相対速度は中学校で習う簡単な問題ですが、これは単純な思考実験をするのにいい材料です。

映画のアクションシーンでは、主人公と敵が電車の中で銃撃戦を始めたりしますが、このときふと、次の疑問が頭に浮かぶかもしれません。

「電車の中で発射された弾丸は、地上の傍観者からはどのように見えるのか? そして電車の速度がどんどん増したらどうなるのか?」

ここでは、理論物理の入口となるシンプルな思考実験をご紹介します。

目次
本物の電車で拳銃を撃つとどう見える?

本物の電車で拳銃を撃つとどう見える?

弾丸と同じ速度の電車内で拳銃を撃ったら「電車の外に人」にどう見えるか?
(画像=現実の条件で考えると? / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

電車の中で拳銃を撃った時の様子を知るためには、まず、それぞれの速度を知る必要があります。

実際の条件は次のようになります。

  • 電車の速度:60km/h
  • 弾丸の速度:1000km/h

では、動いている電車で進行方向にピストルを撃つとどうなりますか?

答えは非常に単純です。同じ方向なので、それぞれの速度をプラスすればよいのです。

つまり、地上の傍観者からは60+1000=「1060km/h」となり、若干速くなります。

このように、ある運動物体から見た他の運動物体の速度のことを「相対速度」と言います。

とはいえ、動いている電車で撃とうが地上で撃とうがあまり速度の違いは感じないでしょう。

では動いている電車で逆方向に拳銃を撃つとどうなりますか?

今度は方向が逆なので、片方の速度をマイナスにすればよいだけです。

つまり、地上の傍観者からは60-1000=「-940km/h」に見えます。

電車の進行方向とは逆向きに、ほんの少し遅くなった弾丸が進んでいくのです。

こちらもやはり、動いている電車で撃とうが地上で撃とうがあまり速度の違いは分からないでしょう。

「電車の中で発射された弾丸はどう見える?」という疑問の答えは非常にシビアですが、2つの速度が近いケースであればこの物理現象の面白さを知ることができます。

場合によっては、「弾丸が2倍の速度になったり」「止まって見えたり」するのです。

なぜそうなるのか、次項で考え方の基礎を確認しましょう。