イギリスとフランスの間に浮かぶ英国王室領・ガーンジー島。
この島で2017年、とても奇妙な考古学的発見がなされました。
島の南西部シャペル・ドム・フエ(Chapelle Dom Hue)にある中世時代の修道士の隠遁所にて、ある一体の遺骨が墓地から出土。
それは人骨ではなく、なんと「イルカの骨」だったのです。
「35年もの間、発掘に携わってきましたが、こんなものは見たことがない」
遺骨の発見者で、オックスフォード大学(Oxford University・英)、ガーンジー博物館・美術館の考古学者であるフィリップ・ド・ジャージー(Philip de Jersey)氏は語ります。
イルカの骨が手厚く埋葬された理由はなんなのでしょうか。
イルカ埋葬に関する「2つの仮説」
墓には、イルカの頭骨がきれいに残っており、小さな鼻腔の穴も2つ見えます。
上部に開いた直径3センチほどの穴は、おそらく腹をすかせたネズミがかじって開けたものと考えられています。
両脇にあるのは、肩甲骨の骨です。
埋葬の理由はいまだ定かでありませんが、現時点で2つの説が挙げられています。
一つ目は、宗教的な意味に沿った埋葬です。
シャペル・ドム・フエの隠遁所は14世紀ごろのもので、中世の修道士たちが、頻繁に訪れていたと考えられています。
そのことから、イルカの骨の埋葬は、儀式的な埋葬だったとする説が有力です。
二つ目は、修道士がイルカを食べて廃棄したという説です。
中世当時はイルカがご馳走として食されていたらしく、修道士が食べていた可能性もあります。
満潮時にできる海辺の潮だまりにイルカが取り残され、潮が引いたタイミングで修道士が捕まえたのかもしれません。
しかし、単なる食料であったなら、目の前の海に捨てればいい話。
これについて、ド・ジャージー氏は「イルカの肉を後で食べるために保存しようとしたのかもしれない」と言います。
それでも、保存肉なら墓地に埋める必要はないでしょうから、やはり真相は分かりません。
ド・ジャージー氏は、35年におよぶ考古学者としてのキャリアの中で、これほど奇妙な謎はないと話します。
真相は謎のままですが、イルカは人懐っこい生き物です。
俗世を離れて隠遁していた修道士は、ひょっとしたら頻繁に沿岸で顔を見せるイルカに心を和ませていたのかもしれません。
そんなイルカがある日、浜に打ち上げられて死んでいるのを見つけたら、手厚く葬ってやりたくなるかもしれません。
もちろん、これは根拠のない想像ですが、考古学の未解決問題にはいろいろと空想を当てはめる楽しさがあります。
みなさんは、何の目的でイルカが埋葬されたと考えるでしょうか。
参考文献
Archaeologists Found a Truly Bizarre Burial in an Isolated Medieval Graveyard
Guernsey’s medieval ‘Porpoise grave’ remains a mystery
提供元・ナゾロジー
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