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クライアントには、あなたを育てるメリットはない
優しく切られる、それがフリーランスの現実
クライアントには、あなたを育てるメリットはない
ここで、このエピソードを振り返ってみましょう。
学生バイトと社員さんのやりとりを見ると、注意をされているようでいて、本質的なコメントはもらえていないことに気付きます。
つまり、
「ちょっと困るわあ」
「よそで食べてんか(食べてください)」
と行動を指示されているだけで、「そもそも、なぜここで食べてはいけないのか」を教えてもらえていないのです。
もしも保護者や、学校の先生であれば、「大切な資料を汚す可能性があるので、同じ机で食事をするのは好ましくない」という、おおもとの問題を指摘してくれたかもしれません。そうすれば次回以降、同じようなシチュエーションで行動を改められるでしょう。
しかし、社員さんはお金で労働力を買っている立場。その場できちんと働いてくれるかどうかが重要なのであって、その学生バイトが社会に出て苦労するかどうかなんて、知ったこっちゃないわけです。
誰しも経験があると思うのですが、人の行動を注意したり、叱ったりするのには体力が要ります。相手の尊厳を傷つけないように、かといって回りくどくならないようにと考えていると、けっこう頭を使います。
じゃあ、それを、アルバイトの雇用主が負担する義理はあるのか? はっきり言って、ないんですよね。
優しく切られる、それがフリーランスの現実
フリーランスと会社の付き合い方。従う義理はない、だけど育てる義理もない フリーランスと会社の付き合い方 FREELANCE夏野かおる2021.12.09 2021.12.09 コラム フリーランス→法人化して思ったこと 連載 「フリーランス」をコトバンクで引くと、以下のように説明されています。
中世ヨーロッパで、主君を持たず自由契約によって諸侯に雇われた、主として騎士。(出典:コトバンク)
つまりフリーランスとは、技能と引き換えに報酬を得る、現代を生きる騎士なのです。
ところが世の中を見渡してみると、面接時などに「お仕事を通じて成長したいです!」とおっしゃるフリーランスの方もそこそこいるようです。
いや、分かるんです。確かに、実際の仕事を通じてしか得られない経験や知見はありますし、それが成長につながる事実には100%同意です。でも、クライアントに直接「自分を育ててください!」って言っちゃうのは、なんか違うと思いませんか?
というわけで今回は、「フリーランスの仕事はスクールの授業じゃないぜ!」って話を、自戒を込めてしたいと思います。
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と、その前に。この話は「ちゃんとしたクライアントとのやりとり」について話します 好条件バイトで「切られる瞬間」を目の当たりに クライアントには、あなたを育てるメリットはない 優しく切られる、それがフリーランスの現実 因果応報から抜け出したい!成長のコツはこれだ 経営者には「切る」スキルが必須 と、その前に。この話は「ちゃんとしたクライアントとのやりとり」について話します この記事では、「クライアントさんに甘えるのはよくないぜ!」「ある程度、自分に厳しく行こうぜ!」って話をするつもりですが、中にはクライアント側の要求が異常に高かったり、そもそもの契約内容が不当だったり……なケースもあります。
ところが真面目なフリーランスだと、そういった不当要求にも「自分のスキルが足りないせいだ」「自分はまだまだ甘いんだ」と落ち込んでしまうことがあります。本題に入る前に、「いやいや、それは違いまっせ」という認識を共有させてください。
たとえば、私はぜ〜んぜん料理ができないのですが、レトルトを温めるくらいならできます。
この前提の上で、クライアントから「レトルトでいいから、カレー作って」と指示され、「あ、温め忘れてました! いまワキの下に挟んで温めますね(笑)」で済ませるのは非常にマズイですよね。これからするのは、こっちの話です。
てへぺろをする女性 ▲図太く生き抜くスキルはフリーランスに必須。とはいえ、すべてを「てへぺろ」で済ませるのはマズイですぞ!
一方で、クライアントから「カレーっつったら3日かけてスパイスから仕込むのが当然だろ! 仕事舐めてんのか!? オォン!?」「レトルトに金は払わねえ!」って言われたら、それは不当要求ですよね。
ただ、後者のケースは本記事の趣旨から外れるところですので、こういった記事などを参考に、適切な場所に相談してください。
好条件バイトで「切られる瞬間」を目の当たりに 閑話休題、フリーランスの仕事の話に戻ろうと思います。現実の厳しさを伝えるために、ひとつ実話をご紹介しましょう。
かつての私はアルバイターで、塾講師をはじめ、さまざまなアルバイトを経験しました。中でも印象深かったのが、新幹線の列車内アンケートの仕事。まる3日拘束される代わりに実入りがよく、報酬はニコニコ現金払いとあって、金欠学生にはありがたい存在でした。
この条件から、自然と学生アルバイトが多い現場だったのですが、ある日、とある学生グループが大切な資料の置かれた机でお弁当を食べ始めました。いや、いや、いや、資料にソースがついたらどないしますねん。
ハラハラしながら見ていると、社員さんがやってきて、まずは優しく「ごめん、そこの机は困るんやわぁ」と声をかけました。
これで一段落……と思いきや、その学生バイト達は、同じく資料の置いてある、別のテーブルに移って食事を続けたのです。
お弁当を食べ始める学生グループ ▲怖いものなしかい!
いや、いや、いや。そう来たかあ、となりゆきを見守る私。
社員さんが再び「ごめんやけど、ここはちょっとアカンわ。控室で食べてほしいな!」と声をかけると、学生バイトは「ウッス」的な感じで退室。こうして学生バイトグループがいなくなると、
「もう、あの子らはナシや!!!!!!」
ブチ切れる社員さん。そりゃそうなりますよね。
おそらくですが、このグループは翌日のシフトから除外されたか、少なくとも、次回以降の案内は来なくなったでしょう。好条件のアルバイトだったのに、二度とチャンスを掴めなくなってしまいました。
クライアントには、あなたを育てるメリットはない ここで、このエピソードを振り返ってみましょう。
学生バイトと社員さんのやりとりを見ると、注意をされているようでいて、本質的なコメントはもらえていないことに気付きます。
つまり、
「ちょっと困るわあ」 「よそで食べてんか(食べてください)」
と行動を指示されているだけで、「そもそも、なぜここで食べてはいけないのか」を教えてもらえていないのです。
もしも保護者や、学校の先生であれば、「大切な資料を汚す可能性があるので、同じ机で食事をするのは好ましくない」という、おおもとの問題を指摘してくれたかもしれません。そうすれば次回以降、同じようなシチュエーションで行動を改められるでしょう。
しかし、社員さんはお金で労働力を買っている立場。その場できちんと働いてくれるかどうかが重要なのであって、その学生バイトが社会に出て苦労するかどうかなんて、知ったこっちゃないわけです。
誰しも経験があると思うのですが、人の行動を注意したり、叱ったりするのには体力が要ります。相手の尊厳を傷つけないように、かといって回りくどくならないようにと考えていると、けっこう頭を使います。
じゃあ、それを、アルバイトの雇用主が負担する義理はあるのか? はっきり言って、ないんですよね。
優しく切られる、それがフリーランスの現実 これと同じことは、フリーランスにも言えます。というか、案件完結型なことが多いぶん、フリーランスのほうがもっと容易に切られます。
とくに最近ではフリーランスの発言力が上がっているので、こちらとしては丁寧に注意したつもりでも、Twitterで「こんな人格否定発言をされました! 株式会社〇〇には注意してください!」と“注意喚起”されたら、会社の名前に傷がつくかもしれません。
そんなリスクを負ってまでフリーランスに注意するメリットって、はっきり言ってゼロです。

※念のために書いておきますが、Twitterを使った告発自体を否定する意図はありません。ここで挙げたのは、偏った立場から、必ずしも事実とは言えない事柄を針小棒大に書き立てるケースです。
この前提に立った上で、スキル不足や、ビジネスマナーが身についていないフリーランスは、どうなるでしょうか。
誰からも注意してもらえず、「ふんわり契約を切られる」ことが続きます。自分では何が悪かったのか分からないので、行動を改められません。だから、次のクライアントにも同じことをして、またふんわり切られる。この繰り返しです。