現代では黒人差別問題の騒動に巻き込まれて銅像が引き倒されてしまうなど、散々な目にあっている新大陸の発見者コロンブス。

彼はなぜ未踏だった西の海へ旅立ち、新大陸発見に至ったのでしょうか?

その理由について当時主流だった「地球平面説」を否定し、地球が丸いことを証明するためだったという誤解された逸話が有名になっているようです。

また、そもそも新大陸を探すつもりで冒険に出たと勘違いしている人もいるでしょう。

漫画ワンピースのように海へ旅立つ理由といえば、ロマン溢れる冒険心ばかりをイメージしてしまいますが、実際はかなり打算の多かった当時の航海理由を見ていきましょう。

目次
コロンブスが生きていた時代、地球が丸かったことはみんな知っていた
コロンブスの目的は?
商売のための航海

コロンブスが生きていた時代、地球が丸かったことはみんな知っていた

コロンブスの時代、人々は地球を平面だと考えていて、コロンブスはその考えを正すために航海に出た。そんな誤解をしている人が世の中にはいるようです。

しかし、実際コロンブスの時代よりはるか昔、紀元前のピタゴラスやアリストテレスの時代から人々は地球が丸い球体であるということを理解していました。

それは海へ旅立った船はマストの先端が最後まで水平線の上に見えているという事実や、月食の際月にできる地球の影が丸いことなどが根拠としてあげられています。

それに何より月が丸いことが大地は球形だという証でした。

古代の人々は重力の作用をまだ理解していませんでしたが、地球が世界の中心にあり、すべての物体は世界の中心に向かって引かれていると考えていたとのこと。

そのため、地球の裏側の人が落っこちてしまうという問題に悩むこともありませんでした。

それどころか、紀元前276年頃にはエラトステネスという人物が、シエネの街では夏至の日に井戸の底まで太陽で照らされるという話しを聞き、それを元に地球の外周距離を25万スタディオンであると計算までしていました。

コロンブスの航海は「地球平面説」の否定や、「新大陸発見」が目的ではなかった!?
(画像=エラトステネスの地球外周の計算方法。井戸を底まで太陽が照らすとき太陽はその直上にある。そこから距離δ離れた別の街に棒を立て、できた影の長さを測れば地球の曲率や外周が計算できる。/Credit:Wkipedia,Erzbischof、『ナゾロジー』より引用)

スタディオンが表す正確な距離は現代に伝わっていませんが、オリンピックで使われる距離基準などを参考に推定すると、25万スタディオンは実際の地球の外周と15%程度しかズレがないだろうと言われています。

コロンブスの目的は?

では、コロンブスは何を目指して航海に出たのでしょうか?

それはインドでした。

食料の保存方法が限られていた15世紀のヨーロッパでは、肉の腐敗臭を消す香辛料は破格の値で取引される高級品でした。黒胡椒一粒は黄金一粒と言われたほどです。

人気RPGドラゴンクエスト3では黒胡椒をポルトガ(架空の国)の王様に渡すと船をくれるというイベントがありました。これはそんな当時の価値観を参考にしたものです。

コロンブスの航海は「地球平面説」の否定や、「新大陸発見」が目的ではなかった!?
(画像=Credit:SQUARE ENIX、『ナゾロジー』より引用)

そんな黒胡椒の原産国はインドでした。そのため当時の人々は最短距離でインドへ渡る航路を死にものぐるいで探し求めていたのです。

最初にインド航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマは、ポルトガルから陸地沿いに船を南に進めアフリカ大陸を回り込んでインドへ向かいました。

しかしこれは非常に時間のかかる航海でした。そこでコロンブスが考えたのは、西へ向かって船を進め地球を一周してインドへ行くという方法だったのです。

現代の人間から見ればそっちの方がはるかに大変だろとわかりますが、当時の人々はコロンブスを含め地球のサイズを過小評価していました。

当時世界は陸地でつながったユーラシア大陸とアフリカ大陸までしか知られておらず、それが世界の全てであろうと考えられていたからです。

これに150年ごろ描かれた緯度や経度まで書き込まれた「プトレマイオス図」が絶大な影響を持っていたから起こったことでしょう。

コロンブスの航海は「地球平面説」の否定や、「新大陸発見」が目的ではなかった!?
(画像=プトレマイオスの世界地図。大航海時代まで正確な世界地図として信頼されていた。/Credit:Wkipedia、『ナゾロジー』より引用)

そのため大航海時代以前の人々が考える地球のサイズは実際のサイズの4分の1程度だったと言われています。