ある程度の年齢、社会人であれば身内だけでなくとも冠婚葬祭に出席する機会があります。特に葬祭事は突然知らせが来ることが多いので、参列して失礼のないような装いや振舞は身に付けておく必要があります。黒いスーツは無くても紺やグレーでも代用できますが、靴は黒でなければいけません。

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

こういった場での服装はエチケットに根ざしているため、個人の好みや都合を挟む余地はありません。しかも黒だからいいという事でもありません。紐靴であること、飾りやデザインの主張がないものが求めらます。つまり黒のストレートチップに落ち着きます。

大人の男にあっては持っていなければならない靴が黒のストレートチップなのです。しかし葬儀のためだけに用意しておくといのも勿体ない話しです。定義する項目や、バリエーション、コーディネート、そして代表的なモデルを改めて知る機会にしたいと思っています。

ストレートチップを深く知る。セオリーを守って楽しみましょう。

何をもってストレートチップと言われるのか。その定義はつま先部分を一直線に走る切り返しにあります。素材の取り都合から切り分けることによって、表情が生まれました。この部分にメダリオン(飾り穴)を施し、アクセントを強調するデザインもありますが、シンプルなものほどフォーマル感が高いとされます。

つま先部分の切り返しは共通する意匠ですが、紐がある鳩目部分の構造によって2種類に分かれます。外羽根式と内羽根式、後者のほうが上品な印象が強いためフォーマルな席や上記のような儀式に相応しいとされます。

「外羽根式」は少しカジュアルな印象

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

写真でもわかるように、甲より前の部分に鳩目の部分が乗っかっている状態の紐靴を『外羽根式』と呼びます。紐を緩めると羽根部分が全開するので、着脱が比較的素早くできます。また紐の緩急によってフィット感の調節もできるため、狩猟用や屋外労働用など働く靴にも広く採用されてきました。ヨーロッパではダービーまたはデルビィ(Derby)と呼ばれ、アメリカではブルーチャー(Blucher)と呼ばれるタイプです。

「内羽根式」は上品な印象

一方こちらは、甲より前の部分に鳩目の部分が潜り込んでいます。こちらが「内羽根式」 です。こちらのルーツはイギリスの王室に由来しています。イギリス史上最強の女王陛下ヴィクトリア女王の夫君であるアルバート公が考案したミドルブーツにあると伝わっています。

羽根の部分が全開しないので、外羽根に比べるとフィット感の調節は難しいものの、見た目の清楚では勝っています。それまで公式の場ではパンプスを着用するのが王室の慣わしでしたが、それらに代わりフォーマルユースや室内執務用の靴として普及してという歴史があります。イギリスやアメリカではバルモラル(Balmoral)と言いますが、これはアルバート公が好んで過したスコットランドの王室御用邸にちなんだ呼称だそうです。

それぞれに相応しいシーンで使う。セオリーを守って楽しむ。

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

外羽根式は日常使い、広範囲に活躍してくれます。ビジネスあり、カジュアルシーンありです。トゥ部分が丸く、ウィズが広くなったデザインであればデニムやネイビーのチノパンツにも相性がいいと思います。働く靴で培った実力が生かされますね。

一方、内羽根式はその上品さから、カジュアルな路線とのコーディネイトは避けたほうが賢明かも知れません。『内羽根式を取り入れることで、カジュアルシーンを格上げ』的なコメントを見かけることがありますがセオリーから見れば相当難しい選択だと思います。やはりスーツ、ネイビーや濃いグレーのスーツ、もちろんブラックスーツとの相性は鉄板中の鉄板と言っていいでしょう。

男の、まして大人のコーディネイトにおいては、セオリーから大きく外れた冒険は必要性を感じません。狭い範囲、ルールの中を踏まえたうえでいかに遊びの要素を入れるか。そこが醍醐味だと思うのです。

厳選 5ブランド ストレートチップの饗宴

シューズブランドで黒のストレートチップを取り扱っていないという事はないでしょう。そしてどのブランドでも代表するアイテムという位置づけだと思います。まさに厳選です。定番のブランド、そして注目のブランド、そして日本ブランドを紹介します。

ジョンロブ シティⅡ

ジョンロブから定番モデルのシティーIIを紹介します。細かい説明は不要でしょう。普遍的なデザインと完璧なほどクセのない、しかし絶妙のバランスが世代を問わず支持されています。スタイル全体に、美しいステッチが施されています。唯一ジョンロブとしての主張が隠されているようです。

エドワードグリーン チェルシー

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

80年以上変わらないスワン・ネックと呼ばれる優美な曲線、クラシックな内羽根のチェルシーは人気の高い商品の最右翼です。適度な厚さのカーフを用い、紐を締めると吸い付くようなフィット感を味わうことができます。使われている木型はエドワードグリーンの根幹に位置する202。もっとも『らしい』ストレートチップに仕上がっています。

ガジアーノ&ガーリング

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

現在もっとも美しい靴を作ると評判のガジアーノ&ガーリングは、ビスポークの要素を既製靴に持ち込んだ初めてのブランドだと言われています。ブランドのアイデンティティーは『クラシック・デザインでありながら、最高級のビスポーク靴とレディー・トゥーウェアー靴を同時に作り出す稀有さ』。その姿勢は最もクラシックなストレートチップにおいても充分に表現されています。

リーガルコーポレーション

内羽根のクラシックモデルが3点続いたので、日本ブランドからは外羽根式モデルを選びました。クオリティの高さ、コストパフォーマンスは他の追随を許しません。外羽根式しかも部分的にメダリオンが施されたモデルなのでカジュアル寄りかなと思いきや、落ち着いた印象があります。ハイブリット対応?これならカジュアルな装いも格上げできそうです。

注目 スペイン発バーウィック

男ならば必携の1足、黒の「ストレートチップ」の革靴。セオリーを守って楽しむ。
(画像=『KASHI KARI』より引用)

こちらも外羽根式のストレートチップ、スペイン発のブランド『バーウィック』です。スペインと言えば『ヤンコ』『マグナーニ』などが上げられますが、コストパフォーマンスの高さから普段使いの本格靴として脚光を浴びています。つま先部分を細くすることでエレガントな佇まいですが、ダイナイトソールを採用するなどアクティブな仕上がりになっています。

最近はタック入りのパンツが見直されています。となると靴にも程よいバランスの重量感が求められます。この存在感があれば役不足という事はないでしょう。気になる一足です。