言語能力を高めるには道具を使った作業が効くようです。

フランスのリヨン神経科学センター(CRNL)で行われた研究によれば、言語の構文を理解する脳回路と道具の使用スキルにかかわる脳回路が共通であり、一方を練習すれば他方の上昇が起こった、とのこと。

複雑な構文を学習をしようと思っているなら合間合間に、道具を使った複雑な作業をすると、相乗効果が得られるかもしれません。

研究内容は11月12日に『Science』に掲載されました。

目次

言語能力と道具スキルは同じ脳回路が担当している
道具の練習で言語能力が上がり言語の練習で道具の扱いが上手くなる
本業の地力をあげるには他分野に手を出すといいかもしれない

言語能力と道具スキルは同じ脳回路が担当している

言語能力は「道具を使った作業をすると向上する」と判明
(画像=道具の練習で言語能力が上達し逆も起こると判明! 根元は同じ回路 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

人類を他の動物と別ける要素として、古くから言語と道具使用の2つがあげられていました。

言語は複雑な情報交換を可能にし、道具は爪や歯では達成できない作業を可能にし、人類の生存と繁栄に大きく貢献しています。

ですが言語能力と道具スキルにかかわる2つの能力が、別個の脳領域から発生しているか、単一の領域から発生しているかは謎でした。

そこで今回、リヨン神経科学センター(CRNL)の研究者たちは、フランス語の構文を学んでいるときの脳の活動と、30cmの長いペンチを用いて板から細いクギ(ペグ)を抜いて穴に入れているときの脳活動をしらべてみました。

結果、両方の作業が同じ大脳基底核の一部を同じパターンで活性化させていることが判明します。

つまり人類の言語能力と道具スキルは、単一の神経回路から発生していたのです。

どうやら言語も道具も複数のパーツを適切な順番で配置する必要があるため、脳は同じ神経回路を使い回して運用していたようです。

ですが研究者たちは言語能力と道具スキルという、人類進化の秘密を解いただけでは満足しませんでした。

同じ回路から発生しているのならば、一方の練習で回路を強化すれば、もう一方の能力も連動して上がる可能性があったのです。