point
- 土星の上層大気を熱くしている原因はオーロラだった
- 土星の南極と北極で発生するオーロラによる熱が、土星の上層大気全体に広がっている
ガス惑星である土星や木星、天王星、海王星の大気の上層は、地球と同じように高温です。
地球の上層大気は太陽からの紫外線やX線を吸収するため、高温になります。
しかし、太陽から遠く離れており、それらの影響が少ない惑星までもが高温である理由は謎のままでした。
今回、米国アリゾナ大学月惑星研究所の大学院生ザラ・ブラウン氏らの研究チームは、NASAのカッシーニ探査機のデータを分析することにより、土星の上層大気が高温である理由を明らかにしました。
原因は、土星のオーロラによる加熱だったようです。
報告の詳細は4月6日、「Nature Astronomy」誌に掲載されました。
A pole-to-pole pressure–temperature map of Saturn’s thermosphere from Cassini Grand Finale data
土星にあるオーロラ
地球で観測できる美しいオーロラは、土星にも出現します。
2017年9月15日に土星の大気圏に突入したカッシーニ探査機は、その直前の8月20日に土星のオーロラを撮影することに成功しました。
土星のオーロラ発生のプロセスは、地球のオーロラ発生と似ています。
太陽風によって運ばれたプラズマ(荷電粒子)が磁力線に沿って南北両方の極に流れ込み、上層大気と反応してオーロラとなって輝くのです。
そして、新しい研究によって、この土星のオーロラが上層大気を高温に保つ原因であることが分かりました。
オーロラは上層大気を加熱する
カッシーニ探査機は、土星の大気密度を計測しました。
大気の密度は高度と共に減少しており、この減少率は温度に依存しています。
ですから、土星全体の大気密度を計測することにより、土星の上層大気の全体的な温度や場所による温度の違いを知ることができるのです。
そして、土星の温度変化を全体的に観測した結果、大気の温度は南極と北極のオーロラの近くでピークになっていることを発見しました。
これはオーロラによる電流が上層大気を加熱している証拠です。
土星の北極と南極にあるオーロラは、太陽風と衛星からの荷電粒子の相互作用によってスパークさせられ、上層大気を加熱します。
そして、2つの極付近に堆積したこれらの熱は、風によって低緯度の赤道付近まで運ばれていきます。
この熱運搬システムにより、熱は土星の上層大気全体へと広がります。
結果として、上層大気の温度は、太陽熱のみの温度上昇よりも2倍高い値になるのです。
今回の土星の上層大気に関する発見は、惑星の上層大気の一般的な理解に不可欠なものです。
これらは、宇宙天気を理解し、太陽系の他の惑星や太陽系外惑星に対する影響を知るための鍵となるでしょう。
提供元・ナゾロジー
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