動植物の新種(科学的に未記載の種)は、容姿がド派手でもない限り、素人目には見分けられません。
中には、遺伝子解析を必要とする種もあり、その道の専門家でも苦戦するほどです。
それでも新種生物は、意外とすぐ近くに潜んでいることがあります。
このほど、インド北部ヒマーチャル・プラデーシュ州の町チャンバにて、インスタグラムにアップされた写真の中から新種のヘビが発見されたと発表されました。
新種のヘビは、撮影者の自宅の裏庭にいたとのことです。
研究は、11月2日付けで学術誌『Evolutionary Systematics』に掲載されています。
裏庭で「新種ヘビ」を発見!
新種を撮影したのは、グル・ナナク・デヴ大学(Guru Nanak Dev University・印)の修士課程に在籍するVirendar Bhardwaj氏。
氏は昨年、COVID-19のロックダウン中に、チャンバの自宅の裏庭を散策し、何気なく撮影した生き物たちの写真を自身のインスタグラム上にアップしていました。
トカゲやカエル、昆虫など、裏庭で見つかる様々な生き物を掲載。のちに新種と特定されたヘビは、2020年6月5日にアップされています。
こちらが実際にアップされた画像です。
この写真が、ナショナル・センター・フォー・ビオロジカル・サイエンシズ(NCBS・印)の爬虫類学者、Zeeshan Mirza氏の目に留まりました。
一見すると、既知のククリィヘビ属(Oligodon)の一種に見えましたが、いくつかのユニークな特徴があり、その正体が気になったのです。
そこでMirza氏は、知り合いの爬虫類学者であるHarshil Patel氏(Veer Narmad South Gujarat University・印)と話し合い、撮影者のVirendar氏と連絡を取って、本格的な調査に乗り出しました。
ククリィヘビ(Kukri snake)は、独特な曲線を描く歯が、ネパールやインドで使用される短剣「ククリ(Kukri)」に似ていることから命名されたグループです。
連絡を受けたVirendar氏は、自宅周辺を広範囲にわたって調査した結果、同年の6月末までに2個体を新たに発見し、研究チームに提供しました。
コロナパンデミックにより、研究室が一時閉鎖されるアクシデントがあったものの、再開後のDNA分析で、このククリィヘビが既知種とは異なることが判明しています。
その後、文献や博物館のデータとの比較や、骨格のマイクロコンピューター断層撮影などにより、新種であることが確認されました。
学名は、発見されたヒマーチャル・プラデーシュ州にある谷Churah Valleyにちなんで、「Oligodon churahensis」と命名されています。
研究主任のMirza氏は、次のようにコメントしています。
「インスタグラムの写真をきっかけにして、科学界に知られていなかったヘビが発見されたのは、とても興味深いことです。
しかし、それ以上に興味深いのは、自分の家の裏庭を探索することで、いまだ記載されていない生物が見つかるかもしれないことです。
人々は、新種や希少種を見つけるために遠隔地の生物多様性ホットスポットに遠出しますが、自宅の裏庭に目を向けるだけで、新種が発見できる可能性はあります」
新種の動植物は、意外にも、私たちのすぐ側に隠れているのかもしれません。
参考文献
Snake photo posted on Instagram leads to the discovery of a new species from the Himalayas
Snake photo posted on Instagram leads to the discovery of a new species from the Himalayas
元論文
A new species of snake of the genus Oligodon Boie in Fitzinger, 1826 (Reptilia, Serpentes) from the Western Himalayas
提供元・ナゾロジー
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