マダガスカルで発見された新種のラン「ガストロディア・アグニセラス(Gastrodia agnicellus)」が、ロイヤル・ボタニック・ガーデン(イギリス)より、「世界一醜いラン」の称号を与えられました。
新種は、ラン科のオニノヤガラ属(Gastrodia)に分類され、アグニセラスはラテン語で「小さな子羊(little lamb)」を意味します。
一体、どんな特徴をもつ植物なのでしょうか。
研究は、11月5日付けで『Curtis’s Botanical Magazine』に掲載されています。
ユニークすぎる新種!醜いけど良い香り、光合成はしない
G.アグニセラスは昨年9月に報告されたばかりですが、ここまで発見が遅れたのには理由があります。
この植物は現在、マダガスカルの「ラノマファナ国立公園」という保護区にのみ分布しており、一生のほとんどを地中で過ごします。
地上に現れるのは8月と9月だけで、花を咲かせて種子を落とした後は、再び地中に帰っていきます。
また、花のサイズが小さく、全長は1.1センチしかありません。
花と茎は茶色で地味であり、地面の岩肌と見分けにくく、下草に隠れてしまうとほぼ見えなくなるのです。
しかし見た目とは裏腹に、バラに似た良い香りを放ち、周囲の温度が上がると香りも一層強くなります。
こうした不気味な姿の植物は、ラフレシアのように腐臭を放つことが多いです。
さらにユニークなことに、G.アグニセラスは葉っぱを持たず、光合成をするための組織がまったくありませんでした。
その理由は、菌類との共生関係で得られる栄養素に依存しているためです。
新種の根っこには細かな毛がびっちり生えており、そこに菌類が住みついて、一種の「菌根ネットワーク」を作ります。
菌類は土壌や他の植物から炭素などの養分を抽出し、新種がその菌類から必要な栄養素を吸い上げるのです。
こうした植物は「ホロミコトロフ(holomycotroph)」と呼ばれます。
G.アグニセラスについてはまだ不明な点がいくつもあります。
その一つが、受粉の仕方です。
調査では、アリが花の中や外を這い回っている様子が観察されました。
これはアリがG.アグニセラスの蜜を採取するためですが、受粉ルートの一つになっている可能性があるようです。
発見されたばかりの新種はすでに減少の危機にあり、専門家たちが絶滅を防ぐための保護対策を進めています。
参考文献
sciencealert
bbc
newscientist
提供元・ナゾロジー
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