自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害を抱えている子供は、「物事を段取りよくこなす」のが苦手です。

発達障害ではなくても、段取りして実行するのが不得意な子もいるでしょう。

最近、カナダ・マックマスター大学の精神医学・行動神経科学科に所属するクリス・アンドリュース氏ら研究チームは、複雑な家庭環境が子供の「段取りよくこなす能力」の発達を妨げると発表しました。

その研究によると、「離婚や再婚、引っ越し、母親の抑うつ症状などが原因かもしれない」とのこと。

研究の詳細は、9月22日付の学術誌『BMC Psychology』に掲載されました。

目次

段取りよくこなす能力「実行機能」が発達しないとどうなる?
複雑な家庭環境は子供の実行機能の発達を弱くする

段取りよくこなす能力「実行機能」が発達しないとどうなる?

複雑で不安定な家庭環境が子どもの「物事を段取りよくこなす能力」の発達を妨げる
(画像=段取りよくこなせない子供たち / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用tos_101788570_S-900x600.jpg)

人間には「実行機能」と呼ばれる思考や行動を制御する認知システムが備わっています。

これは簡単に言うと「物事を段取りよくこなす能力」のことであり、主に児童期から思春期にかけて発達し、成人期にはピークに達します。

小さい子供が新しい習慣やルールにすぐに順応できないのは、実行機能がまだ発達段階であり、新しくやるべきことを失念したり、順序だって行動に移したりできないからです。

ちなみに、ASDやADHDなどの発達障害を抱えている人も、実行機能が発達しておらず、物事を段取りよくこなせません。

1つのことに集中しすぎて時間をかけすぎたり、次のことを考えながら作業できなかったりするのです。

また注意散漫で今集中すべきことを行えず、次々と他のことをやり始めるケースもあるでしょう。

そして発達障害でないとしても、人によって実行機能の発達が弱い場合があります。

もしかしたら実行機能が大きく発達する時期、つまり幼児期や児童期に何か原因があるのかもしれません。

そこで研究チームは、子供の実行機能の発達と家庭環境にどのような関係があるか調べることにしました。