォリオにおいて、当初から崩れた各資産の割合
を元の割合に戻すことです。
金融商品の組み合わせを定期的に見直すこと。
出典:日本証券業協会
リバランスは一般的には値上がりしたものを売り、値下がりしたものを買い増しますが、ジュニアNISA口座で買い付けできる金額は年間80万円までです。保有商品を売却しても非課税投資枠は復活しませんし、その年の非課税投資枠が余っても翌年に繰り越しもできません。
リバランスすることを想定して少額で投資するのも1つの方法ですが、リバランスの必要がない投資信託を購入する方法が簡単で効率的でしょう。
例えば複数の資産で運用するバランスファンドは、資産割合が崩れてもリバランスを自動で行ってくれます。それによって非課税投資枠を使用することもありませんし、資産割合を維持することで一定のリスクを保ちながら投資できます。
もちろん1種類の資産のみで運用する場合や各資産の運用割合を気にしない場合など、必ずしもリバランスが必要なわけではありません。
決められた商品でないと非課税にならない
ジュニアNISAで投資できる商品は、具体的に以下の金融商品です。
ジュニアNISAで投資できる商品
- 株式投資信託
- 国内株
- 外国株
- 国内ETF
- 海外ETF
- ETN(上場投資証券)
- 国内リート(J-REIT)
- 海外リート
- 新株予約権付社債(ワラント債)
これらの商品から得られる譲渡益、配当金、分配金が非課税の対象です。それ以外の公社債投資信託や非上場株式、FXなどはジュニアNISAでは投資できません。
ジュニアNISAで非課税の恩恵を受けるには決められた商品に投資する必要はありますが、対象は比較的幅広いです。そのため自由に投資できるものの、子供のための資産形成というジュニアNISAの制度目的を考えると、実際に投資する商品はよく選んだほうがよいでしょう。
ジュニアNISAはどんな人におすすめ?
Q.ジュニアNISAはどんな人におすすめですか?
A.ジュニアNISAは未成年者口座のため、子供や孫のいる家庭におすすめです。NISAやつみたてNISAでは非課税投資枠が足りない家庭にもおすすめできます。
ジュニアNISA口座は未成年しか開設できないため、子供や孫のいる家庭は開設をぜひ検討してください。非課税投資制度は他にも一般NISAやつみたてNISAがありますが、さらに非課税投資枠を増やしたい家庭にもおすすめです。
ジュニアNISAがおすすめの人
- 子供や孫のいる家庭
- 非課税投資枠を増やしたい人
ジュニアNISAの非課税投資枠は2022年から始めれば最大160万円ですが、未成年者が複数いる家庭なら人数分の非課税投資枠を増やせます。一般NISAやつみたてNISAの非課税投資枠では足りないという家庭は、ジュニアNISAを活用することで有利に資産形成ができるでしょう。
ジュニアNISAは一般的な商品なら大抵のものに投資できるため、リスク度合いの調整も行いやすいです。子供の教育資金を目的にするならリスクを抑えた商品を選べますし、余裕資金を積極的に投資したいなら海外の株式やETFなどにも投資可能です。
制度が廃止になることやそれまで払い出し制限があることを除けば、使い勝手は決して悪くありません。
ジュニアNISAは最低100円から手数料無料で取引できる
Q.ジュニアNISAで最低100円から手数料無料で取引できる証券会社はありますか?
A.ネット証券は最低100円から低コストで取引できるところが多いです。
ジュニアNISAの非課税投資枠は年間80万円が上限ですが、最低投資金額は100円からです。金融機関によって最低投資金額は異なるものの、ネット証券では100円から投資できるのが一般的です。少額から投資できることは投資初心者にとって大きなリスクを取らなくていいため安心でしょう。
さらにネット証券は、ジュニアNISAの取引手数料を無料としているところもあります。全てが無料になるわけではありませんが、ネット証券を利用してジュニアNISAの取引をすれば、対面型の金融機関より手数料を抑えて投資できます。
ジュニアNISA口座開設のおすすめの証券会社
Q.ジュニアの口座開設でおすすめの証券会社はどこですか?
A.ネット証券であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券は取引コストが安く、商品数も豊富なためおすすめです。
対象商品 | 投資信託 | 米国株 | IPO実績 | 手数料 | おすすめポイント | |
---|---|---|---|---|---|---|
SBI証券 | 国内株式 投資信託 外国株式 |
2,573 | 5,002 | 122 | 国内株:買・売 無料 投信:買・売 無料 米国ETF:買 無料 |
外国株投資やIPO申し込みもできる |
楽天証券 | 国内株式 投資信託 |
2,590 | 4,585 | 74 | 国内株:買・売 無料 投信:買 無料 |
投資信託本数No.1 |
マネックス証券 | 国内株式 投資信託 |
1,225 | 4,641 | 66 | 国内株:買・売 無料 投信:買 無料 |
IPO抽選が完全平等 |
※IPO実績は2021年
※楽天証券はジュニアNISA口座でIPOの申し込みはできません。
※SBI証券、楽天証券、マネックス証券のホームページより作成、2022年1月5日時点
SBI証券……外国株投資やIPO申し込みもできる
対象商品 | 投資信託 | 米国株 | IPO実績 | 手数料 | おすすめポイント | |
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SBI証券 | 国内株式 投資信託 外国株式 |
2,573 | 5,002 | 122 | 国内株:買・売 無料 投信:買・売 無料 米国ETF:買 無料 |
外国株投資やIPO申し込みもできる |
※IPO実績は2021年
※SBI証券のホームページより作成、2022年1月5日時点
SBI証券のジュニアNISAは、対象商品が幅広くさまざまな目的の人におすすめです。外国株式や海外ETFにも投資でき、ジュニアNISA口座でIPOの申し込みもできます。特に外国株式や海外ETFに投資したい場合は、他社で投資できないためSBI証券一択になるでしょう。
海外ETFは米国、中国、韓国のETFが買い付け手数料無料です。ETFは一般的に投資信託より信託報酬が安いため、海外ETFで中長期の資産形成も狙えます。
楽天証券……投資信託本数No.1
対象商品 | 投資信託 | 米国株 | IPO実績 | 手数料 | おすすめポイント | |
---|---|---|---|---|---|---|
楽天証券 | 国内株式 投資信託 |
2,590 | 4,585 | 74 | 国内株:買・売 無料 投信:買 無料 |
投資信託本数No.1 |
※IPO実績は2021年
※楽天証券はジュニアNISA口座でIPOの申し込みはできません。
※楽天証券のホームページより作成、2022年1月5日時点
楽天証券のジュニアNISAは、投資信託の取扱数が最多です。投資信託は最も手軽でリスク分散もしやすい商品であり、子供の将来を見据えた運用に最適と言えます。取扱数が豊富なことは利用者にとってメリットであるため、主に投資信託で運用する場合は楽天証券も検討しましょう。
マネックス証券……IPO抽選が完全平等
対象商品 | 投資信託 | 米国株 | IPO実績 | 手数料 | おすすめポイント | |
---|---|---|---|---|---|---|
マネックス証券 | 国内株式 投資信託 |
1,225 | 4,641 | 72 | 国内株:買・売 無料 投信:買 無料 |
IPO抽選が完全平等 |
※IPO実績は2021年
※マネックス証券のホームページより作成、2022年1月5日時点
マネックス証券のジュニアNISAは、SBI証券と同じくIPOにも申し込めます。SBI証券と異なるのは、IPOの抽選方法が完全に平等である点です。
マネックス証券のIPO抽選は、申し込み株数が100株でも1,000株でも1人1票としてコンピューターで無作為に抽選されます。課税口座とジュニアNISA口座で同時に申し込んでも名寄せされるため、当選確率が倍になることはありません。そのため取引状況などで優遇のあるSBI証券よりも、当選を期待して申し込みできるでしょう。
ジュニアNISAの始め方
Q.ジュニアを始めるにはどうすればいいですか?
A.ジュニアNISAを始め方は、まず口座開設が必要です。その際にマイナンバーの提出や代理運用する親権者等と未成年者との親子関係を証明する書類が必要です。
ジュニアNISAを始めるために、どのような手続きや書類が必要なのか見ていきましょう。
ジュニアNISA口座の開設手続きの流れ
ジュニアNISA口座を開設する流れは、以下の通りです。
ジュニアNISA口座開設の流れ
- 金融機関からジュニアNISA口座開設書類を入手
- 金融機関に口座開設に必要な書類を提出
- 金融機関から税務署にジュニアNISA口座の重複がないか確認
- 金融機関から申し込み結果の連絡
- ジュニアNISA口座の開設完了
ジュニアNISAは1人1口座しか開設できません。そのため金融機関は税務署にジュニアNISA口座の重複がないか確認しなければいけませんが、税務署での確認は1週間から2週間程度かかるのが通常です。金融機関への書類提出などの時間も考えれば、口座開設まで1ヵ月前後は見ておきましょう。
金融機関に提出が必要な書類
ジュニアNISA口座を開設するためには、金融機関に以下の書類を提出します。
- ジュニアNISA口座開設届出書
- 口座開設者(未成年者)の本人確認書類
- 口座開設者(未成年者)のマイナンバーが分かる書類
- 親権者等の本人確認書類
- 親権者等と口座開設者(未成年者)の親子関係の分かる書類
口座開設の届出書は金融機関から送付される書類のため、必要事項を記入しましょう。それ以外の書類は申込者側で準備が必要です。
ジュニアNISA口座の開設には未成年者本人のマイナンバーの申告が必要なため、通知カードやマイナンバーカードのコピーを準備しましょう。登録する親権者等は、続柄が記載された住民票の写しなど、親子関係の分かる書類も必要になります。
ジュニアNISAで子供の大事な資金を運用する方法
Q.ジュニアNISAで子供の将来のために運用するのに適した商品はありますか?
A.バランスファンドは簡単に分散投資ができて、初心者でも選びやすいものが多いです。バランスファンドの中にはターゲットイヤーファンドという自動的にリスクを調整してくれる商品もあります。
ジュニアNISAは比較的自由に投資しやすい制度ですが、子供の将来のために運用する場合、ある程度リスクを抑えた運用を検討したいです。特に教育資金のように必要な時期が決まっているお金は、過度なリスクは取らないほうが無難でしょう。
子供のための大事な資金は分散投資でリスクを抑える
リスクを抑えて運用するには、複数資産に分散投資するのが鉄則です。値動きの大きい資産はそれだけリターンも期待できますが、必要な時期に大きく値下がることもあります。そうなると運用資金を使いたい時期に使えない可能性もあるため、リスクを抑えて運用することも検討が必要です。
リスクを抑えるにはいくつかの方法がありますが、1つは値動きの性質が異なる資産を組み合わせて運用することです。
例えば、株式と債券はその性質が異なります。一般的に株式は高いリスクとリターンのある資産で、債券は低いリスクとリターンを得られる資産です。このような資産を一緒に保有することで、仮に株式が大きく下がったときでも、債券の値動きの緩さが全体のダメージを抑えてくれます。
代表的な資産についてのリスクとリターンは、以下が参考になります。
リスク | 期待リターン | |
国内株式 | 23.14% | 5.6% |
国内債券 | 2.56% | 0.7% |
外国株式 | 24.85% | 7.2% |
外国債券 | 11.87% | 2.6% |
※GPIF『基本ポートフォリオの変更について(詳細)』より作成、2021年1月11日時点
このような異なる資産を組み合わせて投資することでリスクを抑えられますが、最も簡単に分散投資するには投資信託、特にバランスファンドで運用することです。
バランスファンドでリスクを抑えて運用する
バランスファンドは複数の資産で運用される投資信託です。国内外の株式と債券に25%ずつ資金を振り分けて運用するなど、投資信託ごとに運用方針が決まっています。
バランスファンドであれば自分で資産配分する必要がなく、運用の手間がかかりません。バランスファンドは運用中に各資産の割合が崩れてくると自動的にリバランスしてくれるため、管理が楽なこともメリットです。低リスクから高リスクまでさまざまなバランスファンドがあり、運用目的に合わせて選択できます。
バランスファンドによっては銘柄名に「安定型」、「標準型」、「積極型」など分かりやすいネーミングがされており、初心者でも選びやすいものが多くあります。基本的に債券の割合の高いものが「安定型」、株式の高いものが「積極型」となっています。
どれを選ぶべきかは運用できる期間でも変わりますが、10年程度以上など運用期間を長く取れるのであれば、株式の比率が高いバランスファンドを選んでもよいでしょう。長期分散投資を実践することで、元本割れの可能性を抑えられることが分かっているためです。(参考:GPIFホームページ)。
ただし資産割合や市場環境などにより運用結果は変わります。運用目標を達成するためにジュニアNISA以外でどのくらいの資金を準備できるかといった個別の状況も関係するため、長期投資でも安定型や標準型で無難に運用することも検討してみてください。
ターゲットイヤー(ターゲットデート)ファンドで運用する
バランスファンドの中には、資産配分比率を運用期間に合わせて自動的に変更してくれるターゲットイヤー(ターゲットデート)ファンドがあります。
ターゲットイヤー(ターゲットデート)ファンドとは
分散投資で運用するバランスファンドですが、商品ごとに設定された目標年に向けて徐々に安定運用に切り替えてくれる投資信託です。目標年から遠い時期ほど株式などの高リスク資産の比率が高く、積極運用されます。
内外の株式や債券を組み合わせて運用するバランス型投資信託の一種。最初は積極的運用から始めてターゲット・イヤー(運用の最終目標時)に向けてリスク資産比率を引き下げ、ターゲット・イヤーに達したら安定運用となるような資産配分変更を自動的に行う投資信託。
出典:企業年金連合会
資産運用の1つの考え方として、資金が必要な時期に向けて少しずつリスクを下げていく方法があります。これはリターンの振れ幅を少なくし、必要な時期に必要な資金を確保するための運用方法です。ターゲットイヤーファンドではそのリスクを下げていく調整を自動で行ってくれるため、手間がかからず便利な商品だと言えます。
教育資金も一般的には大学入学の特定の時期に向けて準備するものであり、ターゲットイヤーファンドの商品特性に合っていると言えます。必要な時期に安定運用に切り替わっていれば、たとえそのときに資産が下落したとしても最小限のダメージで抑えられ、必要な資金を確保しやすくなるでしょう。
ただしターゲットイヤーファンドには注意すべき2つのデメリットがあります。
・信託報酬が高い
ターゲットイヤーファンドは、一般的なバランスファンドよりも信託報酬の高い商品が多いです。
信託報酬とは
投資信託の運用・管理にかかる費用のことで、一定率が純資産総額から日々差し引かれます。シンプルに運用される投資信託は安く、運用に労力が必要な投資信託は高い傾向にあります。
保有期間中の運用のための費用や資産の保管管理のための費用です。保有資産の額に応じて一定率を徴収されるものが一般的です。高いものでは数%といった商品もありますし、日経平均株価やTOPIXといった株価指数などに連動する「インデックスファンド」と呼ばれる商品は、0.3~0.5%などと手数料は低めの傾向があります。
出典:知るぽると
資産配分比率が一定のバランスファンドは運用にあまり手間がかかりませんが、ターゲットイヤーファンドは目標年に向けて資産配分比率を変更していかなくてはなりません。その分運用に労力を要するため、信託報酬が相対的に高くなりがちです。
信託報酬は運用資産の中から少しずつ引かれていくため、長期投資になるほどリターンを押し下げる要因になります。信託報酬が低ければ良いというわけではありませんが、同じものに投資するなら一般的なバランスファンドのほうが運用効率は高いでしょう。
・純資産総額が少なく繰り上げ償還の可能性がある
ターゲットイヤーファンドは純資産総額の少ない商品が多いです。純資産総額は投資家から集めた運用残高のことで、多いほど規模の大きい投資信託になります。これがあまりに少ないと運用を中止する繰り上げ償還になる可能性があり、純資産総額の少ない商品が多いターゲットイヤーファンドでは注意が必要です。
繰り上げ償還とは
投資信託の信託期間(運用期間)満了前に運用が終了し償還されることです。繰り上げ償還の条件は、残存口数が一定の規模以下になった場合や基準価額が一定条件を満たした場合など、あらかじめ定められています。
信託約款に定められた信託期間(運用期間)の満了日前に投資信託が償還されること。繰り上げ償還の条件は、あらかじめ信託約款に定められている。例えば、「当該投資信託の残存口数が一定の規模以下になった場合」、「基準価額が一定条件を満たした場合」等であるが、各ファンドによって条件が異なるので信託約款で確認する必要がある。また、約款上で「繰り上げ償還することができます」と記載されている場合には、事前に公告し、受益者への書面の交付を行い、受益者に賛否を問うことによって繰り上げ償還が決まる。
出典:一般社団法人投資信託協会
繰り上げ償還されるとその時点の時価で換金されるため、運用資産がなくなるわけではありませんが、含み損を抱えている場合は損失が確定してしまいます。ジュニアNISAであれば損失はなかったものと見なされるため、翌年以降に繰り越して利益との相殺もできません。
これではせっかく目標年に向けて投資しているのに、ターゲットイヤーファンドを購入した意味が薄れてしまいます。
繰り上げ償還を避けるには、なるべく純資産総額が大きく増加傾向にあるものを選ぶのがよいでしょう。具体的には純資産総額が少なくとも30億円以上ある商品を選びたいです。一般的には10億円を下回ると繰り上げ償還の可能性が高くなると言われますので、30億円以上あっても減少傾向にある商品は注意してください。
ジュニアNISAに関するQ&A
ジュニアNISAに関する疑問点をQ&Aでまとめましたので、参考にしてみてください。
Q.ジュニアNISAとはどのような制度?
ジュニアNISAは、19歳(2023年は17歳)までの未成年者が1人1口座まで開設できる少額投資非課税制度です。ジュニアNISA口座を使った投資で得た利益には、通常かかる20.315%の税金がかかりません。
年間の非課税投資枠は80万円まで、非課税期間は最長5年間です。投資対象の金融商品は、上場株式、ETF、リート、株式投資信託等で、2023年末まで新規投資が可能です。両親や祖父母など親権者等による代理運用もできます。
ジュニアNISAは2023年までは原則払い出しできませんが、2024年以降は制限がなくなり非課税で払い出しできます。
Q.ジュニアNISA口座を開設できる人とは?
ジュニアNISAは、日本国内に居住する1月1日時点で19歳(2023年は17歳)までの未成年者が開設できます。
Q.ジュニアNISAで未成年者に代わって運用管理を行う「親権者等」の範囲に制限はある?
ジュニアNISAで代理運用できる「親権者等」とは、口座開設者本人(未成年者)の法定代理人、法定代理人から書面による委任を受けた口座開設者本人の二親等以内の親族のことです。
そのため口座開設者本人以外が運用管理者になる場合は、金融機関に対して戸籍謄本等の関係を証明する書類を提示しなければならないことがあります。
Q.ジュニアNISAで5年間の非課税期間が終了するとどうなる?
ジュニアNISAで5年間の非課税期間が終了する場合、3つの選択肢があります。
①翌年の新たな非課税投資枠に移管する
②課税ジュニアNISA口座に移管する
③継続管理勘定に移管する
①は2022年までに非課税期間の終了するものが対象です。移管時の時価が80万円を超えている場合は、移管後に新規投資はできません。
②も2022年までに非課税期間の終了するものが対象です。ジュニアNISA内の課税口座に時価で移管し、移管後の譲渡益等は課税対象になります。非課税期間終了時に払い出し制限が解除されている場合は、通常の特定口座や一般口座への移管も可能です。
③は2024年以降に継続管理勘定に移管でき、18歳(1月1日時点で18歳である前年12月31日)まで非課税で保有を継続できます。継続管理勘定では新規投資はできず、保有のみ可能です。
なお2024年以降は払い出し制限が撤廃されるため、いつでも非課税で引き出しできるようになります。
Q.ジュニアNISA口座はNISA口座のように金融機関変更はできますか?
ジュニアNISA口座の金融機関変更はできません。
他の金融機関でジュニアNISA口座を開設したい場合は、現在のジュニアNISA口座を廃止し、取り扱いのある別の金融機関で再度開設する必要があります。
ただし既存のジュニアNISA口座で買い付けを行っていた場合、同じ年に新たな金融機関でジュニアNISA口座の開設はできません。買い付けを行っていない場合は、9月30日までに新たな金融機関で手続きを完了させれば、同じ年にジュニアNISA口座を開設できます。
注意点として、払い出し制限が解除される前にジュニアNISA口座を廃止した場合は、過去の譲渡益や配当金等は全て課税対象になります。災害等やむを得ない場合は、ジュニアNISA口座を廃止しても課税対象にはなりません。
Q.ジュニアNISA廃止前に20歳を迎えたらどうなりますか?
自動的に一般NISA口座が開設され、一般NISAへのロールオーバーも可能です。
ジュニアNISAは2023年で廃止されますが、2023年1月1日までに20歳に達した場合、その年にジュニアNISA口座の開設されている金融機関に自動的に一般NISA口座が開設されます。その場合、ジュニアNISAで保有する商品は一般NISAにロールオーバーできます。
一般NISAではなくつみたてNISAを開設することも可能ですが、ジュニアNISAからつみたてNISAへのロールオーバーはできません。
Q.ジュニアNISAを開設するのはもう遅い?
遅くはありません。
しかしジュニアNISAの非課税投資枠は、未成年者1人につき2021年開設なら240万円、2022年開設なら160万円、2023年開設なら80万円と利用できる投資枠が減少していきます。
非課税投資枠の活用を考えれば、早めに口座開設するほうがよいでしょう。未成年者が複数であれば、その分だけ非課税投資枠も増え、有利に資産形成を進められます。
ジュニアNISAは投資できる期間が限られている
ジュニアNISAを利用すれば非課税で投資できますが、新規資金を投入できるのは2023年までと期間が限られています。2024年以降も非課税運用はできるものの、新しく買い付けはできません。せっかくの非課税制度なのですから、非課税で投資できるうちはなるべく活用したいものです。
もしそれほど利用しない場合でも、口座開設だけはしておいてもよいでしょう。口座開設には1ヵ月前後時間がかかりますし、口座を開設しておけばいざというときにすぐ利用できます。
ジュニアNISAは未成年者のみが開設でき、どこの家庭でも利用できる制度ではないため、有効活用することを検討しましょう。