「自動運転レベル」という概念をご存じだろうか。車両に搭載される自動運転技術の水準を示すもので、2021年にはホンダが自動運転レベル3の市販車を発売し、話題になった。自動運転レベルに関しては、特にレベル3とレベル4の違いを知っておきたい。
そもそも「自動運転レベル」とは?
現在、自動運転レベルは米自動車技術会(SAE)が策定したものが世界基準となっている。
SAEの基準では自動運転レベルは0〜5の6段階に分類され、国土交通省自動車局の「自動運転車の安全技術ガイドライン」では、以下のように各レベルの名称や対応主体などについて定義している。
レベル | 名称 | 安全運転に係る監視、対応主体 |
---|---|---|
0 | 運転自動化なし | 運転者 |
1 | 運転支援 | 運転者 |
2 | 部分運転自動化 | 運転者 |
3 | 条件付運転自動化 | システム (作動継続が困難な場合は運転者) |
4 | 高度運転自動化 | システム |
5 | 完全運転自動化 | システム |
レベル0〜2は「安全運転に係る監視、対応主体」が「運転者」となっている。自動運転レベルといっても、レベル0〜2においては人間が対応の主体となるため、自動運転とはいえない段階だ。
しかし、レベル3以上では話が変わる。「安全運転に係る監視、対応主体」に関して、レベル3のみ「作動継続が困難な場合は運転者」と付記されているものの、基本的にレベル3〜5における対応主体は「システム」となっている。
つまり自動運転が可能になるのはレベル3以上となるが、もう1つ押さえておきたいことがある。レベル3〜5では、自動運転機能が作動する要件が異なることだ。詳しく説明しよう。
レベル3で自動運転機能が作動するシーンとは?
自動運転車の安全技術ガイドラインで紹介されていた自動運転レベル3の定義を詳しく読むと、「システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行、作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答」とある。
簡単にいうと、「『ある特定の領域』で自動運転機能の使用が可能だが、使用継続が困難なケースでは、人が運転を代わる必要がある」ということだ。
ホンダは、2021年3月に自動運転レベル3の機能を有する「トラフィック・ジャム・パイロット」を搭載した新型「LEGEND」を発売した。レベル3の市販車の発売は世界初ではあるが、レベル3であるため人による運転も必要になる。
新型LEGENDは渋滞時の高速道路で自動運転が可能だが、ホンダのレベル3は「『高速道路』で自動運転機能の使用が可能だが、使用継続が困難なケースでは、人が運転を代わる必要がある」ということになる。
レベル4で自動運転機能が作動するシーンとは?
続いて、レベル4で自動運転機能が作動するシーンについて解説する。自動運転車の安全技術ガイドラインでは、レベル4ついて「システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行」と定義している。
簡単にいえば、「『ある特定の領域』でシステムが全ての責任を負う」ということだ。レベル3における「人が運転を代わる必要がある」シーンでも、人ではなくシステムが対応可能な技術レベルだからだ。
つまり「ある特定の領域」においては、レベル4の車両は「完全自動運転」ができるということだ。例えば、あるシャトルバスが「ある特定のルート上」においてのみ完全自動運転が可能な場合、そのシャトルバスは自動運転レベル4といえる。
レベル5で自動運転機能が作動するシーンとは?
最後に、自動運転レベルの最上位である「自動運転レベル5」についても解説しておこう。レベル5では、レベル4における「ある特定の領域」という条件がなくなる。どのような場所でも、いつでも完全自動運転が可能なレベルということだ。
自動運転レベル5の実装は、決して簡単ではない。例えば、雪が積もった道でも安全に走行したり、場合によってはその道路を「通れない」と判断し、迂回を選択したりしなければならない。このような判断には、非常に高度なAI(人工知能)が求められる。
日本でも自動運転時代の幕開け
ホンダが自動運転レベル3の市販車を発売したことで、日本でも自動運転時代の幕が開けた。「日本でも」と書いたのは、アメリカや中国ではすでにレベル4の自動運転タクシーが商用運行を開始しているからだ。
モビリティの自動運転化が進むとともに、「自動運転レベル」というキーワードを耳にする頻度はさらに増えるだろう。この記事で説明した内容をよく理解しておけば、新たに登場した自動運転車がどのレベルにあるか、すぐに判断できるはずだ。
この機会に、各レベルの定義をしっかり理解しておこう。
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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