品薄が続く消毒用アルコールの代用として、高濃度アルコールのお酒に関心が集まっている。その殺菌効果や成分、濃度は?自宅にあるお酒や市販で手に入るお酒で代用できるのか、その方法と注意点について探ってみた。
目次
高濃度アルコールとは?お酒で代用できる理由
消毒用アルコールの濃度・成分は?
日本で手に入る度数の高いお酒
高濃度のお酒を扱う時の注意点
高濃度アルコールとは?お酒で代用できる理由
高濃度アルコールとは、アルコールの濃度が高いアルコール物質のこと。とりわけ今注目されている高濃度アルコールは、消毒用アルコールとして代用できるほどの殺菌効果が期待できる、アルコール度数が高い飲料や代替品だ。なかでも今、老舗の日本酒蔵や酒造メーカーが続々と製造に乗り出している高アルコール製品の殺菌効果に高い関心が集まっている。
消毒用エタノールの供給が不足している事態を受け、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について3月に発表。「代替として用いられる高濃度エタノール製品は、医薬品医療機器等法に規定する医薬品又は医薬部外品に該当せず、その製造、販売等について同法による規制を受けない」とし、実質は飲用のお酒であっても度数が高いものならアルコール消毒液の代用品となり得る見解を示した。
これを受けた酒造メーカーが酒類製造のノウハウを投じて高アルコール製品の製造を加速させている。
消毒用アルコールの濃度・成分は?
日本の薬機法(旧・薬事法)では、アルコールは飲料用と工業用アルコールに二分され、消毒用アルコールは工業用アルコールとして流通している。
消毒用アルコールの成分は、エタノールやイソプロピルアルコール(IPA)など、人体への毒性が低いアルコールが用いられるが飲用として飲むことはできない。
飲料用のお酒は、飲んで身体の中に取り入れても安全なエタノール(エチルアルコール)が主成分。つまり、消毒液に含まれるエタノールやイソプロピルアルコールも、お酒に含まれるエタノールも、全てアルコールの一種であるため、いずれも度数・濃度が高いアルコール配合であれば、高濃度アルコール製品や高濃度エタノール製品として分類することができる。
お酒にはフレーバーや甘味料などが添加されているものがあるため、それらによる付加的な影響はあるかもしれないが、アルコール度数が高い点において基準をクリアしていれば、お酒も消毒用アルコールの代用品になり得ると言えそうだ。
では、消毒用アルコールの代用品としてお酒を使う場合、どれくらいの濃度・度数があれば消毒作用や殺菌・除菌効果が期待できるのだろうか。
日本で手に入る度数の高いお酒
新型コロナウイルスは、熱やアルコールに弱いことがわかっており、70度以上で一定時間熱を加えたり、70%以上のアルコールで消毒することで消毒対策することができる。市販の手指消毒用アルコールはこの基準を満たしているが、お酒で代用する場合は70%または同等濃度のアルコールがあれば、消毒液としての効果が見込めることになる。
日本に流通しているお酒で最も度数が高いことで知られる「スピリタス」(ポーランド原産のウォッカ)は、新型コロナウイルスの流行で注目を浴びた高アルコール酒の一つ。そのアルコール度数は96%とほぼ100%に近く、消防法上の危険物に分類されるほど。各地の酒店で消毒液の代用品として買い求める人が増え、一時は品切れ状態になった。
ほかにもプエルトリコ原産のラム酒「ロンリコ151」(75.5度)、ヨーロッパで親しまれるリキュール「アブサン」(50~80度が主流)など、高アルコール酒はさまざまあるが、アルコール度数の高さは必ずしも除菌・殺菌効果の高さとは比例しない。
この記事では、春から日本の酒造メーカーが消毒液の代用品になることを願って販売開始した高アルコール製品に注目したい。
明利酒類
茨城県水戸市にある老舗酒造メーカー明利酒類は、今回の動きに呼応し、高濃度アルコール商品を開発。より高アルコールで不純物を極力なくした「メイリの65%」を商品化した。
菊水酒造
高知県安芸市の菊水酒造は4月10日、高濃度のスピリッツ「アルコール77」の販売を開始した。スピリッツなので、あくまで飲んで楽しむための酒類として提供するものだが、アルコール度数は77%と極めて高い。
笹の川酒造
福島県の笹の川酒造は、さとうきび糖蜜が原材料のスピリッツ「SPIRITS66」の製造を発表。4月中に地元福島を中心に、順次全国へ出荷を予定している。
若鶴酒造
富山県の若鶴酒造は、高濃度アルコールの需要の高まりを受け、アルコール度数77%の「砺波野スピリット77」を4月13日より出荷すると発表。サトウキビ原料のアルコールに加水し、ボトリングしたお酒を、週に約1,000本製造。北陸を中心とした医療機関や、直営店、ドラッグストアに優先的に供給し、売上の一部を新型コロナウイルスの感染拡大防止にむけた取り組みに寄付している。
請福酒造
沖縄県の請福酒造は、アルコール度数77度の泡盛を販売。全国から多数の問い合わせが入っているが、当面は石垣島島内と周囲の離島に住む人に限定で提供している。
笹一酒造
山梨県の老舗酒造メーカー・笹一酒造は4月21日より、高濃度エタノール製品「笹一アルコール77」を販売開始すると発表。容量500ml中のアルコール分は77%で、医薬品や医薬部外品ではないとしながらも、消毒用エタノールの代替品として手指消毒に使用することができるという。
各メーカー、高濃度アルコール製品や高濃度エタノール製品など、呼び方はさまざまだが、概ね度数は60~80度前後。現在は限られた数を地元の人々や施設へ優先的に供給している酒造メーカーが多いので、自分の住む地域の近くのメーカーの取り組みを確認してほしい。
高濃度のお酒を扱う時の注意点
飲料用のお酒であっても、アルコール濃度が高いと消防法の第四類アルコール類に該当し、危険物としての取り扱いが必要になる。火気に近づけると引火する恐れがあるため、ライターやキャンドルなどの近くに置くことはご法度だ。
消毒用アルコールにも言えることだが、容器を落とすなど衝撃を与えるのも避けたい。手や服に付着したらそのまま放置せず、すぐに洗うか拭き取るようにしよう。
取り扱いや保管場所などに注意すれば、高濃度のお酒の代用の幅は広がる。飲んでも問題ない飲用のアルコールだから、手指の消毒だけでなく、食品や食器に付着しても人体に悪い影響はないだろう。キッチンでの衛生に気をつけたい時に特に活躍してくれそうだ。
高濃度アルコール製品を適切に取り扱えば、消毒用アルコールの不足状況が続いても新型コロナウイルスの脅威に立ち向かえるかもしれない。手に入りくい状況が続いても慌てず、自宅に同じくらい濃度の高いアルコール飲料が眠っていないか、掘り出すところからはじめてみては?
男の隠れ家デジタル編集部
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提供元・男の隠れ家デジタル
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