私たちの脳は、非常に大量の情報を記憶することができます。

しかし、その記憶は脳のどこに、どうやって保存されているのでしょうか?

2月25日にオープンアクセスジャーナル『Frontiers in Molecular Neuroscience』で発表された新しい研究は、私たちの記憶がコンピュータと同じようなバイナリ形式で、シナプスを構成するタンパク質に書き込まれていると報告しています。

MeshCODE理論と呼ばれるこの新しい理論は、脳機能を新しい形で理解するもので、アルツハイマー病などの脳疾患の治療に役立つ可能性があります。

目次

人間の脳は有機スーパーコンピュータだった
細胞からの圧力で0と1を表現するスイッチみたいなタンパク質

人間の脳は有機スーパーコンピュータだった

記憶は脳の海馬の働きによって保存され、シナプスが記憶の回路を作っていると言われています。

しかし、具体的に脳のどこに記憶が保存されているのかは、はっきりわかっていません。

イギリス、ケント大学のバイオサイエンス学部の研究者ベンジャミン・グルト博士は、その場所を特定したと報告しています。

彼の発見したMeshCODE理論によると、脳の神経細胞がコンピュータのように複雑なバイナリコードを使って情報を記録しているのだといいます。

人間の脳は有機スーパーコンピュータだった 「0と1」で記憶を保存すると明らかに
(画像=脳内の神経細胞のイメージ。 / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

脳の中には、何兆個にも及ぶニューロン(神経細胞)が存在していて、シナプスを介して電気化学的なシグナル伝達を行っています。

それぞれのシナプスは、タリンというタンパク質分子が網目状の構造の足場を築いています。

これまでタリン分子は、単に細胞の構造的なものだと思われてきました。

しかし、今回の研究は、このタリンの網目が実際には情報を保存したり記憶をコード化するバイナリースイッチとして機能していることを示唆しています。

人間の脳は有機スーパーコンピュータだった 「0と1」で記憶を保存すると明らかに
(画像=コンピューターのデータは0と1で表現されるバイナリー形式で保存されている。 / canva、『ナゾロジー』より引用)

バイナリーというのは0と1で表される2進数のことを言います。

コンピュータのデータイメージとして、たまに0と1が羅列した文字列を見ることがありますが、コンピュータはこのバイナリー形式で情報を保存しています。

では、脳がバイナリー形式で情報を保存するというのはどういうことなのでしょうか?