今読んでいるこの記事を含め、多くの人々はトピックとして並ぶ大量の情報から、それを知識として得るかどうかの取捨選択を行っています。

では、その判断基準とはなんなのでしょうか?

英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)などの研究チームは、アンケート調査から情報を求める人々のタイプを、3つに分類可能だと報告。

この情報に対する興味の持ち方は、時間を開けて調査しても個々人で決まっていて、基本的に変化することはないようです。

これは政治家や広報担当者に役立つ知見となるほか、あなた自身が自分を理解するためにも役立つ情報かもしれません。

研究の詳細は、12月3日付でオープンアクセスジャーナル『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  1. その情報を知るべきか? 無視するべきか?
  2. 人の情報探索に対する3つのタイプ

その情報を知るべきか? 無視するべきか?

あなたはどれ? ヒトが情報に求める「3つのタイプ」が明らかに
(画像=大量の情報からあなたは何を選ぶのか? / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

現在ネット上には、嘘かホントかわからないさまざまな情報が氾濫しています。

もちろんこの記事の情報についても、今あなたは読み進めながらこれを知識として獲得するか、無視するかを判断しているでしょう。

「興味ないな」と感じれば、読むのをやめて記事を閉じてしまうかもしれません。

この場合、あなたは目の前にある情報の獲得を回避したことになります。

ニュースサイトやツイッター、ブログでも、トピックから詳細へ導くリンクはたくさん並んでいます。

このときも、あなたはそれを開いてより詳しい情報を獲得するか、スルーして情報の獲得を回避するか判断するはずです。

では、人々はそうした情報の取捨をどうやって行っているのでしょうか?

今回、そうした問題を研究したUCLの認知神経科学者ターリ・シャーロット(Tali Sharot)教授は、次のように述べています。

「私たちが知りたかったのは、人はどのようにして知りたいことを決めるのかということです。

現在、膨大な量の情報が個人に提供されています。

新型コロナワクチンや金融格差、気候変動などについて、積極的に情報を求める人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。

人々がどうやって情報の取捨選択をするのか、よりよく理解することができれば、人々は納得して自身の教養を高めていくことができるでしょう」

これを明らかにするために、今回の研究チームは、543人の参加者を対象に5つの実験を行い、情報探索に影響を与える要因を調べました。

ある実験では、アルツハイマー病リスクを高める遺伝子や、免疫を高める遺伝子など、自身の健康に関わる情報の興味度を調査しました。

また、別の実験では、為替レートや所得分布など、金融情報に関する興味、さらに別の実験では、家族や友人が自分をどう評価しているか知りたいか、ということを調査しました。

これらはアンケートを主軸に調査されました。

あなたはどれ? ヒトが情報に求める「3つのタイプ」が明らかに
(画像=認知的な研究には、よくアンケートが用いられる / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

その後、参加者には、情報がどのように役立つと思うか? 自分が獲得する情報について同感じたかを予想してもらい、またそれぞれにテーマについて普段考える頻度などを質問しました。

こうした調査の結果、人の情報探索には、主に3つのタイプがあるということが判明したのです。

では、あなたがどのタイプに当たるのか考えながら、実験結果を見ていきましょう。

人の情報探索に対する3つのタイプ

あなたはどれ? ヒトが情報に求める「3つのタイプ」が明らかに
(画像=人が情報に求めるのは、意思決定に役立つか、感情に訴えるか、普段考えていることか / Credit:canva、『ナゾロジー』より引用)

人が情報を選択するとき現れる3つのタイプは、次のとおりです。

「自分の感情に訴える情報を求める人」

「自分の意思決定に役立つ情報を求める人」

「自分がよく考える問題についての情報を主に求める人」

この3つタイプを示されたときに、いずれかのタイプについて「言われてみれば…」とピンと来た人は多いかもしれません。

人が、情報を求めるか避けるかの意思決定については、これを説明するモデルがいくつか存在していますが、今回の3タイプモデルは、もっとも説得力があるだろうと研究者は語ります。

実験では、数カ月間隔で何度か繰り返し行われましたが、その結果でも、ほとんどの人がこの3タイプのうちの1つを優先しており、その傾向は常に安定していて変化することがありませんでした。

つまり、人々には個々人ごとに生来の情報に対する動機が備わっていて、それに従って情報の取捨選択をしている可能性があるのです。

また、自分の評価や特性に関する情報を求める人は、自分がよく考える問題について情報を求める傾向があり、精神的な健康状態は良好であることがわかったといいます。

こうしたことを理解していれば、広報担当者や政策立案者など、人々に重要な情報を届ける必要がある立場の人は、どうやって興味を持ってもらうか、メッセージの効果を高めることができるでしょう。

また商品ラベルを含め、情報表示義務などを決定する際にも、こうした知見は役立つ可能性があると研究者は述べています。

ネットでのバズりを狙う人たちも、こうした人間の情報に対するタイプを理解し、狙いを絞って見るとうまくいくことがあるかもしれません。

参考文献
Whether people inform themselves or remain ignorant is due to three factors
Each one of us falls into one of three information-seeking ‘personalities’

元論文
Individual differences in information-seeking

提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功