1950年代にプラスチックの大量生産が始まって以来、人類が生み出したプラスチックは90億トンに達します。
プラスチックには分解されるまでに400年以上かかるものもあり、ゴミとして溜まっていく一方です。
海や川に流出したものは魚たちが食べてしまい、さらにその魚を食べる人間の体内にもマイクロプラスチックが見つかり始めています。
このままでは地球がプラスチックまみれになってしまうかもしれません。
その中で今、専門家らが救世主として注目しているのが「キノコ」です。
目次
プラスチックを食べられるキノコたち
キノコが実用化されない2つの理由
プラスチックを食べられるキノコたち
アメリカ・イェール大学は2011年、研究授業で訪れたアマゾンの熱帯雨林で、「Pestalotiopsis microspora」という珍しいキノコを発見しました。
その後の調査で、このキノコがプラスチック製品の主成分の一つである「ポリウレタン」を食べて成長することや、ポリウレタンを唯一の炭素源として利用することが判明したのです。
さらに、増殖に酸素を必要としない嫌気性だったため、プラスチックの埋立地でも十分に利用できます。


また、2017年の別研究でも、中東・パキスタンの廃棄物処理場でプラスチックを食べる「Aspergillus tubingensis」という真菌が見つかっています。
実験によると、この菌は2ヶ月でプラスチックそのものをコロニー化し、ポリエステルとポリウレタンを細かく分解する酵素を分泌していました。

現在は「マイコレメディエーション」といって、キノコが本来持っている酵素を使ってプラスチックを分解する技術の開発も進められています。
こうした方法は安価で効果的、かつ環境に優しいので、プラスチックを取り除くには最適です。
しかし、これだけ有能であるにもかかわらず、キノコがプラスチック分解に実用化されている話は聞きません。
なぜでしょうか?
キノコが実用化されない2つの理由
1つ目の理由は、スピードです。
有害物質の除去は、汚染物質の100%除去にくわえ、スピーディーさが求められます。
先のキノコが、自然界のあらゆる物質を分解することは知られていますが、その分解スピードや効果は完全に解明されていません。
そのため、工業的なスケールでの技術開発が難しいのです。

もう1つの理由は、お金です。
キノコを利用した技術開発に取り組む専門家はいるものの、効果がすでに実証され、大衆が求める商品が作られているわけではないので、なかなか投資が集まらないのです。
それでもキノコを含む菌類には無限の可能性が秘められており、プラスチックの他に、農薬、除草剤、石油などの浄化に役立つと目されています。
今後この分野に注目が集まり、技術開発が進めば、将来的に地球が直面する環境危機のいくつかは回避できるかもしれません。
提供元・ナゾロジー
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