<TOP画像:御所まちの町並みと葛城山>
奈良県御所(ごせ)市域は、古くは大和朝廷時代に遡る歴史を持つエリアなのだそうです。7〜8世紀頃の古事記、日本書紀、万葉集といった書物にも記された地名が今なお残っています。
今回は、その中でも江戸時代初期に形成された陣屋町「御所まち」のエリアをご紹介したいと思います。日本風景街道に指定されているこのエリアは、その昔、伊勢街道・竹内街道・高野街道の交通の要衝として重要な役割を果たし、大和絣や菜種油といった商業の街として栄えたのだそうです。
御所市観光ガイドのウェブサイトでは「御所まちマップ」をダウンロードできます。ちなみに、この地図は御所駅や御所まち内でも配布されています。まち歩きにとても便利ですので、ぜひご活用くださいね。
タイムスリップした気分を味わえる江戸時代からの町並みが残る「御所まち」へ、行ってみませんか。
奈良県御所市の「御所まち」
このコロナ禍での楽しみの一つが、おうちで地図を見ながらの旅行の計画。インターネット上で地図を見ていると、史跡名勝だけでなく、おすすめのお店等いろんな発見があり、具体的なプランを立てやすくなっています。
今回の御所まちは、地図で発見して行きたくなった場所の1つです。
御所まちは、約400年前の江戸時代初期、関ヶ原の合戦(1600年)で徳川家康の東軍についた桑山氏が、御所藩を開いたのが始まりとのこと。中世の環濠集落(周囲に堀をめぐらせた集落・ムラ)で、庄屋が軒を連ねた「西御所」と、浄土真宗の円照寺を中心とした寺内町として発展した「東御所」が、葛城川を挟んで在ります。
御所市観光ガイドに掲載されている御所まちマップを見ていると、御所まち内は、まっすぐに整備された道路と「背割り下水」と呼ばれる水路が家々の裏側に通されていて、昔からインフラが整っていたことがわかります。
江戸時代の名残として、江戸幕府の最も重要な法令を木の板(高札)に書いて掲げる「高札場(こうさつば)」が、2008年に復元されてその当時と同じ場所に設置されています。

高札場に掲げられている高札のオリジナルを、運がよければ見せていただける場所があります。国登録有形文化財に登録されている「中井邸」です。
現在も中井家の方々がお住まいになっていて、10代目・中井陽一氏はまるで御所まちの生き字引のような方!現在も現役の大学院生で、家蔵の古文書等の解読や記録をされていらっしゃいます。知識が豊富で、お話がとてもわかりやすく、興味が膨らみます。

見せていただいた江戸時代の銀貨は、匁(もんめ)※で計量されていたそうです。様々な大きさの銀貨があり、関西は銀貨、関東は金貨が主に流通していたことなど、少しお話を伺うだけでも勉強になりました。
※匁(もんめ)とは、尺貫法の単位の一つ。一匁(いちもんめ)は一貫(いっかん)の千分の一。一匁は3.75グラム。

御所まちでの楽しみ方
地図を片手に散策をスタート!電車でお越しの場合は、JRもしくは近鉄の御所駅が起点でしょうか。車の場合には、御所市役所の駐車場を利用できると教えていただきました。
御所まちは、葛城川を挟んだ西御所と東御所の2つに別れています。今回は西御所のみ訪問してみました。
油長酒造
日本酒が好きな私は、まず「油長(ゆうちょう)酒造」を目指します!油長酒造の社名の由来は、この地の主産業の1つだった菜種油の精油業を、安土桃山時代〜江戸時代に当たる慶長年間より営んでいて、その当時の屋号が油長長兵衛。その後、1719(享保4)年に酒造業に転じ、屋号はその当時の名残りと思われます。
油長酒造は、無濾過・無加水にこだわった製法を続けていて、日本清酒発祥の地と言われる奈良で、「奈良酒」と称される日本酒ブランド「鷹長」や「風の森」を醸造しています。また、日本酒だけでなく、蔵の向かいにある築150年の古民家をリノベーションし、2018年より新事業「大和醸造所」として蒸留酒ジンの製造を始めています。
残念ながら酒造見学を受け付けていないので、外観を見ることしかできませんが、それでも古い町屋に佇む建物と、酒蔵の軒先に吊り下げられている杉玉をみると気分が上がります。

酒蔵の向かい側には、近代的なステンレスタンクの酒造エリアもあって、古い町屋の中で異彩を放っています。

【油長酒造】
- 住所:奈良県御所市1160番地
- TEL:0745-62-2047
東川酒店
酒蔵ではお酒を購入できませんが、すぐ近くにある「東川酒店」で取り扱っています。
余談ですが、こちらの店主・東川裕氏は、現・御所市長なのだそうです。唎酒師の資格を持つスタッフもいらっしゃるようで、とても詳しく日本酒の説明をしてくださいます。また、御所まちの色々な情報を教えてくださったのもこちらのお店でした。ぜひ気になる日本酒を見つけてみてはいかがでしょうか?大和醸造所の蒸留酒ジンの取り扱いもあります。

【東川酒店】
- 住所:奈良県御所市西町121-1
- TEL:0745-62-2335
古いものの中に、少しモダンな町屋も見つけました。市松模様の白黒タイルが目を引く、レトロな雰囲気の町屋です。

モリソン万年筆 &カフェ
もう一つ気になっていたのは、1918年(大正7年)創業の国産万年筆ブランド「モリソン万年筆」の本社!すでに「モリソン万年筆」の製造は停止されているものの、その本社跡の町家でカフェ&バーを運営されています。店内には万年筆のディスプレイがあり、販売もされている模様!


ランチはカレーとパスタが各種用意されていて、メニューから選ぶのが悩ましい。私は、倭鴨(やまとかも)という、大和葛城山麓で育てられたブランド鴨「鴨重」の入ったカレーに!ご飯は、奈良県産「ひのひかり」に御所ブランドの五穀米「行者米」を混ぜ込み、油長酒造の仕込み水で炊いているというこだわりのもの!

美味しい地元の日本酒を飲みながら、宿泊してゆっくり滞在したいと思いますが、現在御所まちには宿泊施設がほとんどありません。しかし、モリソン万年筆&カフェやその他の町家で、2022年夏ごろまでに民泊をオープンする予定とお聞きしました。これもまた楽しみです!
【モリソン万年筆&カフェ】
- 住所:奈良県御所市1071番地
- TEL:0745-63-1881
- 営業時間:ランチ 水〜月曜11:30〜15:00、バー 水〜日曜18:00〜22:00
- 定休日:火曜日(月曜はランチのみ営業)
- 駐車場:あり
- 最寄駅:JR御所駅・近鉄御所駅より徒歩約5分