結婚したカップルは、この人こそ「運命の相手」と信じていたはずです。
しかし、共に老いて生涯を添い遂げる幸福なカップルはあまり多くありません。
その理由の1つは、誰かと多くの時間を過ごせば意見が対立する状況を避けることはできないからでしょう。
ここをうまく乗り越える秘訣は何なのでしょう?
今回は、末永く続く「幸せなカップル」に何が重要かを調査した、一風変わった研究を紹介します。
研究の詳細は、2019年8月21日付で、科学雑誌『Family Process』に掲載されています。
長く一緒にいるために大切なこと
公園で仲の良さそうな老夫婦を見ていると、長く良好な夫婦の関係を維持する秘訣はなんだろう? とつい考えてしまいます。
今回の研究は、自称「幸せなカップル」を対象にして、そんな幸福な関係を維持させるための条件が調べられました。
研究者には何か思い悩むところがあったのでしょうか?
ともかく、研究では、結婚してから平均9年の30代後半の57組の夫婦と、結婚生活平均42年という70代前半の老夫婦64組の2つのグループが調査されました。
最初の質問では、彼らにとって一緒にいるために何が大切かが調べられました。
ここであげられた条件は、親密さ、コミュニケーション、経済的な問題がもっとも重要度が高いものとしてあげられましたが、嫉妬、宗教、親族などについては、それほど深刻な問題とはみなされていない傾向がありました。
考え方が対立し、口論する状況は、長い付き合いでは避けられないものです。
ではこうした場合、長く関係が続く夫婦はどうしているのでしょうか?
参加カップルたちは、この場合、一般的に複雑で解決できない問題を議論することは避けて、代わりに比較的簡単に解決できそうな部分にお互い焦点を合わせていることがわかりました。
「永続的で解決が難しい問題に焦点を合わせると、パートナーとの信頼関係は損なわれる恐れがあります」
今回の研究者であるテネシー大学のエイミー・ラウアー氏は、そのように述べます。
幸福なカップルはお互いを信頼しているかどうかというような議論はしない傾向がありますが、家事をどちらがより多くこなしているかなどについてはよく口論になっているといいます。
この家の雑用のバランスを夫婦で取り直すというのも、あまり簡単な問題とは言えないかもしれません。
しかし、抽象的な信頼関係の問題を議論するよりも、ずっと具体的な解決策を提案しやすい話題であることは確かです。
これは片方の配偶者が、特定の家事を多く担当することでバランスを取り直すことが可能です。
全体的には、結婚期間が長いカップルは、議論すること自体、少ない傾向にありました。
けれど、もし口論になるような場合でも、お互いに解決できることに焦点を当て、単に言い合いをするのではなく、解決策を提案することに注力し、生産的な議論をする傾向がありました。
つまり、長続きできる夫婦は、お互いの対立に対して解決策を探すというアプローチをとる傾向があったのです。
本質的に、長く一緒にいられる幸福なカップルは、意識的であるかどうかに関わらず戦略的です。
終わりの見えない風車に挑むような戦いはせず、解決できる戦いを選択するのです。
これは小規模な研究ではありますが、聞いてみると確かにと納得できます。
つまり、カップルが共に長く一緒にいるために大切なことは、お互いに対立するようなことを避けて、我慢しあうことではなく、対立して議論や口論になる場合に、その内容を慎重に選択するということなのです。
「解決する必要がある問題と、今のところ脇に置いておくことができる問題をうまく区別できる能力こそが、長く幸福な関係の鍵の1つでしょう」とバウアー氏は結論づけています。
参考文献
Research shows how happy couples argue — and why this matters a lot
元論文
What are the Marital Problems of Happy Couples? A Multimethod, Two-Sample Investigation
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功