グローバル規模のメガサプライヤー、コンチネンタル・オートモーティブは2011年から定期的に主要市場で、ドライバーの運転に関する意識調査「モビリティ・スタディ」を行なっている。特に重要なマーケットを対象に調査を行なっており、調査国は日本、アメリカ、中国、ドイツが選ばれている。

国ごとでドライバーの意識は大きく違う

今回の調査は2018年夏に行なわれ、従来と同様に専門的な調査会社がインタビューや調査を担当し、日本、中国、アメリカはWEBでのアンケート、ドイツでは電話とインタビューにより実施されている。また調査対象者の数は各国とも1050人で、十分に信頼できる母数を確保している。

また調査対象者は16歳以上で、少なくとも1ヶ月以内にクルマを運転した人と、運転をしなかった人のグループに分類されている。では早速調査の結果を見てみよう。
 

AUTO PROVE
(画像=AUTO PROVEより引用)

運転に自信がない日本人は異常だ

最初の質問は、「自分は運転がうまいと思っているか?」という問だ。
ドイツでは66%、アメリカでは86%、中国では63%がYESと答えているが、なんと日本だけは25%に過ぎない。
2問目は「クルマの運転は楽しいか?」という問いだ。
ドイツ:64%、アメリカ:62%、中国:69%がYESだが、日本:43%と低めになっている。

3問目は、「道路が混雑、渋滞している場合は運転にストレスを感じるか?」という質問。
ドイツ:67%、アメリカ:53%、中国:40%、日本:64%で、この点に関しては中国以外は似た傾向だ。ただ中国人はストレス耐性が強いのか、あるいは渋滞時でも運転時に心の余裕があるのか?

この1問目~3問目を、対象国ごとに前回の調査(2013年)データと今回のデータの比較も行なわれている。ドイツ、アメリカに関しては2回のデータで大差がなく、中国は5年間で第2問の運転を楽しいと感じる割合いが48%から69%へと大幅に上昇。
しかし日本は、1問目の「自分は運転が上手だと思うか?」は53%から25%に急降下。
「運転を楽しいと感じるか?」は57%から43%と下がり、3問目の渋滞でのストレスは50%から64%へとアップしているなど、他の国とは異なる変化を示している。

日本のドライバーの気持ちを簡潔に表すなら、「渋滞に疲れ、運転が楽しいわけでもない」といったところか。ドライバーの3分の2が渋滞した道路にストレスを感じており、運転が楽しいと答えた回答者は全回答者の半分にも満たず、運転技術に自信がある、もしくはとても自信があると答えたのはわずか4分の1というのが現実なのだ。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

つまり日本は運転に対して自信を失っており、運転の楽しさを感じる気持ちも薄れつつある。やはり交通環境が悪化していることへの反映か、あるいは社会環境が変化しているのだろうか? 運転に楽しさを感じるかは別にしても、「運転に自信がある」と答えた人が他国に比べて突出して少ない、つまり運転に自信がないという点は、異常ともいえる状態だ。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

日本人には理解されない運転の楽しさ

4問目は、「可能なら毎日でもクルマを運転するか?」という問に対しては、
ドイツ:41%、アメリカ:46%、中国:50%、日本:33%がYESだ。
ドイツは回答した男性の87%は実際に毎日運転をしているという。

5問目は、「もし可能なら、いつでもどこへでもマイカーで行きたいか?」という問いには、
ドイツ:73%、アメリカ:80%、中国:71%、日本:62%がYES。
6問目は「市街地中心部ではクルマの運転が禁止される時代が来ると思うか?」で、
ドイツ:44%、アメリカ:20%、中国:55%、日本:8%で、国ごとに大きく違っている。

なお1~6問目はすべて1ヶ月以内に運転したドライバーのみを対象とした回答だ。

運転が楽しくない日本人

さらに各国で、クルマを日常的に運転する人と、1ヶ月以上運転していないノンドライバーとのデータ比較を見てみると、「運転が楽しいか」については、
ドイツ:ドライバーは64%、ノンドライバーは43%、アメリカ:ドライバーは61%、ノンドライバーは33%、中国:ドライバーは70%、ノンドライバーは30%、日本:ドライバーは44%、ノンドライバーは9%で、
日本だけはノンドライバーには運転の楽しさがほとんど理解されていないことがわかる。

同じ比較を「渋滞でストレスを感じるか」の問で比較してみると、
ドイツ、アメリカ、中国、日本でドライバーとノンドライバーがYESと答えた比率は、各国とも同様の傾向で、ノンドライバーもドライバーと同レベルに近いストレスを感じている。
また将来の市街地中心部へのクルマの乗り入れ規制の問についても、ドライバーが感じている予想と、ノンドライバーの予想はほぼ一致している。

自動運転に対する期待感

次は、ドライバーを対象とした自動運転に関する質問だ。「自動運転は進化か?」に対して
ドイツ:53%、アメリカ:50%(若年ドライバーの殆どはYES))、中国:89%、日本:68%、
「5~10年後には自動運転の時代になると思うか?」については、ドイツ:40%(若年ドライバーのほとんどは否定した)、中国:75%、日本:58%となった。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

自動運転を世界は望んでない

「自動運転技術に不安を感じるか?」については、
ドイツ:62%、アメリカ:77%、中国:28%、日本:56%で、意外にもドイツやアメリカではまだ自動運転に対して懐疑的で、中国だけは自動運転に対する期待が極めて大きいことがわかる。

「自動運転の実現を待ち望んでいるか?は、
ドイツ:17%(女性より男性の方が多い)、アメリカ:27%(若年ドライバーが大半)、中国:72%、日本;47%となっている。ドイツやアメリカでは自動運転の実現は案外期待されておらず、中国だけは突出して期待感が強いことがわかる。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

「自動運転技術の信頼性に不安を感じるか?」については、
ドイツ:57%、アメリカ:77%、中国:40%、日本:52%となっている。
こうしたデータを見ると、高度運転支援システムや自動運転技術は、中国、日本の順で普及し、ドイツやアメリカの一般ドライバーは必ずしも自動運転技術を待望しているわけではないことがわかる。

ドイツ、アメリカで自動運転技術に対する期待が低い理由は、運転する楽しさが失われることを恐れていること、自動運転を必要とする必然性が低いと感じていることだと思われる。つまりドイツ(ヨーロッパ)とアメリカはクルマに対して保守的であり、同時に運転する時の交通環境が良好ということだろう。

自動運転技術には懐疑的か

これに対して中国では、自動運転技術に対する期待感は従来から高かったが、今回の調査では以前よりさらに期待感が高まっている。それは、沿海地域の都市部で交通環境が悪化していることも想像されるが、それ以上に先進技術に対する信頼感、期待感が強いのだと考えられる。

またアメリカではドイツ以上に、自動運転技術に対して信頼感が薄く、懐疑的であることも特長になっている。その理由は、すでにレベル2、レベル3の運転で事故が発生していることの影響かもしれない。

ドイツでは、ドライバーは自動運転に対して懐疑的で慎重だが、ノンドライバーはドライバーよりは自動運転に対して期待を抱いていることも明らかになった。

交通事故は激減しているが

各国のドライバーの意識を総合して考えると、ドライバーは自動運転に対して相反する感情を持っているといえる。ドライバーのおよそ3分の2が渋滞時のストレスを伴う運転状況や、高速道路上の工事区間通過時など道幅が狭い区間を通過する時など、電子制御で自動運転が行なわれることを望んでいる一方、自動運転などのテクノロジーの技術的信頼性に懸念を示す傾向は過去5年で48%から57%に増加している。

調査対象のドライバーのほぼ3分の2、特にアメリカ、ドイツなどでは自動運転への懸念の声が集まり、5年前の前回調査時の約2倍に増えている。これはレベル2のドライバー支援システムが普及したり、自動運転と呼ばれる技術の概要がはっきりしてきたことで、より懸念が大きくなっていることを示している。
 

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(画像=AUTO PROVEより引用)

コンチネンタルのエルマー・デゲンハートCEOは、「将来のモビリティに向けたテクノロジーへの信頼性がいかに重要かということを示しています。新たな技術は責任が明確なしっかりとしたやり方で現実に導入されなければなりません。それらの技術は安全で、ロバスト性があり、信頼性が高いものでなくてはなりません」と語っている。

さらに「業界全体として、自動運転の技術はそれが単独で開発されているのではなく、時間をかけてステップを踏みながら開発されているということをきちんと説明できなくてはならないと考えています。一般のドライバーの多くの方々は、緊急ブレーキアシストや死角警報システム、レーンキーピングアシストといった既に利用可能なドライバー支援システム(ADAS)によって、交通事故の数が劇的に減少しているということに気付いていないと思われます。ADASなどの段階を経て自動運転技術が実現するという理解があがれば、技術への信頼性も増すでしょう」と述べている。

(※この記事は2019年4月に有料配信したものを無料公開したものです)

提供元・AUTO PROVE

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