「持続可能な漁獲システム」を目的としていた? ツレイル・ウォウトゥス族に聞き込みを行ったところ、同地域の漁師たちは古くから、産卵のために川を遡上するサケをオス・メスともに捕獲していましたが、一方で、サイズや色、成熟個体の前歯によって識別できるオスを好んで漁獲し、燻製にして食べていたことが分かりました。

この習慣がいつ、どのように始まったのかは定かでありませんが、先住民の口承によると、「オス一匹で複数のメスを受精させられるため、産卵時に上流のオスが多少減っても、繁殖できる子孫の総量に影響は出ない」と認識していたようです。

つまり、当時の先住民は意図的に、サケの繁殖力を低下させることなく、オスを多めに漁獲していたことが推測できます。

生きた状態だとオス・メスは見分けやすい 生きた状態だとオス・メスは見分けやすい / Credit: Thomas Royle et al., Scientific Reports(2021) しかし、そうだとしても、彼らが「持続可能な漁獲システム」の確立を目的としていたのかは分かりません。

本研究には参加していない、ポートランド州立大学(PSU・米)のヴァージニア・バトラー(Virginia Butler)氏は、こう指摘します。

「ツレイル・ウォウトゥス族のコミュニティが、(安定した漁獲とは関係なく)自然保護を目的としていたのか、それとも単に、サイズの大きいオスの魚を好んだだけなのか、この結果からは明確に判断できません」

研究チームも「骨のサンプル数がもっと多ければ、本研究の成果はより強力なものになったでしょう」と話します。

研究主任のロイル氏は、次のように述べています。

「オスのシロザケを選別する習慣が、資源不足の危機に対する適応策として生まれたものなのか、それとも先住民が生態系の相互作用について学び始めたことで徐々に生まれたものなのか、明らかにしたいと考えています。

私たちは今後、この研究を発展させ、さらに昔の先住民の資源管理方法の全体像も明らかにしていく予定です」

ところで、オスばっかり食べていたということは、イクラの美味しさに気づいていなかったのか、それとも苦手だったのでしょうか。

あるいは、めでたい日の楽しみにとっておいたのかもしれませんね。

提供元・ナゾロジー

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