実業家リチャード・ブラウニング氏が設立した会社Gravity Industriesはこれまで「ジェットスーツ」の開発を進めてきており、度々話題となってきました。
そして最近、イギリス・グレートノース航空救急サービス(以下、略称: GNAAS)の協力のもと、人命救助を想定した世界初の実用化テストが行われました。
そのテストでは本来30分かかる負傷者の場所へ、たった90秒で到着したとのこと。
腕に装着したジェットで空を飛ぶジェットスーツ
ブラウニング氏は、以前からジェットスーツの開発を行なってきました。
このスーツはバックパックと両腕に装着したジェットエンジンのみで構成されており、装着者は自由に飛行できます。
プロペラや羽根を必要とせずコンパクトなため、環境に影響されない幅広い利用が可能でしょう。
また、このジェットスーツに搭載された5つのミニジェットエンジンによって時速約136キロという驚異的なスピードを実現。
さらにジェットスーツの見た目や飛行している姿から「アイアンマンスーツ」とも呼ばれており、人々の期待と注目を集めてきました。
そして、このジェットスーツにこれまでにない視点を向けたのが英国の救急サービス「GNAAS」です。
彼らが活躍する山岳地方は登山者たちによる事故が多発する場所です。救急救命士たちは要請に応じて急いで現場へと向かいますが、当然現場付近にヘリコプターが着陸できない場合も多いのです。
そのため車両や徒歩での長時間の移動を余儀なくされます。しかしながら、滑落した負傷者にとってはその1分1秒が命にかかわるでしょう。
そこでGNAASは救助にジェットスーツを利用できないかと考えました。
これによりジェットスーツ開発会社と人命救助サービスのコラボレーションが決定したのです。
世界初のジェットスーツ救急救命士誕生か!?
彼らは実際に、人命救助にジェットスーツが活用できるかテストを行うことにしました。これは世界で初めての試みです。
テストが行われた場所は、英国で最も有名な国立公園の1つの「湖水地方国立公園」です。この場所は毎年1500万人以上が訪れるものの、その荒れた地形によって事件が発生することもあります。
テストのシナリオは、「10歳の少女が崖から落ちて、深刻な足の怪我を負った」というもの。
そこはヘリコプターでの着陸が難しく、本来、救急救命士たちが30分かけて急な上り坂を歩かなければ到着できない場所です。
ところがジェットスーツを装着した救急救命士は、たったの90秒で救助を必要とする少女の元へ到着できました。
GNAASによると、「この地域では毎月数十人の負傷者が出る」とのこと。ジェットスーツは救急隊員の迅速な到着と治療を可能にするため、負傷者の生存率を確実に向上させるでしょう。
ただし現在ジェットスーツの飛行可能時間は10分未満です。またパイロットは自分の身体を腕だけで支えるための訓練を受けなければいけません。
今回のテストでは、ジェットスーツの実践投入はまだ遠いものの、その有用性が確かに認められました。もしかしたら将来、世界初のジェットスーツ救急救命士が誕生するかもしれませんね。
参考文献
zmescience xxx
提供元・ナゾロジー
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