「アーリーリタイア」を考えたことがある人は少なくないだろう。お金持ちにとっては難しくないが、金融資産をそれほど持っていない人には簡単ではないはずだ。しかし、普通のサラリーマンでもやり方次第でアーリーリタイアは可能になる。50歳で退職すると仮定して、シミュレーションをしてみた。

普通の会社員がアーリーリタイアするにはいくら必要か?

アーリーリタイアに必要なのは、何といってもお金である。普通のサラリーマンが50歳でアーリーリタイアする場合に必要な概算金額を考えよう。

リタイア後の収入は年金が頼りになるが、年金の支給開始は65歳からだ。50歳でリタイアすると、年金を受け取るまでの15年間は無収入となる。生活費を月25万円と仮定すると、15年間で必要な生活費は次のとおりだ。

50歳から65歳までの生活費: 25万円×12ヵ月×15年間=4,500万円

次に65歳以降の生活費を考える。アーリーリタイアすると厚生年金の支払期間が短くなるため、受け取る年金額も少なくなる。年金受給額を夫婦で月18万円と仮定すると、月の生活費が7万円不足する。85歳まで生きる場合、年金を除き必要となる生活費は次のとおりだ。

65歳から85歳までの生活費: 7万円×12ヵ月×20年間=1,680万円

また、将来の家の修繕費や高齢になった際の在宅介護費などを考えると、余裕資金を持っておきたい。余裕資金の考え方は様々あるが、ここでは1,000万円と仮定する。以上を合計するとアーリーリタイアのための概算金額は次のようになる。

アーリーリタイアのための概算金額 :4,500万円+1,680万円+1,000万円=7,180万円

普通のサラリーマンが、50歳までにこの資産を形成するのは簡単ではないだろう。

アーリーリタイアは無理でもアーリーセミリタイアという選択がある

アーリーリタイアに必要な金融資産をつくるのは難しくても、「アーリーセミリタイア」なら実現の可能性は高まる。セミリタイアとは働くペースを抑え、ある程度自由になる時間を確保しながら生活することである。

50歳でアーリーセミリタイアする場合の概算金額を出してみよう。セミリタイア後は週に数日働く仕事をして月に15万円の収入を得るとする。生活費25万円との差額は10万円であり、50歳から65歳までの15年間の生活費は下記のようになる。

50歳から65歳までの生活費: 10万円×12ヵ月×15年間=1,800万円

65歳から85歳までに必要な生活費は、厚生年金に65歳まで加入し年金受給額を20万円と仮定すると月の生活費が5万円不足する。年金を除いた65歳以降の生活費は次になる。

65歳から85歳までの生活費: 5万円×12ヵ月×20年間=1,200万円

これらに余裕資金1,000万円を追加すると、アーリーセミリタイアのための概算金額は以下の通りだ。

アーリーセミリタイアのための概算金額 :1,800万円+1,200万円+1,000万円=4,000万円

50歳までに4,000万円の資産を形成するには、25歳から毎月8万円を積み立て、年利回り4%の運用で実現できる。

また、セミリタイア後に資産運用し老後の資産を増やすことも可能だ。例えば、50歳の時に資産3,000万円でアーリーセミリタイアし、65歳から85歳までの生活費1,200万円を年利回り3%で15年間運用できれば、65歳の時には1,869万円に増える。このようにリタイア後の資産運用を考えておくことも重要だ。

何のためにアーリーリタイアをするのか

定年前にリタイアやセミリタイアをするのであれば、その目的を考えておきたい。目的がなければ、リタイア後の時間の使い方に困りかねない。

趣味や社会貢献などもアーリーリタイアの目的になるだろう。他にも世界一周旅行や書籍・小説の執筆、社会貢献のため社会起業家になる、などアーリーリタイアは自分がやりたいことを実現するステップとなり得るのだ。

アーリーリタイアで必要な資金は、リタイア後の生活レベルや資産運用などで大きく変わってくる。また、夫婦共働きであれば年金受給額も増えるため、アーリーリタイアしやすくなる。アーリーリタイアに興味があれば、自分や家族の生活スタイルや生活レベルに合わせたライフプランシミュレーションで試算してみるといいだろう。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)
 

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