IPOの当選確率を上げる7つの方法とは?おすすめの証券会社も紹介
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IPO投資は投資初心者でも儲かりやすいと言われている、人気の投資手法です。実際に2021年の実績では、9割以上の初値が公募価格を上回っています。中には5倍近く値上がりした銘柄もあります。一方で、IPOに応募しても、倍率が高く当選しづらいという現実があります。この記事では、IPOの当選確率を上げる7つの方法と、IPO投資に適したおすすめの証券会社を紹介します。投資初心者から中級者に向けて、IPO投資のポイントを解説します。

IPOが当たりにくい理由とは?

IPOの当たりにくい理由は「需要と供給のバランスが取れていない」という問題が主な原因です。

IPOは比較的儲かりやすい投資手法であるので、IPO銘柄を購入したいという人は非常に多くいます。一方で新規上場の際に公募される株数には限りがあるため、当選株数よりも多くの申し込みが入り当選確率は下がります。

当たり前のような話ですが、IPOではこの基本的な考え方が非常に重要です。需要と供給のバランスが取れておらず、IPOに当選しない人が多くいれば、上場時に市場で購入する人が増え、初値は大きく上がります。

仮に需要と供給のバランスが取れてしまえば、IPOの当選確率は上がるものの、市場で買いたいという人は少なくなり、IPO投資自体の魅力が下がってしまいます。IPOの当選確率が低いという状況はIPO投資にチャンスがあるということの裏返しです。

そもそもIPOとは?

IPOは「Initial Public Offering」の略であり、新規株式公開とも呼ばれます。未上場企業が株式を証券取引所に上場することで、多くの投資家が市場で株式を売買できるようになります。

上場にあたって、公募増資や売り出しが行われることが一般的です。証券会社を通じてこれらの公募増資株や売り出し株の配分を受けた場合には、上場時の株主となれるので、儲かる可能性の高い初値での売却(初値売り)を行うことができます。この一連の流れがIPO投資と呼ばれるものです。

IPO投資で初値売りをした場合の勝率は非常に高く、2021年1月1日から12月10日までに上場した96銘柄のうち、初値が公募価格を上回ったのは86銘柄に上り、9割近い勝率を誇っています。

最も値上がりした銘柄は2021年2月25日に上場したアピリッツ <4174> で、公募価格1180円に対して、初値は5600円と実に4.7倍の値上がりとなりました。
出典:日本経済新聞(2021年2月26日付)

IPO投資は上場前に証券会社から株式の配分を受ける必要がありますが、IPOは人気が高いので、株式の配分は抽選などの方法になります。抽選に当たって上場日の株主となった人のみが参加できるのがIPO投資です。ちなみにIPO銘柄を上場後に市場で購入することを「セカンダリー投資」と呼びます。

IPOの当選確率はどれくらい?

IPOの当選確率は証券会社へのIPO申し込み件数が公表されていないため、正確な数値は分かりません。小型の人気銘柄などでは当選確率は1%未満となると言われています。配分される株数の多い大型株などでは当選確率は上がりますが、それでも5~10%程度が目安です。ちなみに2021年の年末ジャンボ宝くじの6等(3,000円)の当選確率が1%です。
出典:年末ジャンボ宝くじ公式サイト

配分株数の多い主幹事証券で申し込みを行った方が当選確率は高くなります。また証券会社ごとに配分方針も異なるので、IPOの当選確率は申し込み状況によっても変動します。

・なぜIPOの当選確率は低いのか?
IPOの当選確率が低いのは需要と供給のバランスが取れていないからですが、この理由をもう少し深堀りすると、次の4点が根底にあります。

① リスクが非常に低い
② 初値売りでも大きく儲けることができる可能性がある
③ 公募割れしそうであれば買わなくてもよい
④ 抽選に外れた場合、資金はすぐに戻ってくる

IPOはリスクが低い投資手法と言えます。2021年1月1日から12月10日までに上場した96銘柄において、初値売りの勝率は9割を誇っています。また勝率の高さだけでなく大きな儲けが期待できる点も魅力です。2021年1月1日から12月10日までに上場した96銘柄のうち、23銘柄が公募価格の2倍以上の初値をつけています。

IPOは当選した場合でも購入を見送ることもできます。相場状況が悪かったり、需要が少なく公募価格が仮条件の下限で決まるなど儲からないと判断したりすれば、購入を見送ることもできるので、とりあえず申し込みをして当選してから判断しようという人もいます。さらに、抽選に外れた場合には原則として資金はすぐに返還されるので、申し込みのハードルも低いです。

つまり、IPOはローリスクハイリターンの側面がある投資手法であり、申し込みも手軽にできるので応募が多く、結果、当選確率は低くなるというわけです。

IPO抽選の種類

IPO投資を行うためには証券会社からIPO株を配分される必要があります。このIPO株の配分ルールは証券会社によって様々で、IPOの当選確率を上げるためには証券会社ごとのIPOの配分ルールを知る必要があります。

主にIPO株の配分方法は3つの抽選パターンと店頭配分の合計4種類に分けることができます。証券会社はこれら4種類の配分方法のいずれか、または複数を組み合わせてIPO株の配分を行っています。

IPO株の配分方法

  • 完全平等抽選
  • 平等抽選(1口1票制度)
  • 優遇抽選
  • 店頭配分

完全平等抽選

完全平等抽選とはIPOに応募した投資家が全て平等に扱われる抽選方法です。応募者は1人につき1票が与えられるので、1口の応募でも500口の応募でも当選確率は全く変わりません。また抽選方法もコンピュータによる自動抽選が行われているため、証券会社の意図も入り込みません。

完全平等抽選でIPO株に当選する要素は基本的に運のみです。もちろん多くの証券会社では事前入金が要求されるので、そうした最低限のルールを満たす必要はありますが、資金力の差が当選確率を左右しない抽選方法です。運による当選が狙えるので、個人投資家にはおすすめの配分方法と言えるでしょう。

完全平等抽選を行っている主な証券会社は次の通りです。

  • マネックス証券
  • SMBC日興証券
  • 楽天証券
  • 松井証券
  • auカブコム証券
  • 岡三オンライン証券
  • SBIネオトレード証券
  • 野村證券
  • 大和証券
  • みずほ証券
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

出典:マネックス証券SMBC日興証券楽天証券松井証券auカブコム証券岡三オンライン証券SBIネオトレード証券野村證券大和証券みずほ証券三菱UFJモルガン・スタンレー証券

証券会社によって完全平等抽選に回される割合に差異がありますが、これらの証券会社は配分されるIPO株の少なくとも一部は完全平等抽選に回されるので、申し込みさえ行えば誰にでもチャンスがあります。

この中でもおすすめはマネックス証券とSMBC日興証券です。マネックス証券は100%完全平等抽選を行っているので、マネックス証券のIPO株は原則として運のみで全て配分されます。SMBC日興証券は全体の10%が完全平等抽選に回されます。主幹事証券を担うことも多いので、10%といえども馬鹿にできません。

ちなみに楽天証券などは、明確に完全平等抽選とは謳っていません。ただし、ほとんどの銘柄で申し込み口数を1口に制限している証券会社は、実質的に完全平等抽選と同じなので、上記に含めて記載しています。

平等抽選(1口1票制度)

平等抽選とはIPO株1口の申し込みに対して1票が与えられる抽選方法です。完全平等抽選が資金力によらずに1人につき1票が与えられる制度であるのに対して、平等抽選では申し込み1口につき1票が与えられるので、資金力次第で当選確率を上げることができます。抽選方法はコンピュータによる自動抽選のため、証券会社の意図は入り込みません。

平等抽選を採用している主な証券会社はSBI証券です。SBI証券でIPOに申し込む場合には、できるだけ多くの資金を用意して申し込みの口数を増やすことで当選確率を上げることができます。
出典:SBI証券『募集等に係る株券等の顧客への配分に係る基本方針』

優遇抽選

優遇抽選とはIPOの抽選にあたって、証券会社が定めた条件を満たした人の当選確率が上がるなど平等ではない抽選方法です。例えば、預かり資産が一定額以上の人や直近の取引金額が一定額以上の人という条件が設定され、その条件を満たす人だけで抽選が行われるものが代表的です。

優遇抽選を行っている主な証券会社は次のとおりです。

  • SMBC日興証券
  • 岡三オンライン証券
  • SBIネオトレード証券
  • SBI証券(IPOチャレンジポイント)

出典:SMBC日興証券岡三オンライン証券SBIネオトレード証券SBI証券

SMBC日興証券では、配分されるIPO株全体の最大5%で優遇抽選が実施されます。SMBC日興証券が設けた基準でステージが分けられ、ステージごとに当選確率が変動するステージ別抽選が行われます。当然、ステージ上位の人の方が当選確率は高くなるのでVIP客が優遇される抽選方法です。SMBC日興証券では、この優遇抽選とは別に完全平等抽選も行っています。
出典:SMBC日興証券『オンライントレード新規公開株式(IPO)の特長』

岡三オンライン証券やSBIネオトレード証券も独自の基準でステージが分けられ、基準を満たす人のみが参加できるステージ別抽選が行われます。ステージ別抽選で落選した人も別で実施する完全平等抽選に参加できるので、ステージ上位の人は2回抽選のチャンスがあります。
出典:岡三オンライン証券『募集等に係る株券等の顧客への配分に関する基本方針』SBIネオトレード証券『IPO(新規公開株)に関するよくあるご質問』

SBI証券の優遇抽選は少し特殊です。「IPOチャレンジポイント」というルールでIPOの抽選に外れた場合に付与されるポイントを持っていれば、次回以降の当選確率が上がります。優遇される基準が預かり資産や取引金額ではなく、IPOに落選した回数という点で特殊な制度であり、個人投資家の強い味方となります。
出典:SBI証券『IPOチャレンジポイント』

・SBI証券のIPOチャレンジポイントとは?
IPOチャレンジポイントは、簡単に言えばIPOの抽選に外れた回数だけ次回以降の当選確率が上がる仕組みです。SBI証券でIPOの抽選に外れた場合にポイントが付与され、次回以降のIPO申込みの際にポイントを使用できます。

SBI証券では個人投資家に配分するIPO株の30%がIPOチャレンジポイントを使った人向けの枠となり、IPOチャレンジポイントが多い人から順にIPO銘柄が配分されていきます。

IPOチャレンジポイントを使用しても当選しなかった場合には使用したポイントが戻ってくるので、抽選に外れた分だけポイントが加算されていき、いつかはIPOに当選できるという仕組みです。資金力で勝負ができない個人投資家でもいつかはIPOに当選することができるので、IPOを狙うのであれば積極的に活用するべきです。

店頭配分

店頭配分はIPO株の配分を証券会社の裁量で決める仕組みです。IPO株は儲かる可能性が高いので、証券会社は預かり資産や取引金額の大きいお得意様へ優先的に配分する傾向があります。店頭配分の場合でも、投資家は基本的に需要申告というIPO株式の申し込みは行う必要があります。

店頭配分は基本的に以下のような店舗を持つ証券会社で多く行われています。

  • 野村證券
  • 大和証券
  • SMBC日興証券

出典:野村證券大和証券SMBC日興証券

これらの店舗型証券会社ではIPO株の大部分は店頭配分にあてられます。店頭配分を受ける場合には、こうした証券会社で担当者付きの口座を保有しておくことが重要です。

証券会社は今後の取引が期待できそうな顧客に優先的に配分するケースが多いので、預かり資産や取引金額を増やす方が望ましいでしょう。また、店頭配分を受けた場合、担当者から投資信託などの売り込みを多く受ける可能性もあります。

ただし、店舗型証券会社の顧客にはスーパーVIPも多いので、店頭配分を多く受けることができるようになるのは非常にハードルが高いです。個人投資家で店頭配分を期待するのはあまりおすすめできません。

IPOの当選確率を上げる7つの方法

当選確率の低いIPOですが、資金力に頼らずに当選確率を上げる方法はあります。次の7つの方法を実践してみましょう。

  • なるべく多くの証券会社から応募する
  • 事前入金が不要な証券口座を開く
  • 家族の証券口座を開く
  • IPO取扱銘柄数の多い証券会社を選ぶ
  • ネット証券から申し込む
  • ライバルの少ない穴場の証券会社を選ぶ
  • 主幹事実績の多い証券会社の口座を保有する

それぞれの内容を解説します。

IPOの当選確率を上げる方法1,なるべく多くの証券会社から応募する

多くの証券会社で口座を開き、複数の証券会社からIPOの応募を行うことでIPOの当選確率を上げることができます。

IPO銘柄は複数の証券会社で取り扱われています。例えば2021年12月16日に上場したブロードエンタープライズ <4415> は主幹事のみずほ証券だけでなく、SBI証券、楽天証券、マネックス証券など10社以上で取り扱いがあります。

1つの証券会社だけで応募すれば抽選のチャンスは一度ですが、複数の証券会社から応募すれば抽選のチャンスも複数回に増えることになるのです。

IPOでは多くの証券会社から申し込みを行って抽選回数を増やすという地道な努力で当選確率を高めることができるので、多くの証券会社で口座開設をし、当選したいIPOがあれば複数の証券会社から応募してみてください。

では、どこで口座を開けばよいか悩まれる人もいると思いますが、具体的には以下で紹介する要素を持つ証券会社を選ぶべきです。

IPOの当選確率を上げる方法2,事前入金が不要な証券口座を開く

IPOに応募するには、基本的に購入代金を申し込む証券会社の口座に用意しておく必要があります。当選してもお金が払えないといった事態を避けたい証券会社が多いからです。

しかし、中にはIPOの応募時点では事前入金が不要という証券会社もあります。そうした証券会社で口座を開けば、仮に資金が1口分しか用意できなくても複数の応募が可能になります。

IPOの応募時に事前入金が不要な主な証券会社は次の通りです。

  • 松井証券
  • 岡三オンライン証券
  • SBIネオトレード証券
  • 野村證券

出典:松井証券岡三オンライン証券SBIネオトレード証券野村證券

こうした証券会社に口座を開いておけば、資金に限りがあっても複数の証券会社からの応募ができます。

IPOの当選確率を上げる方法3,家族の証券口座を開く

IPOの当選確率を上げるには応募の件数をできるだけ多くすることが重要ですが、家族の協力を得て家族名義の証券口座を開く方法もあります。

複数の証券会社に口座を開くだけでなく、家族にも証券会社で口座を開設してもらえば、チャンスは更に多くなります。もちろん実際の口座開設手続きは名義人本人が行う必要がありますが、パートナーの同意を得られれば応募件数は倍になります。

さらに、子どもの証券口座を開くこともできます。子どもが未成年の場合には、親権者の同意や代理人としての手続きなどが必要となり、証券会社ごとに確認が必要ですが、原則として未成年者でも口座開設は可能です。

ただし、野村證券では未成年者の口座開設はできるがIPOの申し込みはできないなど、証券会社ごとのルールがあるので注意が必要です。
出典:野村證券『Q:誰でも抽選に参加できますか』

IPOの当選確率を上げる方法4,IPO取扱銘柄数の多い証券会社を選ぶ

IPOが目的で口座を開く証券会社を選ぶのであれば、IPOの取扱銘柄数の多い証券会社を選ぶのが良いでしょう。せっかく口座を開いたのにIPOの取扱件数が少なければ、応募を増やして当選確率を上げるという目的が達成できません。

2021年12月10日時点で2021年にIPOをした、または年内にIPOを予定する銘柄数は127銘柄です。このうち、取扱銘柄数の多い証券会社の上位5社は次の通りです。
出典:JPX『新規上場会社情報』

1位 SBI証券 123銘柄
2位 みずほ証券 84銘柄
3位 SMBC日興証券 81銘柄
4位 楽天証券 75銘柄
5位 マネックス証券 67銘柄

出典:SBI証券みずほ証券SMBC日興証券楽天証券マネックス証券

このようにIPOの取扱件数が多い証券会社で口座を開いておけば、IPOに複数口座から申し込める回数も増え、当選確率を上げることにもつながるでしょう。

IPOの当選確率を上げる方法5,ネット証券から申し込む

IPOの当選確率を上げるためにはネット証券の活用も重要です。ネット証券では保有するIPO株のうち、抽選に回される割合が高いので当選の期待も持てるでしょう。例えばマネックス証券は100%完全平等抽選なので、応募すれば誰にでもチャンスがあります。

店舗型証券会社も抽選に回されるIPO株はありますが、その割合は10~15%程度です。残りは基本的に店頭配分に回されてしまいます。

仮に店舗型証券会社に10,000口、マネックス証券には3,000口のIPO株があったとすると、抽選に回される割合は店舗型証券会社では1,000口程度、マネックス証券は3,000口となります。ネット証券は株数が少ないイメージを持つ人もいますが、抽選に回される割合を考慮するとネット証券の重要度は高まります。

IPOの当選確率を上げる方法6,ライバルの少ない穴場の証券会社を選ぶ

IPOの当選確率を上げるためには、分子である応募件数を増やす方法が一般的です。反対に分母である総応募件数の少ない証券会社を選べば、ライバルが減り当選確率が上がる可能性があります。

例えば、主要証券会社の2021年3月末時点での口座件数は以下の通りです。

SBI証券 603万口座
楽天証券 572万口座
マネックス証券 194万口座
松井証券 133万口座
auカブコム証券 127万口座
野村證券 533万口座 ※1
大和証券 303万口座 ※1
SMBC日興証券 310万口座 ※2
LINE証券 100万口座 ※3

※1 残あり口座数
※2 証券総合口座数
※3 2021年10月末時点
出典:SBI証券楽天証券マネックス証券松井証券auカブコム証券野村證券大和証券SMBC日興証券LINE証券

マネックス証券はSBI証券の3分の1の口座数であるため、IPOの抽選においての分母も少なくなる可能性が高いです。またLINE証券は2021年10月末に100万口座を突破しましたが、まだまだ他のネット証券と比べれば口座数は少ないので、今後IPOの取扱いが増えるようなら注目したい証券会社です。

もちろん口座数の少ない証券会社ではその分配分されるIPO株も少ない場合がほとんどです。しかし、IPOの取扱いのある証券会社の口座数にも注目して、穴場の証券会社を選べばライバルが少なくなり当選確率が上がる可能性もあります。

IPOの当選確率を上げる方法7,主幹事実績の多い証券会社の口座を保有する

IPOの当選確率を上げるために証券会社を選ぶなら、IPOの主幹事件数は必ず確認すべき項目です。

IPOにおいて上場までの事務手続きや株式の引き受けを担う証券会社を幹事証券会社と呼び、その中でも特に中心となる会社が主幹事証券会社です。主幹事証券会社はスケジュール管理や発行の手続き、審査にも協力しIPOを行う企業を支える役割を担います。

IPO株の引き受けも主幹事証券会社が多く引き受け、残りが他の幹事証券会社に配分されます。主幹事証券会社は1社である場合もあれば、大企業のIPOなどの際は複数となる場合もあります。

単独主幹事のIPOの場合、IPO株の80~90%の割合で主幹事証券会社が引き受けることが多いです。残りの幹事会社は主幹事証券の引き受け分以外を分け合いますが、幹事会社は複数いるケースがほとんどで1社あたりの割合は多くて数%となります。

IPO株の大部分は主幹事証券会社に配分されるので、IPOの当選確率を上げるには主幹事証券会社がどこかを確認し、そこで申し込むことが近道です。

2021年12月10日時点で2021年に行われたIPO、または年内に予定されるIPO、127案件において主要証券会社ごとの主幹事件数は次の通りです。

SBI証券 20件
楽天証券 0件
マネックス証券 1件
松井証券 0件
auカブコム証券 0件
岡三オンライン証券 4件
SBIネオトレード証券 0件
野村證券 28件
大和証券 18件
SMBC日興証券 26件
みずほ証券 34件
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 5件

※共同主幹事を含む
出典:SBI証券楽天証券マネックス証券松井証券auカブコム証券岡三オンライン証券SBIネオトレード証券野村證券大和証券SMBC日興証券みずほ証券三菱UFJモルガン・スタンレー証券

基本的にネット証券は主幹事となるケースは少ないですが、SBI証券は例外です。SBI証券は2021年で20件の主幹事を務めており、ネット証券の中でダントツです。IPOの当選確率を上げるには、SBI証券は主幹事証券の観点からも外せないでしょう。

主幹事の多くは店舗型証券会社が務めています。最も多いのはみずほ証券の34件で、全体の4分の1の主幹事を務めていることになります。野村證券も主幹事件数が28件とみずほ証券に次いで多く、単独主幹事案件が多いという特徴もあります。

店舗型証券会社は抽選に回される割合は低いですが、主幹事案件であれば配分数量も多いため期待ができます。当選確率をなるべく高めるには、店舗型証券会社での口座開設も検討をするべきでしょう。

IPO投資におすすめの証券会社6選

IPO投資におすすめの証券会社は次の6社です。IPOの当選確率を上げるのであれば、これらの証券会社には口座開設をしておくのがおすすめです。

会社名 SBI証券 SMBC日興証券 松井証券 野村證券 大和証券 SBIネオトレード証券
IPO取扱銘柄数(2021年) 123件 81件 56件 64件 51件 21件
IPO主幹事件数(2021年) 20件 26件 0件 28件 18件 0件
抽選方法 個人投資家への配分数量の内、
60%:平等抽選(1口1票制度)
30%:IPOチャレンジポイント
10%:店頭配分
10%:完全平等抽選
5%:優遇抽選(ステージ別抽選)
70%以上:完全平等抽選 10%:完全平等抽選 10%:完全平等抽選 10%:完全平等抽選
90%:優遇抽選(ステージ別抽選)
口座数(2021年3月31日時点) 603万口座 310万口座
※1
133万口座 533万口座
※2
303万口座
※2
-
※3
IPO申込時の事前入金 必要 必要 不要 不要 必要 不要

※1 証券総合口座数
※2 残あり口座数
※3 口座数データ非開示
出典:SBI証券SMBC日興証券松井証券野村證券大和証券SBIネオトレード証券

おすすめ証券会社について細かく説明していきます。

SBI証券

IPO取扱銘柄数 主幹事件数 抽選方法 口座数(2021年3月31日時点) IPO申込時の事前入金
2020年:85件
2021年:123件
2020年:15件
2021年:20件
個人投資家への配分数量の内、
60%:平等抽選(1口1票制度)
30%:IPOチャレンジポイント
10%:店頭配分
603万口座 必要

SBI証券はIPOを検討するなら外せない証券会社です。

まずIPO件数が非常に多く、全IPO に占める取扱件数(カバー率)は2020年で約91%、2021年は約97%となっており、ほとんどのIPOを取り扱っています。

また、主幹事件数も多いので株数にも期待ができます。さらに、IPOチャレンジポイントでの配分があるので、SBI証券でIPOを応募し続ければいつかはIPOに当選できる点も大きな魅力です。

SBI証券はIPOに大きな力を入れている証券会社なので、IPOの当選確率を上げるためにはSBI証券での口座開設は必ず行うべきでしょう。

SMBC日興証券

IPO取扱銘柄数 主幹事件数 抽選方法 口座数(2021年3月31日時点) IPO申込時の事前入金
2020年:52件
2021年:81件
2020年:16件
2021年:26件
10%:完全平等抽選
5%:優遇抽選(ステージ別抽選)
310万口座
※証券総合口座数
必要

SMBC日興証券は2020年、2021年ともにIPO取扱銘柄数、主幹事件数が国内3位の証券会社です。店舗型証券会社ですが、全体の10%は完全平等抽選に回されます。また主幹事件数も多いので、個人投資家でも抽選での当選が期待できます。

また完全平等抽選に外れた場合でもステージ別の優遇抽選が行われます。預り資産や取引実績に応じてステージが決まり、預かり資産が5000万円以上だと25倍も当選確率が上がります。余剰資金が多くある人はSMBC日興証券をメインにしてもよいでしょう。
出典:SMBC日興証券『オンライントレード新規公開株式(IPO)の特長』

松井証券

IPO取扱銘柄数 主幹事件数 抽選方法 口座数(2021年3月31日時点) IPO申込時の事前入金
2020年:18件
2021年:56件
2020年:0件
2021年:0件
70%以上:完全平等抽選 133万口座 不要

松井証券はIPOの抽選に申し込む時に事前入金が不要です。当選してから初めて資金の工面を考えればよいので、IPOの当選確率を上げるために口座開設をして積極的に抽選に参加することがおすすめです。

抽選も70%が完全平等抽選に回されます。IPOの主幹事こそないですが、取扱銘柄数は2020年の18件から2021年には56件と大きく増やしています。

また、松井証券の株式売却手数料は1日の約定代金が50万円までなら無料となります。さらに25歳以下であれば、株式の売買手数料は約定代金にかかわらず無料です。IPO株を売却する際の手数料の低さも松井証券の魅力です。
出典:松井証券『手数料』

野村證券

IPO取扱銘柄数 主幹事件数 抽選方法 口座数(2021年3月31日時点) IPO申込時の事前入金
2020年:41件
2021年:64件
2020年:22件
2021年:28件
10%:完全平等抽選 533万口座
※残あり口座数
不要

野村證券はIPOの主幹事件数の多い証券会社です。2020年は22件で国内首位、2021年は28件で国内2位の主幹事件数を誇っています。国内最大の証券会社なので、大型のIPOであれば多くの案件で主幹事に名を連ねます。10%が完全平等抽選に回されるので、個人投資家にも当選のチャンスがあります。

またIPOの抽選に申し込む時の事前入金が不要なので、IPOの当選確率を上げるのであれば口座開設をして積極的に抽選に参加するべきです。

大和証券

IPO取扱銘柄数 主幹事件数 抽選方法 口座数(2021年3月31日時点) IPO申込時の事前入金
2020年:43件
2021年:51件
2020年:15件
2021年:18件
10%:完全平等抽選 303万口座
※残あり口座数
必要

大和証券は大手の店舗型証券会社で、IPOの取扱銘柄数、主幹事件数の多さが魅力です。特に主幹事件数については2020年で国内4位、2021年は国内5位の実績を誇っています。

主幹事案件が多くあるので、IPOの当選確率を上げるには外せない証券会社の一つです。10%が完全平等抽選に回されるので、個人投資家にも当選のチャンスがあります。

まとめ

IPOに当選するには基本的に運が必要です。しかし、当選確率はIPOへの理解と努力で引き上げることもできます。

まずはIPOの抽選の仕組みと各証券会社の抽選の特徴を知ることが大切です。証券会社ごとに抽選方法に違いがあるので、それぞれのルールを確認しておくべきでしょう。そして、なるべく多くの証券会社に口座を持っておくことがおすすめです。証券会社は基本的に口座を開設するだけなら費用はかかりません。

後は案件ごとに主幹事証券会社を押さえたら、主幹事証券を中心に複数の証券会社から応募してみることが重要です。IPOの当選確率を上げるには数を多く打つ必要があります。面倒かもしれませんが、地道な情報収集と細かな手続きを行うことで他の投資家よりも当選確率は上がります。そしてIPOにはそれだけ大きな魅力があります。

IPO投資でよくあるQ&A

ここでは、IPOに関するよくある質問に回答していきます。

お金がなくてもIPOに応募できるの?

多くの証券会社ではIPOの抽選への参加にあたって事前入金が必要ですが、一部の証券会社では応募段階での事前入金が不要な場合があります。IPOの抽選の参加にあたって、事前入金が不要な証券会社の一例は下記になります。

  • 松井証券
  • 岡三オンライン証券
  • SBIネオトレード証券
  • 野村證券

これらの証券会社ではIPOの抽選に当選した場合に初めて資金を用意すれば良いので、資金に限りがある場合でも複数の申し込みができるようになり、結果として当選確率は高くなります。特に野村證券は主幹事案件も多いので注目です。資金が少ない場合でも、こうした証券会社も活用して当選確率を上げるべきでしょう。

IPOは必ず儲かるの?

IPOは過去の実績では儲かる確率の高い投資方法ですが、投資の世界に絶対はなく、損をする場合もあります。IPOの公募価格よりも初値が低くなる公募割れというケースもあり、2021年1月1日から12月10日までに上場した96銘柄のうち、9銘柄は初値が公募価格を下回っています。

とは言え、IPOが勝率の高い投資手法であることには異論はありません。リスクはあるもののローリスクハイリターンが見込める投資手法なので、まずは証券会社に口座を作って抽選に参加してみましょう。

IPOの当選確率はどのぐらい?

IPOの当選確率について正確な数値は分かりませんが、小型の人気銘柄などでは当選確率は1%未満となると言われています。配分される株数の多い大型株などでは当選確率は上がりますが、それでも5~10%程度が目安です。ちなみに2021年の年末ジャンボ宝くじの6等(3,000円)の当選確率が1%です。

IPO投資の注意点は?

IPO投資の注意点は主に次の4つです。

① 抽選に当たった場合でも購入手続きをしないと購入できない
② 抽選から購入手続きまでの時間が短い
③ 証券会社によっては抽選結果が出るまで資金が拘束されるケースがある
④ 公募割れのリスクがある

IPOは抽選に当たった場合でも購入手続きをしないと購入できません。購入手続きまでの時間は1週間程度と短いので、スケジュール感も確認が必要です。

証券会社によっては抽選結果が出るまで資金が拘束されるケースもあるので、同時並行でIPOの申し込みをしている場合には資金に余裕を持っておく必要もあります。当然ですが、公募割れのリスクがあることも忘れてはいけません。

IPOは抽選に当選したら必ず買わないといけない?

IPOの抽選はIPO株を購入する権利の抽選であるので、当選後に権利を放棄して購入をしないということもできます。ただし、証券会社によっては当選後の購入辞退にペナルティを設けているケースや購入辞退を認めていないケースもあるので、申し込みの際に各証券会社のルールを確認しておくべきでしょう。

SMBC日興証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券ではIPOの当選後に購入を辞退した場合、1ヵ月間、IPOの申し込みができなくなります。

また楽天証券やauカブコム証券では抽選結果の発表前に購入手続きを行う必要があるので、当選後のキャンセルはできません。

IPOは誰が応募できるの?

IPOは基本的に誰でも応募できます。各証券会社に家族口座を作ることで複数の応募ができ、当選確率を上げることも可能です。ただし、家族口座で申し込みを行う場合には原則として口座名義人本人が応募をしなければいけません。

また未成年でも応募できますが、野村證券では未成年口座でのIPOの申し込みはできないというルールを設けているなど、各証券会社のルールを確認する必要があります。当選確率を上げるには、家族口座も活用して複数口座から応募することがおすすめです。

IPOを買うべき時期は?

IPOを買うべき時期については募集があればいつでも申し込んでいいでしょう。ただしIPOが集中する時期があり、上場と決算の関係上、3月、6月、9月、12月の3の倍数の時期にIPOの件数が多くなります。特に年末の12月は例年IPOラッシュと呼ばれる時期であり、2021年も全IPO銘柄127銘柄のうち、33銘柄が12月上場です。

IPOを狙うなら3月、6月、9月、12月に資金を使えるように準備をしておくことがおすすめです。特に12月は案件数も多いので、情報収集を欠かさなければ当選確率を上げることができます。

IPOの抽選確率を上げるためにどれくらい資金が必要なの?

IPO株は1株 1,000円から3,000円程度の銘柄が多いので、1口(100株)10万円から30万円の資金を用意すればほとんどの銘柄を購入することができます。当選確率を上げるには複数の証券会社から応募するのが望ましいので、5社で申し込むとして150万円程度の資金があればチャンスは広がります。

また、一部の証券会社では応募段階での事前入金が不要な場合があるので、こうした証券会社を積極的に活用することで少ない資金で当選確率を上げることもできます。IPOの抽選の参加にあたって事前入金が不要な証券会社の一例は下記になります。

  • 松井証券
  • 岡三オンライン証券
  • SBIネオトレード証券
  • 野村證券

野村證券や松井証券は取扱銘柄数も多いのでおすすめです。

IPOにどうすれば当選しやすくなるの?

IPOの当選確率を上げるには複数の証券会社から応募を行うことが重要です。

完全平等抽選を行っている証券会社や抽選に回される割合が高いネット証券で口座を作っておくべきでしょう。マネックス証券や楽天証券での口座開設がおすすめです。

また主幹事件数の多い証券会社でも口座を開いておき、主幹事証券会社から確実に応募が行えるように準備をしておくことも大切です。主幹事件数の多いSBI証券や野村證券、SMBC日興証券は外せません。

さらにIPOの抽選の参加にあたって、事前入金が不要な証券会社も当選確率を上げるには重要です。松井証券や岡三オンライン証券などが該当します。

新興証券会社はIPOの取扱件数こそ少ないものの、口座数も少ないので穴場となる可能性があります。LINE証券やDMM.com証券が該当するので、こうした証券会社にも口座を開いておけば確率は更に高くなる可能性があります。

そして、こうした証券会社に家族口座も作れば、応募件数をさらに増やすことができます。IPOの当選確率を上げるには応募件数を多くする必要があるので、複数の証券会社に家族口座を開いて応募件数を最大化するべきです。

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