2021年を送り2022年を迎える時期となりました。
そこで今回もナゾロジーのマッドサイエンス担当が、2021年に行われたマッドな実験(誉め言葉)を紹介していきます。
コロナ禍が続くなかにあっても、科学者たちによるマッドな実験はたゆむことなく続けられ、数々の衝撃の結果をもたらしました。
・世界を見る目がある人工培養脳
・脳に刺し込んだ電極による精神操作
・幹細胞から卵子や胎児そのものを作成する生命操作
などなど、ワクワクする研究がたくさん発表されています。
倫理の限界に挑戦し、時には踏み越え、マッドな実験は人類に貴重な英知をもたらしてくれました。
それではまず5位からの発表です。
2021年の「マッドな生物実験ランキング」ベスト5!
第5位:「目がある人工脳」を作り出すことに成功、視神経もあり光を検知
第5位にランクインしたのは、目のある人工脳です。
研究者たちが人工的に培養された脳細胞に特定の操作を行うと、レンズや角膜、視神経を備えた1対の目が出現することを発見。
また出現する目の多くは1対(2個)だったとのこと。
さらに出現した目に光を当てると、視神経を通して脳へ電気信号が送られていることがわかりました。
つまり目をはたした人工培養脳は世界を見ていたのです。
第4位:脳に埋め込んだ電極で「うつ状態」から「喜びに満ちた状態」へ感情を移行させることに成功
第4位にランクインしたのは、脳に刺し込んだ電極による精神操作です。
被験者は過去5年、自然に笑った経験がないほど酷いうつ状態にありました。
そこで研究者たちは被験者の脳の数十カ所に電極を刺し込んで気分の良くなるところを探しました。
結果、特定の脳領域を刺激されると、突然心の底からこみ上げる歓喜を感じ「クスクス」と笑みが絶えない状態に移行した、とのこと。
さらに研究では、電気刺激を自動化する制御チップを電極と一緒に被験者の脳にうめこみました。
この制御チップは、うつの兆候を感知すると、喜びの回路を刺激して、被験者がうつ状態になるのを防ぐ機能を搭載しています。
電気回路によって構成される脳の不調に対しては、電気的な刺激が大きな効果をもたらすようです。
第3位:人工培養脳にテニスゲームを教えると5分で理解し遊び始めると判明!
第3位にランクインしたのは、テニスゲームで遊ぶ人工培養脳です。
研究者たちが人工培養した脳にボールの位置とボールを跳ね返す板の動かし方を教えたところ、人工培養脳は誰の指示も、報酬系の刺激もないままテニスゲームで遊び始めたのです。
研究者たちは「人工培養脳は自分のことをボールを跳ね返す板と考えている」と述べ映画マトリックスのように仮想世界で遊んでいると考えられています。
人工培養脳にスキルを教えることができるなら、将来的には単純なテニスゲームだけでなく、人間の言語や会話能力など、より複雑な能力を習得できる可能性もあります。
第2位:人工子宮でマウスの受精卵を「胎児」まで成長させることに成功
第2位にランクインしたのは「人工子宮技術」のブレイクスルーです。
人工子宮というと、よくSF世界で培養ポッドに浮かぶ胎児を思い浮かべる人が多いかと思いますが……この研究によってSFの風景は現実のものになりました。
新たに開発された人工子宮は、栄養と酸素を供給する仕組みがあり、マウス受精卵を放り込むと、胎児の段階にまで成長させることが可能です。
論文に付随する動画では、かなり大きくなったマウスの胎児が、人工子宮の内部に浮かんで心臓を鼓動させている様子がみられます。
しかしSF作家にとっては、厄介な問題になるかもしれません。
人工子宮はもう、現実のサイエンスとなり、フィクションではなくなってしまったからです。
第1位:幹細胞から「脳や心臓をもつ擬似的な胚」を作ることに成功
第1位にランクインしたのは、生命創造技術です。
研究者たちが万能細胞の万能性を限界まで引き出した結果、万能細胞から人工的なマウス胚を創造し、さらに培養することで脳や心臓、血管、筋肉を備えた胎児の段階に成長させることに成功した、とのこと。
これまでも同様の手法で疑似的なヒト胚やマウス胚を創造する試みが行われていましたが、脳をはじめとした複数の臓器をもつ胎児を造るまでには至っていませんでした。
研究者たちは、これら人工胎児を成長させることができれば、将来の「移植用臓器牧場」としてを大量生産できると考えています。
精子も卵子も子宮すらも必要とせず、培養細胞から命がつくられる日がくるのかもしれません。
参考文献
ナゾロジー
提供元・ナゾロジー
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