バーや居酒屋で飲んだり、イベントや映画に行ったり、観劇したりジムで体を鍛えたり。こうした楽しく充実した時間を「夜」に持ち、アクティブに楽しんでいる人も少なくないだろう。実は今、国も「ナイトタイムエコノミー」の活性化を目指している。

ナイトタイムエコノミーとは何か、その活性化により日本の都市の夜はどのように変わるのか。

ナイトタイムエコノミーとは 日本の課題

ナイトタイムエコノミーとは、夜から翌朝までの経済活動の総称。それには文化コンテンツ、ショッピング、エンターテインメント、スポーツ、交通をはじめとするインフラ、夜間医療などのサービスも含まれる。ライブハウスやクラブ、劇場、映画館、フィットネス、スポーツバー、ゲームセンター、スパ、美術館、博物館などもその対象となる。

2019年ラグビーワールドカップや2020年東京オリンピックを控え、訪日外国人旅行者が増えているが、「日本の夜は楽しめるところが少ない」という声が聞かれる。電車が夜遅くまで動いていないことや、夜のコンサートやスポーツのイベントなども少ないという声がある。

ナイトタイムエコノミーを活性化するための大きな課題が、交通の夜間運行だ。東京のJRと地下鉄は1時から5時の間はほとんど運行していない。朝まで運行するためにはコスト負担が大きく、夜間運行の実現は簡単ではないだろう。

観光庁の資料によると、2017年の訪日外国人旅行者消費額は4兆円を超えている。その中で最も比率が高いのが買物代で37.1%。娯楽サービス費はわずか3.3%にすぎない。ナイトタイムエコノミーでの選択肢が少ないことが、娯楽サービス費の割合が低い一因になっているようだ。

海外のナイトタイムエコノミー

ナイトタイムエコノミーが発展している都市の一つは、イギリスのロンドンだ。ミュージカルの開演が夜8時など遅めであり、美術館でも深夜近くまでイベントが行われている。ロンドンのナイトタイムエコノミーを支えているのが、地下鉄の夜通し運行である。2016年より金曜と土曜は朝まで運行しており、ナイトタイムエコノミーの活性化に繋がっている。その結果、ロンドンの夜の経済規模が拡大し、新たな雇用も生んでいるという。

イギリスのナイトタイムエコノミーも、初めから成功したわけではなかった。治安の悪化やゴミ放置などの不安の声が市民から挙がっていた。そこで対策として「パープルフラッグ」という認定制度がつくられた。パープルフラッグとは、安心して夜遊びできる街として国が認定する制度だ。治安の改善や飲み過ぎた人の健康対策などをクリアし、パープルフラッグとして認定されることで、夜の街が明るく賑やかになった。

日本のナイトタイムエコノミーの動き

日本のナイトタイムエコノミー活性化のため、2017年にナイトタイムエコノミー議連(時間市場創出推進議員連盟)が発足した。その中で、日本版パープルフラッグやナイトメイヤーなどが提言されている。ナイトメイヤーとは、ナイトタイムエコノミーを推進する象徴的な人物・組織のことであり、ヨーロッパの主要都市に広まっている制度だ。

また、カジノを含む統合型リゾート(IR)の計画も推進されている。IRはカジノやホテル、劇場、ショッピングモールなどの様々な施設を擁する。日本のIRが実現すれば、ナイトタイムエコノミーを大きく活性化できることになる。

このような動きにより、東京をはじめとした都市にてコンサートやスポーツイベント、美術館など様々なスポットが夜遅くまでオープンすれば、訪日外国人が日本のナイトタイムを一層楽しめるようになる。さらに日本在住の外国人や日本人も夜の活動を楽しむことができ、ナイトタイムの消費が増え、雇用増加にもつながるだろう。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)
 

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