目次
銀河中心部で起きている星のベビーブーム

銀河中心部で起きている星のベビーブーム

高密度のガス塊が星形成の母体になっているかどうか見極めるためには、実際にこの領域で新しい星(原始星)が誕生している証拠を探す必要があります。

この証拠となるのが原始星から吹き出すガス流(アウトフロー)です。

アウトフローは赤ちゃん星の産声ともいえるものです。

結果、研究チームは、アルマ望遠鏡の高感度かつ高解像度の観測によって、そんなアウトフローを43も検出することに成功しました。

天の川の中心部で「新しい星の卵」が次々と産声をあげている
(画像=アルマ望遠鏡が観測した、銀河中心分子雲帯。黄色は原始星周辺の塵。赤は地球から遠ざかるアウトフロー。青は地球に向かって吹き出すアウトフローを表す。これらの根本に原始星があると考えられる。 / Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Lu et al、『ナゾロジー』より 引用)

これは星形成には向いていないと考えられていた天の川銀河の中心部で、多くの星が今の誕生していることを意味しています。

しかし、この検出結果には謎が残っています。

それは高密度ガス塊が800個近くも見つかっていながら、原始星のアウトフローは43個しか見つからなかったということです。

この検出数の大きな差について、研究チームの代表ルー氏は「未発見のアウトフローがまだたくさん隠れている可能性がありますが、もしかしたら私たちは次の大きな『星のベビーブーム』の始まりを見ているのかもしれない」と語っています。

今回の発見は、星形成の基本的物理過程が研究者のこれまで考えていたものよりも、周囲の環境に影響されにくいことを示しています。

不毛地帯と思われていた天の川銀河の中心では、これから活発な星形成が始まろうとしているのかもしれません。


参考文献

天の川銀河の中心部に「赤ちゃん星の巣」を発見(ALMA)

元論文

ALMA Observations of Massive Clouds in the Central Molecular Zone: Ubiquitous Protostellar Outflows


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功