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生活:アリやハチみたいな社会性を営む

生活:アリやハチみたいな社会性を営む

神様、設定を盛りすぎ。チートでキモカワな「ハダカデバネズミ」の世界
(画像=Credit: いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

見た目と身体機能ですでに設定を盛りすぎなのですが、そのうえハダカデバネズミは非常に珍しい「真社会性を持つほ乳類」なんです。

「真社会性」とは、繁殖能力を持つ女王と繁殖できない個体が社会生活を行う生き物の特性のこと。ハチやアリ、シロアリなどでよく知られていますよね。

階級と役割はアリと同様に「女王」「王様」「兵隊」「ワーカー」の順でピラミッド状になっています。

ワーカーの仕事

働き蜂や働きアリでも、餌を探すアリや育児するアリと役割を分担していますが、ハダカデバネズミも同様です。「餌の地下にある芋を探す係」、「育児係」、「地下通路や巣穴を拡張する係」のほか、「子どものふとんになる係(まさに肉布団!)」なんてのもあります。

神様、設定を盛りすぎ。チートでキモカワな「ハダカデバネズミ」の世界
(画像=Credit: Smithsonian National Zoo、『ナゾロジー』より 引用)

兵隊の仕事

最初は全員ワーカーですが、兵隊になるものも。ただ、非常時以外はダラダラ暮らしています。ただ、そうしていられるうちが平和でいいということでしょう(『進撃の巨人』の駐屯兵団みたいに)。ヘビなどの敵がきたら真っ先に犠牲になってしまいます。

王様

アリやハチの場合は、女王とオスが集団で飛行して選ばれた1匹は交尾をすると死んでしまいます。女王はその際の精子を貯めていて使い続けますが、ほ乳類はそんなわけにはいきません。

ハダカデバネズミの場合は、女王に交尾を求められるとそれに応じるという形です。アリやハチよりも気楽なニートだなと思いきや、100匹以上の群れに対して生殖能力のある雄は1匹のため、子作りで体力を奪われてやせほそってしまうんだとか。

神様、設定を盛りすぎ。チートでキモカワな「ハダカデバネズミ」の世界
(画像=Credit: いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

そのうえ、女王の座をめぐる争いに巻き込まれて、オスは死ぬことも多いそう。やはり真社会性を営む生物の王様ポジションはふびんなような。

なお、ほかの雄との競争がないため、精子の運動能力が退化しています。採取した精子をテストしたところ、7%しか動くものがなかったうえ、毎秒35マイクロメートルしか移動しませんでした。これは、ほ乳類でもっとも遅いレベル。

独占的な交配権を持っているというといいけれど、やっぱり羨ましくはないかも……。

女王

女王は子どもを生むのが役目ですが、アリやハチの女王よりも過酷かもしれません。たえず女王の座を他のメスに狙われる気の抜けない生活です。動き回って巣穴を見張り、自分の力が上であることを示すのだそう。

神様、設定を盛りすぎ。チートでキモカワな「ハダカデバネズミ」の世界
(画像=Credit: いらすとや、『ナゾロジー』より 引用)

ハチの場合は、働きバチにとって女王の生んだ子どもの方が自身が生むよりも自分に遺伝子が近いので従うメリットがあるとされますが、ハダカデバネズミのワーカーすきあらば下剋上、のようです。

なお、ワーカーのハダカデバネズミは女王のフェロモンにより、排卵がとまって一時的に子どもが作れない状態ですが、女王がいなくなると生殖能力が復活します。

そんなハダカデバネズミたちのコロニーは、大きなものでは300匹くらいの大規模なもの。壮大な社会生活が営まれています。

さて、とにかく盛りだくさんでした。可愛さでポピュラーにはなり難いですが、とても魅力のある生き物ではないでしょうか。ここまでくると、もうひとつやふたつ、新たなユニークな能力の発見があっても驚きませんよね。これからもハダカデバネズミに注目です。


参考文献

ニューズウィーク日本版

JBS

CNN

積水化学

元論文

eLife


提供元・ナゾロジー

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