ヘビの移動方式は、過去100年の間、わずか4タイプに限定されていました(後述します)。
ところが、コロラド州立大学(アメリカ)の研究により、まったく新しい第5の移動法が発見されたのです。
その方法は、ヘビが輪っか状になって円柱をはい上るもので、生物学的に確認されたことがありませんでした。
その姿から「ラッソ・ロコモーション(投げ縄移動)」と命名されています。
研究は、1月11日付けで『Current Biology』に掲載されました。
ヘビにとっても難度の高い方法だったと判明
ヘビの移動法として公式に確認されているのは、直線・横ばい・蛇行・コンセルティーナの4つです。
図の下から直線〜コンセルティーナとなります。
中には「既存の分類はもっと多様に分けられる」という専門家もいますが、基本的にはこの4つです。
しかし今回、グアム島での野生動物の保護活動をしていたところ、「ミナミオオガシラ(Brown tree snake)」というヘビに奇妙な動きが発見されました。
なんと円柱に自らを巻きつけた状態で上方向にクライミングしていたのです。
ミナミオオガシラは、オーストラリアやパプアニューギニアを原産地とし、グアムへは20世紀半ばに偶然もち込まれました。
それ以来、地元の鳥類を食い荒らす外来種として危険視されています。
ラッソ・ロコモーションは、研究チームが保護用の鳥かごの映像を観察している際に見つかりました。
同チームのトーマス・サイバート氏は「4時間ほど映像を見ていたら突然、鳥かごの下の円柱を輪っか状になって上るヘビが現れたのです。
この動きはチームの誰も見たことがありませんでした」と話します。
それもそのはず、これは科学界にまだ知られていないヘビの移動法だったのです。
ヘビは円柱に身体を巻きつけ、胴の中ほどを尻尾でロックし、頭は進行方向に向けます。
これにより、凹凸が少なく、表面のツルツルした円柱を登ることが可能です。
ところが観察を続けると、ラッソ・ロコモーションはヘビに多くの労力を課す難度の高い方法であることがわかってきました。
研究主任のジュリー・サヴィッジ氏は「この方法では、ヘビの移動速度が極端に遅く、頻繁に一時停止を繰り返し、呼吸も荒くなっていました。
体力的にかなり限界に達していると見られる」と説明します。
ラッソ・ロコモーションは、ヘビにとってできれば使いたくない最終奥義なのかもしれません。
参考文献
sciencealert
scitechdaily
zmescience
提供元・ナゾロジー
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