スイスで2013年に創設された日本未上陸の時計ブランド、“Werenbach (ヴァーレンバッハ)“ は、私が知る限り使用済みの宇宙ロケットを素材に使用している地球上で唯一無二の時計だ。

2010年、ヴァーレンバッハの創業者兼CEOである、パトリック・ホーマンは使用済みの宇宙ロケットから時計を作り出すという大胆なアイデアを思いつき、すぐに素材を求めてカザフスタンへと旅立った。
》ロケットから直接フライス盤で削られた文字盤に注目
13年、ホーマンはWerenbach(ヴァーレンバッハ)社を設立し、その9カ月後、チューリッヒの中心にあるアトリエで25個のロケットウォッチを製作。クラウドファウンディング知名度をあげ、今ではスイス国内だけでなく世界中に愛用者を増やしているそうだ。

自身が思い浮かべる理想のロケットウォッチを作るために、ホーマンは本物の素材が必要だと考え、 ロシアの有人宇宙ロケット・ソユーズにたどり着く。発射されたロケットの一段目は飛行中に投棄され、ユーラシア大陸の中央に位置するカザフスタンの草原に落下するのだが、この素材を回収しようと考えたのだ。自ら草原に赴いてロケットの回収を成功させると、素材は約5000キロ離れた、スイスのアルトドルフにあるヴァーレンバッハの倉庫まで運ばれた。

多くの手間のかかる工程を経て、宇宙船の残骸は文字盤へと生まれ変わる。重いパンチングマシンで四角くカットされ、磨き上げられた後、手作業で時計の針やマーカーが付けられる。 別の加工方法では、素材を短冊状に切り溶解し、鋳型に流し込む方法がある。 文字盤にはロケットブースター(エンジン)とロケットフェアリング(鼻錐体)のどちらが採用されているそうだ。

文字盤を見るとロケットエンジン心臓部の燃焼痕がそのまま残っており、ヴァーレンバッハの時計が一点ものであることが保証される。文字盤のオレンジ色はカウリング(ロケットブースターの底部)の未塗装品、黒色はロケットブースターの内部の塗装品、オリーブ色はロケットのメインカラーであるロケットブースターの外側の未塗装品、そして文字盤の白色はロケットの最上部にあるノーズコーンの未塗装品である。

最近までヴァーレンバッハはチューリッヒの自社アトリエで製造していたが、生産量の増加に伴い必要に応じて、ジュラにあるスイスの老舗組立業者に製造を委託しているそうだ。ヴァーレンバッハのすべての時計には、5年間の保証が付いている。
最適な価値を提供するために、ヴァーレンバッハは伝統的な販売手法ではなく、ウェブサイトを通じて直接、ユーザーに時計を販売することを選択しており、希望に応じてカスタマイズに対応するオンラインB.T.O(Built To Order)サービスも提供している。この先、活発になって行くであろう宇宙産業から生まれるアップサイクルのユニークな時計が、今後も増えていくことに期待したいところだ。 現在のコレクションは、合計26種類へと拡大しており、今回はその中から4つのモデルをご紹介する。
Werenbach (ヴァーレンバッハ)
B.T.O I Superlative


4.5メガトンの推力を備えたエンジンは、ロケットのシェルの内側から直接フライス盤で削られており、元の色と表面品質(磨耗、色の痕跡)の有機的な摩耗の痕跡のおかげで、独自のトレースが作成されている。

41mmのケースにサファイアクリスタル風防を使用。ソプロドの自動巻きムーヴメント、ニュートンを搭載。 販売価格は 2257.10 米ドル(約25万5,000円)。