ファッション&アパレル分野に入れていいのかどうか微妙だが、今年のライフスタイル分野で、アウトドアやスポーツやインテリアなどの巣篭もり関連以外で最も注目された消費関連分野は「フェムテック」だった。フェムテックとはFemele(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品やサービスのことだ。なにしろ4年後の2025年には世界で5.3兆円のマーケットになると予想されているのだから、関連各社はプロジェクトチームを立ち上げて、新商品開発を行っている。まだ吸水ショーツ、月経カップなどの生理用品が中心だが、更年期、膣ケア、性の悩みなど女性の閉ざされた課題に寄り添い正しい情報を伝えるサービスも始まっている。1972年に男女雇用均等法が施行されてから実に50年が経とうとしている現在、今更ながらにこうしたビジネスは女性のトップが主導することになるだろうし、ビッグなビジネスになって女性経営者の底力を見せてほしいものだ。

 フェムテック・ビジネスはすでに動き始めているが、今年注目され始めているのは「メタバース」(「メタ(超)」と「ユニバース(宇宙)」の合成語)ビジネスである。今年フェイスブックが社名を「メタ」に変更して話題になったが、ファッション業界でも「ファッションに肉体は必要なのか?」という動きが出ているのだ。NFT(仮想通貨のブロックチェーン技術)を活用してデジタルアートを1点ものにした商品(特にスニーカーなど)にオークションで億円単位の値段がついている。履かなくともこのスニーカーを見て満足しているファンがいるのだ。そのデザインはそのファンだけのもので、実際に履こうと思えば商品化もできる。

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」(デザイナー森永邦彦)は、スタジオ地図のアニメ「竜とそばかすの姫」(細田守監督)で主人公の衣裳などをデザインした。これをアニメ化したデジタル作品がNFTとしてオークションにかけられたが、NFT鳴内美術館が主人公の衣裳(「アンリアレイジ」×BELLE LOOK)のNFT作品を1500万円、その他のデジタルルック10作品を3500万円で落札した。日本のファッション業界にとっては初めてといっていい大きな金額の「メタバース」ビジネスといえる。

 アパレルの分野では、シーズメンと夢展望の2社がメタバースでは有望視されている。夢展望は昨年12月にバーチャルファッションの始動を発表しており無料キャラメイカー「VRoid Studio」を使ってメタバースでも同社のウィメンズブランド「ディアマイラブ(DearMyLove)」を着用することができる。加えて今年12月にはそのキッズ対応の「リトルディアマイラブ(LittleDearMyLove)」をスタートすることを発表している。現実世界でもメタバースでも同じファッションをシームレスに楽しむことができるというわけだ。  シーズメンは、ファッションブランドのメタバース領域参入支援事業を開始すると12月に発表。ファッションブランドが現実世界で販売している衣料品をアバター用に3Dモデリングアバターが着用するように変換し、そのブランドの店舗の再現も予定している。その第1弾として落合宏理の「ファセッタズム(FACETASM)」が選ばれた。

 もう実際に着用しなくても、VR(仮装現実)でファッションを楽しめる時代がついに到来しているようだ。このVRにおけるメタバースの市場規模が現実の市場規模を上回るという時代もやってくる日も遠くないかもしれない。そうだとしたらファッションの未来はさほど暗くもないかもしれない。

2021年重大ニュースはその5で終わります。

文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO

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