太陽のような軽い星は、最終的に外層を失ってコンパクトな白色矮星という天体に変わります。
通常、白色矮星は地球くらいのサイズに太陽ほどの質量があると説明されますが、新たな研究はもっと極端な天体を発見しました。
米カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームは、月とほぼ同サイズでありながら、太陽の1.35倍もの質量を持った白色矮星を発見したと報告しています。
これは観測史上もっとも小さい白色矮星であり、もっとも重い白色矮星でもあります。
研究の詳細は、6月30日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。
目次
月サイズなのに太陽より重い白色矮星
重いほど小さくなる白色矮星
白色矮星の限界質量「チャンドラセカール限界」とは?
月サイズなのに太陽より重い白色矮星
今回発見されたのは「ZTF J1901+1458」と名付けられた、非常に小さな白色矮星です。
そのサイズは直径約4,300キロメートルで、月の直径は約3,500キロメートルより少し大きい程度です。
それでありながら、重さは太陽の1.35倍あります。
月と太陽のサイズ差がどれほどか比べると、こんな感じです。
こうして太比べると、もはや月なんてただの点ですね。
これを見ると月のサイズに太陽以上の質量詰まっているという「ZTF J1901+1458」がいかに凄まじい天体か理解できます。
では、この白色矮星は、なぜそこまで圧縮されてしまったのでしょうか?
実のところ白色矮星が非常にコンパクトで重いという事実は、さほど驚くべきことではありません。
直感に逆らうかもしれませんが、白色矮星という天体は、重くなるほど小さくなってしまう星なのです。
ここには白色矮星という星の形成メカニズムが関係していきます。
重いほど小さくなる白色矮星
白色矮星というのは、太陽質量の8倍未満という軽い恒星が死んだとき形成される天体です。
恒星は、通常中心の核が自重の圧縮によって起こす核融合でその姿を維持しています。
しかし、中心核で燃料の水素を使い切ってしまうと、自重を支えきれなくなって収縮します。
収縮すると今度は核の外側の外層で水素の核融合が始まり、温度が高くなって外層が膨張し始めます。
この状態が赤色巨星と呼ばれるものです。
太陽は50億年後にこうした状態に陥ると予想されています。
よく太陽は死ぬ間際に大きく膨らんで地球を飲み込んでしまうといわれますが、それはこうした現象によって起きるのです。
核融合の燃料を失って大きく膨れた恒星は、その後、重さによって大きく運命を分岐させていきます。
太陽質量の8倍より重い恒星は、この後も中心核の核融合が進みどんどん重い元素を生んでいき、最終的には超新星爆発を起こして中性子星かブラックホールに変わります。
しかし、太陽質量の8倍未満の軽い恒星は、膨張した外層をつなぎとめておけずに失ってしまい、核だけが残った白色矮星に変わるのです。
白色矮星とはいわば星の燃えカスの灰のような存在なのです。
しかし、それは非常にコンパクトに圧縮された高密度の核なので、地球ほどのサイズに太陽と同程度の質量があるのです。
これが一般的な白色矮星です。
宇宙全体の恒星の約97%は、この白色矮星になると考えられています。
もっともありふれた星の最後が白色矮星なのです。
そして、白色矮星は自重で圧縮されながら、それに抵抗する力を失った天体であるため、重ければ重いほど、小さく圧縮されてしまうのです。
しかし、それなら広い宇宙で今回と同程度の発見はもっとあって良さそうに感じます。
なぜ今まで月サイズの白色矮星は見つかっていなかったのでしょうか?
それは白色矮星には限界質量が存在し、それより重くなると爆発してしまうという性質があるためです。